何もわからない

<何もわからない>
冷たい雨の中を
顔をしかめて歩く
分かったものは何もないと
気付くその時の怖れ
また自分の哀れ
雨はつま先から沁みてくる
その淋しさ、やるせなさ
私はどこに行くのか、行こうとしているのか
幾度となく繰り返し
また繰り返す同じ問い
私は問いから生まれてくる
そう信じてしまう単純な勇気を
蔑みたい今日

私は一杯の紅茶に慰めを求めようとする
うまく淹れ損ねて薄い紅茶に腹を立てる
また、その自分を哀れみもする
私はどこに行こうとするのか
何処から来たのかも知らないまま

日々の慰めはない
両手で土をつかんで走り出す気力もない
私は笑わない
私は怒らない
私はしゃべらない

こんなに雨が降り
こんなに爪先が冷たいのに
私は生きることについて考えねばならない
逃れる道はない
私は前しか見ていないから

二度目の紅茶がフラスコの中で開き始めた
色を変えながら
葉はひとひらひとひら崩れるように落ちていく
二杯目はうまくはいった
こんなに微かな色なのに
この香り、この芳味
何かがうまくゆきそうな予感が生まれ
この香りが私を爪先の冷たさから救ってくれそうな気がする
全てはこれからだ
そう思い込むことにしよう
冷たく濡れた爪先と紅茶の香りが
今の私の生きる証だ

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