【読書記録】 右利きのヘビ仮説
あなたは右利き左利き?
突然ですが皆さんの利き手はどちらですか、 私は右です、というか人類の殆どは右利きではないでしょうか。
調べてみると人口の約9割は右利きだそうです、右利きが多数派だということは皆さんも感覚的に知っていることかと思います。では何故人類の多数は右利きなのでしょうか?少し考えてみましょう・・・実はまだ理由が解明されていません、私たちの生活にこんなにも身近なことなのにビックリですね。利きに関することを左右性というそうです。
左右性は私たち人間でだけでなく多くの生物で見られるそうです、そしてそんな生物の1つにカタツムリがいます。そしてカタツムリのみを食べる珍蛇イワサキセダカヘビ 本書はそんな2種の共進化にスポットを当てた内容です。
本書の内容に関する詳しいところは著者である細将貴さんが答えているインタビュー記事があるります、内容が簡潔にわかりやすくまとめられており何度も読み返したくなる内容です。
本書のイントロに当たる部分をざっくりまとめると
①カタツムリの大半は右巻きだがごく少数左巻きの種がもいる
②しかし巻き方が違う同士だと子孫が残せないので左巻きの種がいることに矛盾が生じる
③石垣・西表島には左巻きのカタツムリが何種かいる
④またカタツムリばかり食べるイワサキセダカヘビも同時にいる
⑤ということはこの蛇が何かヒントを握っているのでは?
仮説:イワサキセダカヘビは右巻きのカタツムリを食べることに特化しており、これが左巻カタツムリの生存率を高め種分化を促進させた
とまぁこんな感じだと思います。(まちがっていたらごめんなさい)
そこで筆者はまずイワサキセダカヘビの頭の骨格は何か特殊な構造をしているはずだと考え、セダカヘビの標本をかき集めてレントゲン写真を撮り、なんとセダカヘビの歯の数が左右で違うことを発見しました。
標本は素晴らしいですね。
私今まで標本には生き物を殺すことへの抵抗感があるのですが(ロードキル個体はよく骨格にしてます)その意図であったり価値をしっかりと認識できていなかったのだと痛感させられます。
とまぁ左右で歯の数が違うことを発見たので、次はいよいよ捕食行動をみるための実験です。そのため生きたイワサキセダカヘビが必要なのでいよいよ西表島に捕獲に行くわけです。
とうとうこの時が来ましたね・・・
ヘビの中には珍蛇といわれる見つけるのが非常に難しいヘビ達の称号みたいなのがありイワサキセダカヘビはそれに該当します。
私今までに4回奄美大島に行っていますが(1回の遠征で大体5泊くらい)そこの珍蛇といわれるヒャンという蛇を見たのは1回だけです。しかもヒャンは割と見つけるのが簡単な部類だそう・・・笑。
本書の内容は著者が修士の頃からおこなったそうですが、この様な珍蛇を扱う研究をするのは中々勇気のいることです。考えるだけで身の毛がよだちます。
そしてまぁ何とか捕まえることができ京都にある実験室へ持ち帰り、いよいよイワサキセダカヘビの捕食行動の観察です。ここでの行動観察は約1000日にも及んだそう、もちろんその中で様々な苦労があり試行錯誤の中ついにイワサキセダカヘビの捕食行動の様子をビデオに収めることができます。
そこでなんと予想だにしていなかった事実が発覚します。
詳しくは是非本書をお読みください♪
そして最後に世界中のセダカヘビと左巻きのカタツムリの分布を調べてその割合から右利き蛇の仮説を論じていく内容となっております。
私の文章だとイワサキセダカヘビがメインになってしまっていますが、カタツムリもメインです。本書は2種の共進化をテーマに描かれています。
きっとこの2種の関係に左右性のヒントが隠されていると思います。
本書はそれ以外にも著者の研究に行きつくまでの苦労や研究者としての不安や焦燥感といった背景描写もあるため書かれている内容が理解しやすくページをめくる手が止まらなくなりました。
それではここまでのご拝読ありがとうございました♪