インパクト投資を通じて生まれる新しいつながりが、社会を変える大きな動きになる。
株式会社LivEQuality大家さんです。住まいをかりづらい困窮世帯のシングルマザーなどを対象に、安心安全で快適な物件を市場より低い価格で貸す「ソーシャル大家さん」事業に取り組む会社です。
わたしたちは資金調達の手法としてインパクトボンドを活用しています。インパクトボンドは金利のリターンを低めに抑え、ソーシャルリターンという社会的インパクトを最大化するように設計した投資の仕組みです。
日本ではまだ事例が少ないこの取り組み。インパクト投資家として参画してくれたみなさんにその理由や期待を伺っています。
今回はCPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役の国見 健介さんにお話を聞きました。
──── CPAエクセレントパートナーズさんは社会貢献にも積極的に取り組んでらっしゃいます。まずどんな会社かご紹介いただいてもよいでしょうか。
私たちは会計人材に貢献するインフラ企業になるというビジョンを掲げる組織です。
公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)といった高度会計人材から、中小企業やプロフェッショナルファームで会計分野の仕事をしている方々まで。会計人材は日本中で活躍しています。
会計・ファイナンスに関わるすべてのひとの可能性を広げることで社会に価値を発揮しようとしています。
例えば、昨年は公認会計士試験の合格者の過半数(合格者の2人に1人以上)が私たちが運営する公認会計士資格スクールCPA会計学院の受講生でした。
2年前からは完全無料のeラーニング事業「CPAラーニング」を始めています。簿記3級から1級まで無料で学べるだけでなく、経理実務やIPO実務、M&A実務、税務実務など1,000本以上の実務講座を提供しています。
会員数は50万人を超えました。今後数年で動画を3,000本にして、会員300万人を目指したいと考えています。
会計人材だけでなく、すべてのビジネスパーソンが会計を学びたいと思ったときに利用いただけるプラットフォームにできたらと思っています。
こんな風に日本中の会計リテラシーと会計人材のバリューを高めたいと考えている会社です。
もともと私たちのミッションには「人の可能性を広げ、人生を豊かにする応援をします」というコンセプトがあります。
経済的にも精神的にも豊かになるには、周りの人に貢献すること、健全なリスペクトをもつことが重要です。
信頼関係を元に協力しあい、お互いの人生の可能性を広げることで関係性が深まり、人生がより豊かになっていく。そういうことができる人材を育成したいと考えています。
お客さまや関係者にそうなってほしいと思うと同時に、一緒に働くメンバーも豊かな人生を送ってほしい。そうしたときに「会社が社会に出している価値」はメンバーにとって精神的な報酬になると思っています。
なので私たちは社会がより良くなることにどんどん取り組みながら、しっかりお金も生み出すことで、経済性と社会的価値を両立することを目指しています。
例えば、学びの意欲があるすべての方に機会を提供するために、eラーニングの「CPAラーニング」は無料で利用できるサービスにしています。
公認会計士を目指す方の学費を全額支援し、合格後に月々5,000円から返済できる利子ゼロの奨学金制度もつくっています。
本業を通じた社会貢献の取り組みを、できることから1つずつ形にしていっています。
──── 今回LivEQuality大家さんのインパクト投資家として参加いただいた経緯や背景について教えてください。
LivEQuality大家さんのインパクト投資は、経済的なリターンを期待するものではありません。一方で、本当に困っている方々を支援するという価値がある。シングルマザーの方々が自立し子供たちが安心して暮らせる環境を作ることは非常に重要です。
そんな取り組みを最初に支援できる、関わらせてもらえることは、すごく光栄なことだと感じました。弊社ができる支援はさせていただこうと、参加を決めました。
ただこれは単に資金を出して助けたいという気持ちではないんです。
私が何かを応援をするときに大事にしているのが「思いのある方とどれだけつながっていけるか」です。
さまざまな分野で思いを持って頑張っている方々がいます。そういう人たちとつながってタッグを組んで、互いに支え合いながら大きな活動に広げていく。これが大事だと考えています。
岡本さんたちの志は素晴らしいので、私たちが学ばせていただくことがたくさんある。さらにインパクト投資という枠組みに参加する皆さんとの新しいつながりをつくることもできる。この出会いから新しい何かが生まれるかもしれません。
一人でやれることは小さいかもしれないですが、1万人、10万人と仲間がいればすごく大きな動きができる。そういう方々と出会い、お互いが学び合い支え合えるというのはすごく大切なことだと思っています。
今回のインパクト投資もどんな効果があるかは10年、20年やってみないと分からないかもしれません。ただすてきな未来につながる可能性があると思っています。
単に寄付ではなく、この取り組みに参加して集まった人同士が協力しあいお互いより良いものを生み出せたらと、投資を決めました。
──── 会計のプロである国見さんからみて、インパクト投資の可能性はどんなところにあると感じてらっしゃいますか。
一般的な投資は経済的リターンを重視しがちですが、インパクト投資は数字や経済性では表せないことの価値と重要性を再認識できるところに魅力があると思います。
寄付やボランティアと似ている部分があります。してもらう側よりもむしろ、する側にメリットがある。当たり前のことが当たり前でないことに気付けたり、感謝の気持ちを受け取ったりすることができる。精神的な報酬といった、目に見えないものを得られる価値があります。
一方で、経済的リターンも無視できません。私たちはある種、インパクト投資という取り組みのファーストペンギンの役割です。最初の挑戦なので、ゼロリターンで良いと考えて参加しているインパクト投資家の方も多いと思います。
でもリターンがゼロのままではなかなか社会には広がっていかない。1~2%でもリターンがあれば、より多くの人を巻き込める可能性があります。
リターンがゼロであれば、寄付と同じになってしまいます。もちろんもっと寄付が広がればいいと思いますが、寄付をする層は限られているのが現状です。
日本は利率の低い普通預金にお金を預けている人が多いので、必ずしも高いリターンを求めてる人ばかりではないはず。インパクト投資で少しでもリターンが出せるようになると、集まる金額の桁が変わる可能性があると思っています。
──国見さんがこれからのLivEQualityに期待していることは何でしょうか。
LivEQualityさんが考えている未来の世界観というのは、全ての方にとって大事なビジョンだと思っています。
なのでどれだけ多くの人の力を巻き込めるか、という点に期待しています。
理想を言っているだけではなく10〜30年後に結果を出していることが重要です。成果を出すためには、大企業や国や地方公共団体など、たくさんのプレイヤーと協働できるかどうかがポイントになると思っています。
例えば世の中では空き家問題が社会課題となっています。そういう土地を無償で提供してもらい、居住可能な状態に整備して自治体と連携して活用する。そうすればLivEQualityさんの取り組みを加速させることができるかもしれません。
大企業には本業で協力してもらう仕組みができれば、かなりスピーディに進められることもあるはずです。
寄付を集めるだけでなく、多くの人を自分ごととして巻き込んでいける動きになると、想定もしなかった規模にスケールできる可能性があります。
ただこれは岡本代表やLivEQualityさんのみなさんだけではなく、私たちのように関わる人みんなの力を結集しなければできないことだと思います。
LivEQualityのみなさんには、大きなことを思い描いていただきたい。
今はいろいろな苦しみもあると思いますし、最初はすごく小さな輪かもしれません。でもこれがどんどん大きくなっていくと、それが止まらないほど強く大きく回転する輪になるかもしれない。
そういう取り組みにつなげていただけるとすごくうれしいと思いますし、その可能性を感じるから色々な人が巻き込まれていっているんでしょうね。
株式会社LivEQuality大家さんの取り組みについては、ぜひこちらのページもご覧ください。
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