トランプ大統領選勝利で金、銀価格が下落した理由は?貴金属投資家の今後の見通しは?
米国大統領選はトランプ氏が勝利を収めました。
私の事前の予想ではどちらが勝利したとしても、「不正があった無かった」などで結果が出るのが遅れるなどあるかと思いましたが、すんなり勝利して少し拍子抜けです。
蓋を開けてみれば、激戦州と言われる7州全てでトランプ氏が勝利。民主党の牙城とも言えるカリフォルニア州ですら、トランプ氏投票率は40%を超えてます。
米国の政治、経済を4年間追っていた人ならなぜ、これほどまでに民主党にうんざりしているのか分かると思います。
もちろん、トランプ氏になったからと言っても米国の赤字財政、インフレなど経済が魔法のように瞬時に回復するわけではありません。
ハリス氏のただただばら撒く政策よりは遥かに良いですが、それでもやはり現在の米国財政はかなり厳しいです。
→トランプ氏、ハリス氏どちらが大統領でも金銀の価格が上昇する3つの理由とは?
1,トランプ氏当選後、金銀価格が下落した理由は?
当選が決まった後、金銀価格は大きく下落。
一方で、株価は大きく上昇、米国債金利も上昇しています。
トランプ氏が当選しなぜ、金銀価格が下落したのか?ですが、海外の投資家でも意見はいろいろあり、これが決定打というものはないです。
よくあるのが「トランプ氏はインフレ的な政策だから、金利が上昇し貴金属は下落した」というものです。
確かにトランプ氏は中国などの輸入品に高い関税をかける、減税するという政策だけみるとインフレ的ではあります。
トランプ経済政策
15%法人所得税を減税
金利を引き下げる
厳格な移民制限を推進し、国内賃金と雇用の向上を目指す
中国、EUに対して新たに60%から100%の関税を課す
メキシコや中国での自動車工場の建設を認めず、アメリカ国内での生産を推奨
原油生産を増やしエネルギー価格を下げることでインフレを抑える
所得税を無くす?(大幅減税?)
イーロン・マスクは政府効率省に任命し、2兆ドル支出削減
中国などから安価な商品を輸入することで、商品の価格低くなってますが、これに関税がかかると商品価格が高くなっているのでインフレ的になるというものです。
市場はこれらの経済政策がインフレを再燃させると信じ、
インフレ的になる→インフレを抑える為に金利を引き上げる必要がある→金利上昇→金利が得られない貴金属は相対的に価格が下がる
というわけです。
ただ、トランプ氏の政策もインフレ的ではありますが、ハリス氏の政策の方がよりインフレ的です。
ハリス氏の経済政策
何百万人ものアメリカ人の医療費負担をなくす
食料品や食品の価格つり上げの禁止
処方薬の費用上限設定
初めて住宅を購入する人に25,000ドルの補助金を支給
生後1年間、子供1人につき6,000ドルの児童税額控除を提供
法人税を21%から28%に増税
1億ドル以上の富裕層に対して、含み益(未売却の資産の値上がり益)に対しても25%のキャピタルゲイン税
ハリス氏の方がインフレ的であるなら、トランプ氏が当選した場合、金利上昇は落ち着き金銀価格は上昇するのでは?と予測できます。
しかし問題なのは、富裕層に対してキャピタルゲイン税をかけるとしてますが、そんな事をすれば米国から企業や投資家は撤退する可能性が高いです。
富裕層と聞くなり、敵意を剥き出しにする人もいますが、雇用を生んでいるのも富裕層です。
富裕層が撤退すれば失業率は上昇し、投資家が撤退すれば税率の低い国や地域へ資本を移す可能性が高まります。
また、食料品価格の値上げ禁止はかつて、ベネズエラやジンバブエ等はインフレを抑える為に実施された政策ですが、最終的にはハイパーインフレに陥りました。
バラマキどころか景気後退リスクに陥る可能性が高かったと市場は見ていたのかもしれません。
つまり、ハリス氏の政策はインフレを通り越して、景気後退が予測され金価格が上昇していた側面もあったかもということです。
あくまでも、結果論ですし金価格の上昇については米国債務の急増ですが、
→ゴールドが最高値を更新し続ける”本当の理由”とは?今後も上昇する可能性は高いのか?
トランプ氏よりもハリス氏の方が、”より米国経済は危機的状況に陥る”と判断されていたのかもしれません。
逆にハリス氏が当選した世界線ではマーケットがどうなっていたか?気になります。
ただ、ここまで書いておいてですが、なぜ下がったか?は正直どうでもよく、今後どうなるか?がより重要です。
2,トランプ氏当選でも貴金属の価格は上昇する可能性が高い理由は?(長期的には)
トランプ氏が当選したことで米国経済は大復活し、36兆ドルにおよぶ債務問題は消し飛びFRBの損失が魔法のように消えるわけではありません。
政府債務だけでなく、中央銀行であるFRBは2070億ドルの損失(150円換算だと 31兆5000億円 の損失)です。
もっとも現実的な解決方法は支出を削減し、生産性を上げ歳入を増やすことです。
しかし現在はGDP上昇より債務増加のペースが上回っている状態です。
また、現在政府債務の利払い費(赤線)だけで1兆ドルを超えており、これは国防費、医療費を既に超えてます。
※赤 利息、青 国防費、灰色 医療支出、緑 社会保障費
このような財政支出に対応する為、トランプ氏はイーロン・マスク氏が政府効率省という政府の無駄を削減する要人に任命するようです。
そして、イーロン・マスク氏は「少なくとも2兆ドルは支出を削減できる」としてます。
また、2兆ドル削減できたとしても、利払い費分の削減にはなりますが、1兆ドルはほかの医療費や社会保障費、国防費から削減されることなります。
今まで受けられた政府サービスは受けられなくなるということです。
当然、政府債務は持続不可能なのでそんなこと言っていられませんが、多くの人は理解しているのか?疑問です。
多くの一般人は、支出削減が実施される際に「そんなはずではなかった」と現実に直面し猛反対が発生、結局大して削減できないのではないか?とも思えます。
支出削減、インフレ抑制ができないのであれば、限界まで債務増加を続けるしかありません。
米国の赤字財政の回復が不可能だと、投資家が判断すれば債券が売られ続け、金利上昇が止まらなくなる。
そして、誰も債券を買わないとなれば、どこかの時点で日本のようにYCC(イールドカーブコントロール)を実施の可能性もあるかもしれないというのが海外投資家らの予想の1つです。
YCCが実施されれば、更に債務増加ペースは加速し、それとともにインフレも上昇。すなわち貴金属を含むコモディティの価格は大幅に上昇すると思われます。
YCC導入するか否かによらず、1970年代はいつ終わるか分からない、急激なインフレ上昇から逃れようと人々は資金を貴金属に殺到し金は30倍以上価格が上昇しました。