純喜のバンドが怪獣の花唄を歌うまで2
「あのさあ〜俺ら同じ学年やん?敬語やめよや〜」って笑う純喜くんに「ごめんけど、マジで聞いて、聞いてください」って訳わかんなくなって謎口調、白昼のファミレスで土下座し始める大夢くん「あのバンドもっかいやりたいです!!お願いします!!」 コーラとフローズンメロンソーダ混ぜた特製ドリンク(好き)飲んでた翔也くん「お願い純喜くん、俺らずっと純喜くんのこと待ってました。本気でやりたいんです」 表情を崩さない純喜くんに焦る景瑚くん「純喜が必要なんだよ、純喜じゃないと…純喜がいないと、無理なんだよ」って3人で畳み掛ける
「んー。ありがと」ってちょっと困ったみたいに笑う純喜くんの横に、今日は仕事だから無理、と連絡が来ていた香信くんが走ってきて、「くっそ!ほんとにいるじゃないですか!河野先輩!」って人目も気にせずバカでかボイスで叫んでもうカオス。いまだ困り顔の純喜くんを見て「…純喜、なんであの店の前にいたの」って切り札のつもりで言う景瑚くん、ワンテンポ置いて「あー、俺の相棒はもうもらわれたんかなーと思って」って笑いながら言う純喜、希望が希望じゃなくなる瞬間
「は?どういうこと?」みんなが驚く中「俺がずっと使ってたギターあるやん?あれ売ったんよ、なんか今一周して人気ある型らしくてさー」って飄々と返す純喜くん、「俺もうギター弾かんし、バンドは出来へんよ」今度こそはっきり言葉にされて何も返せない4人。「ほな、俺もう行かな!ごめんなあ、ちょっと今日予定あって。久々会えて嬉しかったわ!」って立ち上がる純喜くんのこと誰も止められなくて、全員意気消沈して解散。
帰って1人になってから冷静に(いや俺仕事辞めちゃったんだけど?!)ってなって居ても立ってもいられなくなって部屋を飛び出す景瑚くん、考えるより先に体が動いて気がつけばあの楽器屋さんの前。いろんな感情が入り混じって恐る恐るドアを開けると、見慣れたギターとそれに手を伸ばす男性客が目に入って思わず「ちょっ…それっ!あの俺も欲しくて!」って大声出しちゃって「あっ…すんませんええと違うくて…あのそれ俺の…」って言葉に詰まってたら店主のおじさんが「あれ?もしかして」って気づいてくれて、「…お久しぶりです…」って気まずい景瑚くんとお客さんに耳打ちする店主のおじさん
何かを聞いた男性客は表情和らげて「君が景瑚くん?初めまして、河野純喜の父です」って手を差し出してくる。反射的に握手を交わしながら「はあ…」としか言葉が出なくて、後から(は?純喜のお父さん?え?何?なんでお父さんがここにいんの?)の混乱が全部顔に出る景瑚くんを見てにこやかに笑う純喜パパ、「君のことはよお純喜から聞聞いとったよ〜。ドラムの景瑚くんやんな?」ああたしかに、笑った時の目が似てるな、ってぼんやり考える景瑚くん
はっとして「あの…それ」って純喜のギターを見やる景瑚くんを見て「景瑚くん、今時間ある?」と純喜パパ、なんかもう思考停止してる景瑚くんは「あっ…はい俺今無職なんで…」訳のわからない暴露して無職なん?って笑われながら2人で近くの喫茶店へ。
え勢いで着いてきたけどなに話すの?って困惑してる景瑚くん、何飲む?って飄々としてる純喜パパ見てたらなんだか腹が立ってきて「あのギター…、純喜のっすよね」って声に出してからうわちょっと刺々しかったなって目逸らしてパパの返事待ち
「景瑚くん、お願いがあるんやけど」って急に真剣な顔で話始める純喜くんパパ。実は純喜は軽音に打ち込んでた高校生の時に病気で一年休学しててそれが原因で浪人したこと、ドラム出来るやつに会った!って嬉しそうに景瑚くんの話をしていたこと、大夢はほんまに甘え上手でな〜翔也はセンスの塊!香信ってやべー奴が入ってきて、素直じゃないけど可愛いやつやねんって毎日のように聞かされていたこと。病気が再発して大学を辞めたこと、しばらく膠着状態が続いてた病気が進行し始めたこと、もうすぐアメリカで手術を受けること。初めて聞くことばかりで悔しくなる景瑚くんに一息おいてからゆっくり口を開く純喜パパ「それで…景瑚くん、純喜と、またバンドやってくれへんかな」
脈絡無さすぎてついていけない景瑚くんと堰を切ったように早口になるパパ「手術を受けたら病気は治る可能性が高い、けど、高確率で記憶障害が残るって言われた。純喜は、死ぬよりはマシやんな!って笑っとったけど、あんだけ大事にしとったギターを売った。純喜は、…あの子は、失う前に、大切なものを自分から手放そうとしとる。俺の頼みは、君たちを苦しめるかもしれん、身勝手に思えると思うけどでもそれでも親として、あの子の笑顔を諦めたくないんや、あの子が今の純喜でいられる間だけで良い、そばにいてやってくれへんかな」
「…俺らは純喜に断られました。あいつは俺らのこと、望んでないかも」と弱気な景瑚くん。「なんで俺らなんすか?純喜人気者だったし、他にもいるっすよね」って思ってもないこと言って自分で傷つく景瑚くんに、もう懇願するように頭を下げる純喜パパ「…これ、うちの住所やから。明日、飯食いに来てくれへんか、純喜もおるから」って困り顔の景瑚くんおいて、わざと万札置いて店を後にする(続く)
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