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116. 引っ越しは感情の戸締り
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。今日は、フランスから帰って来て3年間暮らした大好きなおうちとお別れの日。鍵をかえす最後の最後まで、いとおしんでこの空間とお別れをしています。
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2023年3月31日。
16日にむすめの幼稚園の卒園式を終えてから、バタバタと引越しの準備を進めて迎えた今日の日。
何度も何度もあたらしい家と古い家を行き来しながら、荷物をすべて運び込み、部屋中のほこりを丁寧にはらい、拭き掃除をし、からっぽになった家の真ん中のソファーでこれを書いています。
今まで住んでいたマンションは、家具家電付き。生活に最低限必要なものはすべて揃っているので、自分たちの荷物が一つ、また一つとなくなっていくごとにまるでホテルのような空間になって行く。刻々と、ここが「わたしたちの家」ではなくなっていく。この部屋に初めて訪れた時に感じた感覚に引き戻されて行く。
(この引っ越しの様子はまた今度詳しくゆっくり書こうと思います)。
それでも、なにかここの空間に名残りというか残り香のようなものを感じていて、まだあたらしい生活に向かっていけない自分がいた。だから、昨晩は子どもが寝た後、夫に頼んで家を出て、もうほとんどやることがなくなった部屋に戻って来て細かいところの掃除を続けた。
あんなに再現なく続いていた家事がもはや家事ではなくなって行くのに段々寂しくなってきて、やっとポロポロ泣けて来た。思えば、ここには色んな人が訪れ、色んな体験や感情を共有してきたんだなと思ったら、さらに泣けて来て、その状態で各部屋をチェックしていたら、
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トイレに残された娘の写真がわたしを呼んだ。そう、これはトイトレ中ついついキリキリしてしまう自分をなだめるために飾った写真だった。
そうか。わたしが最後にやりたかったのは感情の戸締りだったんだなと思った。
新海誠監督の「すずめの戸締り」では、後ろ戸が空いてしまった場所をおさめるためには、そこに行き交った感情を全て味わい切った閉じ師が「お返しします」と言って扉をしめなくてはいけないという描写があった。
昨晩、わたしがやったことって、まさにそういうことだ。綺麗になった空間のまんなかに座り、ここであったこと、訪れた人たち、そこで交わされた体験や感情を味わい切る。それが終わると、ぎゅっとこの場に凝縮していた想いや感情の残債みたいなものを引き受ける部分は引き受け、もう終わって行くものは密度が軽くなってこの空間を超えて空へ散って行く。そんな体感の中にいた。
このフランス滞在記を書くという行為そのものだってそう。味わいきれなかった、取りこぼされていた感情をすべて味わい切って、引き受けるものは引き受け、清められ、より広大な物にかえっていくものは「お返しをする」。書くという行為を通じ、そんなことをやっているのだ。
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お誕生日の日にもらったお花。
不思議と最後まできれいに咲いてくれました。さぁ、ここの鍵をお返ししたら、花と共にあたらしいお部屋へ。
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