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現場 vol.50

私が建築現場に入ったころ、まだまだ、元前科者とか、元反社とか、職人さんの夏の作業着はダボシャツで汗をかくと背中の龍やら獅子やら、菩薩、明王が、浮き出てくる方々が、たくさんいた。休み時間の武勇伝も面白かったし、現場が終わった後の作業員詰所(休憩所)は、売店がお酒を売る時間になったり、帰りの道が渋滞することから、時間つぶしに、花札やチンチロリンの賭場になった。(30年以上たっているので時効ですよね)

そんな時分に職人になった私は、まず地下足袋をはくことから、覚えた。
最初に地下足袋を買ってきたとき新品の足袋をおかみさんが、貸してごらんと手に取り砂で汚した。ゲン担ぎで、転落などのけがをしないようにということだった。

また、足袋は立ったまま片足ずつ履き、片足立ちで履く、これも片足立ちで、しっかりバランスをとって立てるように、という意味と、その日の体調の確認のためだった。座ったまま履くなんて、ありえなかった。

また、尻を着けて座るのも(体育座りや胡坐)怒られた、いざというときにすぐ動けない(逃げられない)という意味だった。

古い風習やら、迷信に近い習慣もたくさんあったがその二つは職人をやめるまで、守り抜いた。

現在はとび職をやめ、約18年くらい前に、内装工事の監督を経て、会社の現場全体の安全管理となったが、内装工事というのはとび工事とは比べものにならないくらい安全なので、内装工事の監督や職人は、安全に対して無頓着だ。正直私が、とび工事をやっていたころ、物故者も出たし、大けがをした職人も何人かいたが、私の知る同業他社や私の所属する会社の中で、〇亡事故の発生はない、全治3か月6か月のけがでさえ5年に一人有るかないかである。そもそも、転落する高さが違う。潰すのも大した重さでない、切っても深くないものが多いのが、経験の少ない若い職人にはリスクアセスメントを真剣にやれない理由なのではないかと思う。

事故の例を数件揚げるが、石油プラントの工事をしているとき、私は高さ8m位の場所足場を組み立てていると、下から「あっ!」「やばい!」と声がした。すると、次の瞬間、乗っていた足場が下から突き上げられたと同時に、私の目の前に直径1mくらいの火柱と宙を舞うマンホールのふたが目に入った。すぐに火柱は収まりマンホールが地面にたたきつけられた。命からがら鉄骨の柱を伝い、地上まで下りた。

他にも吊り足場に跳ねだし部を作っているときに背後でラチェットを使って足場をばらしている塗装屋が居る。この塗装屋、私たちが載っている吊り足場のチェーンを吊っているクランプが塗装をするのに邪魔で外しているところだった。気が付いて「何ばらして…」と言いかけた瞬間足場が崩壊し約4m転落した。たまたま建物が近く鉄骨と建物の間をパチンコ玉の様に行ったり来たりぶつかりながら落ちたたおかげで、尻もちだけで済んだ。

また、鉄骨の架台を移動している横で支保工の解体が始まり、この時も「すぐに終わるから少し待ってほしい」と伝えた瞬間支保工のサポートがヘルメットの後頭部に直撃して脳震盪でしばらく起きあがれなくなったこともあった。

こんなことは、内装ではありえないし、まず起きることはない。

しかし、新築の商業施設の場合は話が変わる。
店舗の内装工事が始まるのは本来は箱ができてからなのだが、建築の工程が遅れることが多くなり、建築会社の危険作業がまだ残っているうちに現場に入らなければ、間に合わない状況がこの10年非常に多くなっている。

ちなみに以前のブログにも書いたが建物を作る工事がA工事(施主は不動産デペロッパー)で私たちはそこにたなごとして入る店舗オーナーからの依頼で(C工事として)現場に入る。

普通に考えて、マンションの1室を購入したオーナーが、ビルが完成していないので部屋に入れませんと言われているのと同じ様な状況で、あなた方は工事やってもいいよ、けれどゼネコン(A工事)優先ね、みたいな環境で入場させられる時が多い、普通マンションを購入して共用廊下を通れないとか、まだ上下水道が使えませんなんて状況で、前の家を引き払って引越ししてきて、普通の生活ができないなんてありえない。この辺のことをゼネコンの職人は考えておらず、お前ら人の現場に土足で入りやがってくらいの勢いで、目の敵にされる。
とても、理不尽な扱いを受けることがある。
ゼネコンが推した分、工期が延びるならば、まだましだが、施設のOPEN告知をしてしまっているために工期延長もできない状況になることが多い。

これでは、焦るあまり事故も多くなる、悪循環が起きる。
やはり、工期にはゆとりがないと、トラブルが多く発生する。2024年残業規制が輸送業界と建築業界に与える影響の目測を見誤ると2024年以降は事故連発の年になることが手に取るように見えてくる。

デペロッパー諸氏のお願いしたいのは、今の工期の1.5倍工期がかかるということを、費用も、たたいても、1.5倍以上の費用が掛かる見込みを立てた計画を立ててもらいたい。

今、一例として札幌駅前の開発(新幹線誘致)で北海道の職人不足はとても深刻化している。新幹線工事がその一端尚であるが、ニセコもリゾート開発などが行われ、完全に施工効率が落ちている。

技術力が分散されることが、想定できない事故が、増加している原因の一つであろう。

危機的状況を脱するためには十分な費用と工期に他ならない。


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