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092.気になるドレス
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。今日は、グルノーブルの街中で発見した素敵なドレスのお話。
2020年3月某日。晴れ。
寒い寒い冬のフランス生活でしたが、3月になるとわずかに、太陽の熱が空気をほぐすのを感じられるようになってきた。お天気がよかったので、バスとトラムを使ってグルノーブルの街を流れるイゼール川のほとりまでお散歩することに。
川の奥には、大きなアルプス山脈を望み、バスティーユまでシャボン玉型のロープウェイが続くここの景色は「THE グルノーブルの観光地」という感じだ。さらに、川のほとりにはこの風景に調和するような色調の家々が続き、「ヨーロッパのこういう都市設計っていいなぁ」と思いながら歩いた。
そうだ、グルノーブルに来たばかりの頃、日本から同行してくれた友人家族と一緒にゆっくり歩いたのも確かこのあたりだったっけ。懐かしいなぁ。滞在記を遡ってみると、かれこれ、2年以上前に書いた記事。ずいぶん昔のことのように思えてしまう。実質、4ヶ月ほど前の出来事なのにね。それだけ色々と詰まった時間だったのだ。
しかし当時、不思議と4ヶ月間に感じた異国情緒的な感触は薄れ、ローカルとまではいかないまでも、自分の暮らす街の美しい光景という感じになっていたのを思い出す。
子供といるというのもあるかもしれない。子供といると、否が応でも本能的にその場その場で根を下ろして生活せざるを得ない。どこへ行ってもトイレを探しているし、子どもの腹時計を気にしてご飯を食べる場所を探している。そんなことをしているから、観光気分なんて早々に抜けて、ローカルに身が浸っていくのは自然なことなのかもしれない。
イゼール川沿をなぞるようにバスは進み、なにやら物々しい雰囲気の石造りの要塞的な建物の前で下車をする。ここにあるのはグルノーブル考古学博物館。今日のお散歩の目的地だ。フランスはあちこちに美術館や博物館があり、しかも入場料は無料なところが多い。だから、それらを目的地にしてお散歩に出かけるというのがフランスに来てからすっかり日課になっていた。
グルノーブル考古学博物館の入り口の前は広場になっていて、その中にふと目を引くものがあった。
ガラス張りのショーウィンドウに、カラフルなドレス。え?こんなところにブティック?と思って近づいてみると、なんとそのドレスはペッドボトルのキャップやストロー、スポンジなど廃材でできていた。
「うわぁ・・なんだこれ、めっちゃかわいい・・なんてセンスがいいのだろう」
ガラス張りの建物の中を覗いてみると、中央に小さなテーブル、小さなロッカーにコートかけなど、小学生かそのくらいの子どもたちの日々の営みが感じられた。入り口ドアには張り紙が貼ってある。フランス語が読めないからよくわからなかったが、月曜日〇〇クラスのように書いたものがブロック型に並んでいるから、これはどうやらイベントカレンダーみたいだ。
ここはアフタースクール?
このドレスはみんなで作ったのかなぁ?
普段、どんな子がここにいるんだろう?
反対側の建物をみると、そちらはナーサリーのようだ。もっともっと小さくてかわいいロッカーに、椅子やテーブル。そもそもナーサリーというだけでかわいいのに、フランスマジックもかかって、全てがさらにかわいすぎる。興味津々、ガラスに張り付くわたし。あ、これはまずい、明らかに怪しい人間になっている。通行人の視線を感じるようになってきて、いよいよ恥ずかしくなったので後ろ髪引かれつつ、今日のお目当て考古学博物館へ大人しく向かうことにした。
*
ほんの一瞬の出来事だったけれど、ふとこのドレスを思い出すことは多い。帰国後、猛烈な創作意欲にかられて、家にアトリエスペースを作り、いろんなものを娘と作ってきたけれど、実はあのドレスとの出会いはその原動力の一つになっているのかもしれない。幼稚園に入った娘が廃材工作作品を持ち帰ってくるようになると、明らかに大人の発想ではなし得ないカラフルなデザインにうっとりするにつけ、あのドレスは今頃どうしているかなぁ・・と思い出してしまうのだった。
気になるドレス。
わたしも作ってみたかったなぁ・・と、
イゼール川のほとりの小さな空間に想いを向ける。
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