AIバブル崩壊はまだ先、それまでは鋸の歯のように上下しながら上昇する。
昨今のAI株の上昇でITバブルの二の舞になるのではないかとの声があるが
AI株の今後を予想してみた。ついては、まずITバブルの1990年代のアメリカ経済を振り返ってみよう。
1)1990年代のアメリカ経済
1990年代はITとともにクリントン大統領の時代である。長年のアメリカ財政赤字が解消され、アメリカ人が自国の経済の自信を取り戻した時代である。歴年の経済指標を並べると次の通りとなる。
GDP成長率 失業率 FF金利 ナスダック 同指数
1990年 6.2% 5.6% 8.0% 2722 100
1991年 6.4% 6.8% 6.0% 2603 96
1992年 6.7% 7.5% 3.0% 2820 104
1993年 7.0% 6.9% 3.0% 3004 110
1994年 7.3% 6.1% 3.0% 2847 105
1995年 7.6% 5.6% 5.5% 3340 123
1996年 7.9% 5.4% 5.25% 3838 141
1997年 8.3% 4.9% 5.5% 4485 165
1998年 8.7% 4.5% 5.5% 4902 180
1999年 9.0% 4.2% 5.5% 5049 185
1990年代はIT企業の躍進でGDPは高い成長を示している。ここで通常と大きく異なるのは失業率の高さである。ITの採用により企業は生産性がアップしたが、それにより人員の解雇が進み好景気にもかかわらず、1991年から1994年までは失業率が高い状況が続き「jobless recovery」と呼ばれた。
この高い失業率に対応するためにFRBはFF金利を低く設定した。
その低い金利によりナスダックも1995年には23%上昇している。また、この低い金利を利用してITベンチャー企業が立ち上がりITベンチャーブームが起こった。
1995年から失業率の低下に伴いFRBは金利を引き上げたが、株式市場の活況は止まず、FRBのグリーンスパン議長は1996年12月に講演で株式市場を「根拠なき熱狂」と評している。
しかし、ITベンチャー企業は1995年以降の高金利では資金繰りが回らなくなり破綻が相次ぐようになる。そして、遂に2000年にはナスダック市場は下落に転じ年末には30%下落し、その後も低迷が続き2000年の終値を超えるのは2013年になるという長期低迷期に陥ることとなる。
2)現状の再確認
GDP成長率 失業率 FF金利 ナスダック
2024年10月 5.2% 4.2% 5% 18573
(ナスダック市場は2020年の終値12888を100とすると、現状は144となる)
3)IT企業とAI企業の相違
①IT企業は販売先が企業だけでなく個人となるケースも多い。個人の場合はITの浸透が企業の場合よりも時間がかかり、結果として利益が上がるのが遅れるケースが多い、その場合企業のPERは高くなった。
AI企業の場合は販売先は殆どが企業でありAIの浸透は早く利益が上がるのも早い。結果としてPERも高くはならない。
②IT企業の場合はベンチャー企業であるケースも多く経営の規模は小さいので金利上昇による影響を大きく受けることなった。AI企業は殆どが巨大企業で金利上昇等の影響は受けない。
3)金融環境
現在FRBは利下げを進行中であるが、アメリカ経済は「SOFT LANDING」もしくは「NO LANDING」と言われており、過度な利下げ状況にあるとは言えない。したがって、現状では大幅な利下げになるとは考えにくい、
しかし乍ら、AIに関してもITと同様に企業の人員を削減して生産性を上げることが目的なので失業率が高まった場合は低金利となることが予想される。
4)結論
現状では大幅な利下げは予想されない。また、ナスダックの市場も2020年からはまだ44%しか上昇していないのでバブルが弾けるということはない。しかし、通常の株価の上下はあり今回の7月のように何かのきっかけにより大きく下げることは度々あると思うので「難平」で対応するするのが良いと考える。
将来、AIによる失業率の上昇により金利が低下した場合はバブルとなる可能性も出てくるが、AI企業は巨大企業が多いので直ぐに破綻が発生することはない。落ち着いて徐々に債券等にシフトしていくのが良いだろう。