戦場に歌えば

…とある戦場…
銃弾が飛び交う。あたりの地面は空爆によって落とされた爆弾が破裂した跡で一面凸凹。
もとは豪華なホテルであった建物の残骸を盾に、降り注ぐ殺人道具の雨あられから身を隠す男が2人。
「今週は晴れだってな」
「局地的に銃弾のゲリラ豪雨さ」
「…紳士は傘を持たないんだ」
「…raindrops keep failing on my head…」
「「…And just like the guy whose feet are too big for his bed nothing seems to fit …」」
「雨に唄えば、か」
「ジーン・ケリーのタップダンスは最高。俺もカミさんにプロポーズした時は雨の中だった。」
男1が胸ポケットから折りたたまれた写真を取り出す。写真は幾度も開かれては畳まれてを繰り返しているためよれている。
「奥さんか?」
「ああ。2人でマルタに行った時にとったんだ。開戦直前の夏だ。あそこは雨が降らねえからっ風よ。」
「見ても?」
「ああ。」
男1、男2に写真を渡す。
「綺麗な人だ」
「ああ。世界で1番だぜ。俺は何度抱いてもあいつでマスがかける。」
「子供は?」
「その旅行で仕込んできた。先月の手紙に書いてあったよ。」
「そうか。」
「ああ…。……会いてえ。カミさんにも、子供にも…。」
「生きて帰ろう。生きて、またカミさんを抱いてやれ。」
「…へへっ。死ぬ時はカミさんとヤリながら死んでやるぜ。」
「その意気だブラザー。」
2人は意を決したように天を仰ぐ。銃声は鳴り止まない。空はどこまでも青く、続いていた。

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