いとこの美少女・ミキちゃん
いとこの同い年のミキちゃんが隣町に住んでいた。
母メロンパンの弟の娘さん。
ぱっちりお目目でスタイルのいい女の子だった。仲良しの女の子のお友達も多く、男の子にもモテていた。性格も明るくいい子だった。
幼稚園児くらいの時に、私とミキちゃんで喧嘩をしたら母と祖母アンパンが私達を引き離して、「喧嘩するからもう遊ばせないでおこう」と言ったことを覚えている。
次女里芋は私を毎日ぶすと言うのに、ミキちゃんは「ミキちゃんかわいい♡」とミキちゃんばかりほめていた。ミキちゃんがいない時も私に「ミキちゃんはかわいい♡」と聞こえよがしに言っていた。
里芋は私には意地悪しかしないのに、ミキちゃんには優しくお姉さんらしく振る舞っていたので、ミキちゃんは里芋が好きだった。2人は仲良しだった。
祖母アンパンも「ミキちゃんは可愛くてスタイルいいのに、かぼちゃはデブで足が太い。」と私によく言ってきた。祖母には幼い頃から高校生になっても容姿をからかわれた。
小学2年生の時にミキちゃんがお誕生日会に誘ってくれたのだが、私は「行かない!」と怒り口調で断った。
後に遺産相続でもめることになるミキちゃんの母親にはこのことを根に持たれてしまった。「かぼちゃはミキのお誕生日会に来なかった!」と数年先も怒っていた。
私なりの理由があって、決してミキちゃんを嫌っていたからではない。むしろ逆で私はミキちゃんが好きだった。コミュニケーションのとれなかった私が“いとこ”という理由で唯一仲良くできたのがミキちゃんだった。
母メロンパンは次女里芋が独占していたからか、私はミキちゃんを独り占めしたかった。私だけを見てほしかった。
だから、お誕生日会に私以外のお友達を誘っていたことに腹を立てたのだ。
簡単に言えば、ミキちゃんの仲良しのお友達に嫉妬。
ミキちゃんはピアノを習っていて「ピアノの先生優しい!いつも飴くれて美味しい!ピアノ楽しい!」とよく言っていた。とてもうらやましかった。
長女長芋と次女里芋は、ミキちゃんとは別のピアノ教室に通っていたのだが、私も習いたい!と母にお願いして習わせてもらった。
「これで、お姉ちゃん2人の仲間に入れるんだ!」と楽しみにしていた。いつも里芋から家族内で仲間外れにされていたので、ピアノ教室に通えばようやく長芋と里芋と仲良くできると思った。
ところが、私がピアノ教室に入ったと同時に姉2人は教室をやめた。
私は、ひとりぼっちでピアノ教室に入った。
幼稚園の頃から母に怒鳴られていた私はそのトラウマからか、あまり笑わない女性が苦手だった。
その先生がまさにそう。そして普段母に近寄らないようにしていたので、私は2人きりになることに慣れておらず、苦手なタイプの先生と2人きりのピアノの練習は苦痛の時間だった。
その先生は悪くないのだが、私の思惑とは違ったちめ習い事をやめたいと申し出たが、次女里芋は「やめるな!」と何度も怒ってきたので、仕方なく毎週ピアノ教室へ通い続けた。
そうやって、次女里芋が私だけに厳しく振る舞うので、私はますます萎縮した。
次女里芋にも祖母アンパンからも容姿をバカにされ、相変わらず母からは理由もなく怒鳴られていた私は、家族に好かれたくて必死だった。
祖母と母と私とミキちゃんで温泉に行った時に、私は小学校低学年なのに「お先に失礼します」と言ったり、寝る時は枕元にお洋服を出して、夜はしっかりと就寝したり、大人の手を煩わせないようにとにかくお利口さんにしていた。好かれたかった。
朝起きると、私が熟睡してる間にミキちゃんは祖母達と夜温泉に行っていたと聞いた。
ショックだった。
いい子に振る舞ったばっかりにまた私だけ蚊帳の外。いい子に振る舞わなくても、周りと打ち解けられるミキちゃんがやはり羨ましかった。
クリスマスシーズンに、隣町のミキちゃんの家で遊んでいたら玄関からサンタさんが来た。サンタさんに大喜びする私とミキちゃん。サンタさんは白い大きな袋からミキちゃんにプレゼントを渡した。
「いいな〜いいな〜」と羨ましがる私にはサンタさんは何もくれなかった。サンタさんはどことなく気まずい表情をしていた。
親が事前に町内か何かで手配していたのだろう。当時それがわからなかった私は悲しかった。そう、ミキちゃんの親はクリスマスプレゼントを用意していたが、私の親は用意してなかった。私はクリスマスに枕元にプレゼントを置かれたこともお誕生日を祝われたこともない。すごく幼い時にあったかもしれないが…記憶する限りほとんどない。
私は3姉妹の末っ子なので多少悪知恵のようなものが働いていたので、2人姉弟の1番目のミキちゃんを振り回していたと思う。
遺産相続でもめた時からミキちゃんとは音信不通になったので、2度と会うことはないが心の中で謝りたい。ミキちゃん色々とごめんなさい。
後にミキちゃんは20代半ばで結婚し2人の子宝に恵まれて幸せにしていると聞いた。
やはり、普通の家庭で愛情いっぱいに育った子は強い。きちんと幸せを掴んでいる。掴められるのだ。
かく言う私はというと、親の愛情をもらえずに毒親育ちのため性格が悪かったので婚活にはかなり苦戦した。婚活だけでなく、生きていく全てにおいて苦戦している。