認知症の父、はじめてのおとまり
今日も父のことを書きます。
認知症がずいぶんと進んできた父を、妻である母と娘の私が介護をしています。
父の身の回りのことは母がやっているので、介護しているのは母、というのが現実。なぜなら、父は、母しか受け入れられなくなってきているからです。
母が父を呼ぶ時は、飼い猫を呼ぶような感じになってきました。母の姿を常に探そうとする父に呼びかける様子が、です。
母も父から離れられなくなってると、私は感じてました。いわゆる、共依存の関係になってきている気がしてました。
というのも、デイサービスやショートステイなど、サービスの利用を、父が怒るから、という理由でなかなか取り入れようとしませんでした。ここのやりとりや考え方の違いで、私と母の関係が緊迫した時期がありました。
結局、母の意思は固く、私が少しでも話を切り出そうとしたものなら、ピシャッと遮られてしまったり、「お姉ちゃん(私のこと)はそういう人じゃなかった」とか、私自身が否定されたり、と、色々ありました。
けれども、母にしたら母の思いがあり、このやり取りを通じて、母の選択による結果を私が引き受けるしかないんだな、という覚悟みたいなものができたと言えます。
ところが。
この暑い夏で、父の症状は進みました。
毎日がんばる母。なかなかの根性と意地のある母ですので、私もできることはやりますが、これは母の決めたことだから、と任せるところは任せていました。
そしてある日のこと。
週2回午後のみ、しかも母同伴で行っているデイサービスのお泊まりを「やってみようと思う」と、突然母が私に言ってきたのです。
そのとき、って来るんだな、と思いました。
そして今日、父ははじめてのお泊まりに出かけて行きました。
私は母を、ずっと連れて行きたかったハンバーグ屋に連れて行きました。父も一緒に連れて行きたかったけど、お店の作りから、父には難しいなと諦めていたお店です。母は大好きなビールを飲み、ハンバーグを「美味しい!」と言いながら食べていました。「なんかほっとしてる」とも言っていました。正直、私も母も息子も、どこか寂しかった。いつも4人で外食してたから。「お父さんにも食べさせたかったな。おいしいもの、好きだから」母がつぶやいたのを聞いた時には、胸が詰まりました。
次の日、昼まで仕事だった私に、ラインが入りました。「お昼も外食しようよ!いいお店を聞いたの」と。2連ちゃんの外食です(笑)母は外食好きなんです。
母は父のいない時間を、有意義に過ごせたと思います。
なんでしょう。
私は、父と母の今の姿から、言葉にしきれないものをたくさんもらっていることを感じています。私は、父も母も大事にしたい。
「父のお泊まり」という、新たな可能性が我が家には生まれてきました。
たまの父のお泊まりで、母は時々、心と身体に翼を得ることができます。
そしてまた、父のお世話を頑張れます。
父のはじめてのお泊まり。
父は無事帰ってきました。笑顔でした。
お父さん、ありがとう。おかえり、お父さん。