満月の下でニケと共に forカウンターズ

突然だが、今宵は中秋の名月だ
一般的に秋の夜に月を見て団子を食べるという習わしが古くから伝わっている

「と、いうわけだ」

雑誌から顔を上げて指揮官室に集まってくれた各々の顔を見る

「所謂、″お月見″と言われているやつですね」
赤髪の女の子
―ラピ―
が私の発言に対して補足を入れてくれる

「お月見と言うと満月のイメージがあるのですが」
銀髪の少女
―ネオン―
がそういう

「満月じゃなくても一応中秋の名月と呼ばれるそうよ」

「さっすがラピ!何でも知ってるよねー」
黄色髪の少女
―アニス―がその解答の速さに茶々を入れている

「もうラピペディアですね!」

「ラピペディア!いいわねそれ!」

「いいわけないでしょ……」

「ラピペディア……たしかに語感は凄くいいな」

「指揮官まで……やめてください」

物知りなラピにぴったりなあだ名だと思ったのだがな……

閑話休題

「それで、なんで急にお月見の話なの?」
アニスが切り出す

「あ、そうですよ師匠、なんでですか?」
それに呼応するネオン

「ああ、まあ、せっかくだからカウンターズでお月見をしようかと思ってな」

イベント事になると大抵私が駆り出されている為、カウンターズと祭事を楽しむことも少なくなっている
バックアップばかりして貰うのも偲びない

たまにはカウンターズがメインを張ってもいいだろうと思うのだ

それを伝えたところ

「指揮官……」

「そんなことまで考えてたんですね師匠……」

「やっぱり指揮官様は指揮官様よね……」

……それは感動してくれてるということでいいのだろうか……?

「よーし!指揮官様がそこまで言うならお団子作っちゃうよー!」

「師匠は夜まで待っててくださいね!」

「美味しいお団子を作ってきます」

3人がやる気に満ち溢れた言葉を投げかけてくれたので夜まで待つことにした

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指揮官室から見える月が一番キレイだということで、3人の到着を待っている

「指揮官、カウンターズ到着しました」

ラピの声がする

「開いてるぞ、入ってくれ」

「失礼します」

と、声がした後ドアが開き3人が入ってきた

「お待たせしました」

「お団子作れましたよ!」

「腕によりをかけて作ったんだから!」

ラピ、ネオン、アニスと続いて発言している

ラピが持っている台の上にはきれいなピラミッド型に月見団子が乗っている

「お疲れ様だな、座ってくれ」

窓の真正面になるように配置されたソファに誘導する

団子が乗っている台を置き各々が着席しようとしたとき

「そういえば、指揮官様はどこに座るの?」

とアニスから疑問が上がった

「あ、そうですよ師匠、このソファ私達が座ったら埋まるじゃないですか」

来客用のソファの為本来なら3人でも詰め詰めになるはずなんだが……?

「私はその隣に椅子を置くよ」

それ用の案はあると伝えると

「えー!私の隣にきてよ!」

アニスがとんでもないこと言った

指揮官室が凍りつく

「そんな!師匠は私の隣に来ますよね!」

いやいかないが

「指揮官……信じています」

そんな顔で見つめないでくれラピ

「いやだから、私は一人用の椅子で……」

「ならその隣に私が行くわ!」
というが早いかアニスが椅子を置いた隣に着席した

「あ!ずるいですよアニス!」

「そうね、流石にどうかと思うわ」

2人の不満が漏れていく

「へっへーん!早いものがちだもんねー!
ねっ!指揮官様!」

「あ、ああ……そう……かな……?」
無邪気な笑顔でそう言われると言い淀んでしまう

「公平にじゃんけんにしましょう!」

「私の意思はどこにあるんだ……?」

「指揮官様は優しいから選べないでしょ!」

「じゃんけんしましょうか」

ラピが燃えている

「えー!早い者勝ちだって指揮官様が言ってたじゃん!」

「アニスに気圧されただけですよ!」

まあ、それはそうだな

「アニス、じゃんけんしたほうがいいんじゃないか?」

「指揮官様まで!?」

「ほら!師匠もこう言ってることですし
ね!ラピ!」

「そうね、公平性を求めるわ」

「そんなぁ……!」

というわけで急遽じゃんけん大会が始まった

「「「最初はグー!
じゃんけん……!」」」

ポンと3人の声が揃って手を出している

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「指揮官」

「なんだ?」

「月が綺麗ですね」

私の隣を勝ち取ったラピが語りかけてくる

「ああ、そうだな」

「……」
なんか睨みつけてきている気もする

「あーあ……せっかく隣に行けると思ったのにー」

アニスがうなだれながら団子を頬張っている

「仕方ないですよ、公平な結果なんですから」

そのアニスを慰めながらも落胆している様子が伺えるネオン

「そもそもネオンが3回勝負!とか言わなければ勝ってたのにー!」

はじめに出された手はアニスの1人勝ちだった
それを不服に感じた2人が後出しで3回勝負にし、見事ラピが勝ち抜いたのだ

「決まったことよ、受け入れなさい
あ、お団子食べますか?」

ラピが団子を取ってくれる

「ああ、いただくよ」

それを受け取ろうとしたとき

「……」
団子をじっと見つめるラピ

「食べたかったのか?」

「いえ……その」

もじもじと太ももを擦り合わせている

「なんだ?」

「あ、あーん」

伸ばされた腕が先に摘まれた団子を私に向けて来る

「……」
咄嗟のことに呆気にとられていると

「あ、あの指揮官?」

ラピが顔を伺がってくる

「あ、ああ、悪い
あーん……」

差し出された団子だけに口をつけるようにいただく

「ど、どうでしょう」

「普通に美味いぞ」

「……よかったです」

視界がラピから離せない
音もこころなしか聞こえなくなっている気がする

「……ちょっとー!私達もいるんですけど!」

「2人だけでいい雰囲気にならないでください!」

抗議の声で世界に戻って来る

「す、すまない」

「いいところだったのに……」

「私も!私も指揮官様にあーんってする!」

「あ!私もします!ラピだけずるいですからね!」

「隣に座ったものの特権だからだめ」

「なら私は真正面に!」

「な、なら私は反対側にいくわよ!」

取り囲まれてしまった……

「師匠」

「指揮官様」

「指揮官」

「「「はい、あーん」」」

3方向からから伸びてくる腕

受け取らなければ男が廃る、と言い聞かせ、3人からの好意と団子を口に運ぶのだった

満月の下でニケと共にforカウンターズ 
            〜end〜

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