フロイト派の性的発達理論によせて

フロイトは、幼児は世界は自分を中心に回っているかのように思うものだと考えた。
母親をはじめとする周りの大人たちみんなが、自分を大事にしてくれる。泣いたりぐずったりすると、食欲を満たしてくれたり、おむつを替えてくれたり、あやしてくれたりする。でも、自分が無力なので周りが世話してくれているのだとは思わず、自分は泣いたりぐずったりさえすればすべて欲求がみたされる万能の存在だと思い込む。
こういうのを、一時性ナルシズムまたは原始的ナルシシズムと呼んでいます。

そして、この時期の子供は自体愛(オートエロティズム autoerotism)の状態にいる。
たとえば、赤ちゃんは母親のおっぱいからお乳を飲むことで満足が得られないと、指しゃぶりをしたり、もう少し大きくなると爪を噛んだりする。つまり、乳首の代わりに自分の指をしゃぶったり爪を噛んだりして生理的な疑似刺激を得つつ、空想的な満足を得ようとする。
実際的な生理的満足ではなくて、自分の体の一部を刺激して快感を得ようとするんですね。

フロイトは、この原始的ナルシシズム期を、さらに口唇期、肛門期、男根期、そして潜伏期を経て性器期という五つのフェーズに分けて説明しています。

このへんは、大人になってからもマスターベーションという形で続くバーチャルセックスの基盤でしょうけど、「口唇期」なんかは、他にも種々の嗜好品とか依存症なんかの元にもなっている。
たとえばタバコとかガムとかお酒といった嗜好品で、唇や口の中を刺激する習慣なんかも口唇期の名残です
その口唇期も後期になると、赤ちゃんは乳首を噛んだりするようになる。
で、たいていの母親は、あまりきつくかまれると痛いから、赤ちゃんを叱ったり引き離そうとしたりするでしょうけど、赤ん坊がそれでショックを受けたりマイナスの感情を引き起こされたりすると、将来 自傷行為とか逆にDVとかを誘発する遠因になるとも言われています。

次の「肛門期」というのは、排便によって疑似的な性的快感を得る時期です。また、男女問わず肛門にスティック状のものを挿入して快感を覚えるようになる子もいる。
ただ、排便がスムースに行われなかったり、ちゃんと処理をしてもらったりされず、不快感や否定的な 気持ちが積もっていくようだと、抑圧的な性格になりやすい。
言いたいことも言えなかったり、人との関わりに消極的だったりというふうなコミュニケーション不全になったり、ひどくケチになったり、不潔なことに対する感受性が極端に鈍くなってしまうこともあるようです。

3番目の「男根期」っていうのは、男の子の場合は自分のペニスを意識しはじめ、女の子は自分にはペニスがないってことを意識するようになる時期で、男の子は自分を父親と同一視し、女の子は母親をと同一視する。
なぜなら、男の子の場合は 父親を殺して母親と結婚したいという欲求(エディプス・コンプレックス)、 女の子の場合は母親を殺して父親と結婚したいという欲求(エレクトラ・コンプレックス)を抑え込むためだそうです。

そして6~7歳から12歳ごろ、つまり日本でいえば小学生の時期(学童期)には、「潜伏期(latency stage)」といって、自分の体に性的刺激を求める衝動はいったん影を潜めて、むしろそういう性的情動と スーパーエゴと呼ばれる自分の中の社会的監視役ですね、この二つを自分なりにバランスをとってやっていけるようになる時期です。

次に来るのが「性器期(生殖期、genital phase)」。個人差が大きいけれど、だいたい10歳から14歳ごろに起きる第二次性徴に伴い、いったん潜伏していた性的情動がぐっと頭をもたげてくる。
このころ男女とも、自分の体に急激かつ大きな変化が起きる。特に生殖器とか胸とか体毛とか、性に関連した部位が劇的に変わってくる。そこで、自分自身の身体に性的興奮を覚えたり、そのことに罪悪感を感じて嫌悪感に転換されたりという、こみいった生理感情が起きやすくなる。
そして、このことが後々の精神生活にも大きな影響を及ぼすことになる。


…というふうに、フロイト派の 性的発達プロセス理論をざっとおさらいしてみましたが、 いかがでしょうか?
なんとなく その底のところに ある種の ドグマというか、思い込みみたいなものが流れてるような気がしませんか?

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