勤務医絶滅物語
「神様のカルテ」をご存じだろうか?
夏川草介が本屋大賞を受賞した小説である。舞台は松本の病院で勤務医のすさまじい勤務実態が書かれている。通常でも勤務時間は長いが当直にあたった場合は信じられないほど長いものになる。まず、前日の勤務が終わるとそのまま夜勤の当直になる。夜勤では救急車等の緊急外来を担当する。緊急外来がたてこまない場合は多少の仮眠をとれるが、たてこんでくると徹夜ということになる。そして、朝を迎えるとそのまま次の日の勤務が始まる。つまり、最悪40時間位のの連続勤務となる。
これが定年まで続くことになる。こんな非人間的な勤務は続けていられないので、10年もして一人前になれば実家が医院を開いている者はやめて実家に帰ることになる。したがって、勤務医として残るものは実家が医院でないものばかりになる。特に地方の病院の場合は都会の病院に転勤する医者もいるので医者不足は深刻である。
それならば医学部の定員を増やしていいのだが、医師会が反対して増やせない。医者が増えれば収入が減るのでダメという訳だ。
すると私立大学の医学部は少ない学生では経費を賄えないので通常の入学金,月謝の他に寄付金を要求しないとやっていけなくなる。
寄付金は半端な金額ではないので金持ちの開業医でなければ払えない。
また、勤務医の方は自分は非人間的な勤務を続けているので必ずしも子供に医師になることを勧めない。
かくして医者になるのは開業医の子供ばかりとなって、病院の勤務医はその数をだんだん減らしていく遠からず勤務医は絶滅することとなる。