1990年11月9日(金)
【熊大迷宮:今週のスポットライト部隊】
「あれ、解除できた」
目の前の扉の罠を解除できた真田 美和が少しとぼけた声をあげる。ここは熊大迷宮地下2階。天才の部屋へと向かう扉の罠解除を行なっていた真田だったが、正直まだ解除できると思っていなかったらしい。
「あ、解除できたんだ。村川くーん。解除できたみたいよ〜」
真田の後ろで罠解除を見守っていた草野 紗江が、少し離れたところで休憩をしていた村川 慎太郎に伝達する。それを聞いて、村川と、村川と一緒にいた神田 空、黒下 了、榊 麗美も扉の前に集まってくる。
「真田さん、解除できたんだね。失礼だけどまだ無理だと勝手に思ってたよ。ごめんね。」
少し気まずそうに村川は真田に声をかける。
「いえいえー、私も解除できるとは思ってなかったのでー」
そう言って真田はなぜか恥ずかしそうに村川に言葉を返した。
「ではどうしようか、2階の探索もある程度終わっているし、噂の天才と戦ってみる?」
村川は部隊全員に視線を向けると全員が天才との戦いに挑みたいとの表情を浮かべている。それを確認した後、村川は全員に天才の部屋への移動を指示した。
「俺は天才だー、覚悟はいいか」
天才を出現させ、戦闘を開始する。戦士3名のうち、村川は初見で天才の動きをある程度把握し、攻撃に対して普段より慎重にではあるが確実に対応できている。ただ、草野と神田は天才の素早い攻撃に回避が間に合わず、数回攻撃を食らっている。
「草野さん、神田さん、ダメージが大きくなる前に離脱して回復してください」
天才の攻撃を確実に交わし、的確に攻撃を加えながら村川が二人に叫ぶ。それを聞いて、まず草野が一旦引き、黒下に回復を頼んだ。
「神田さん、大丈夫?」
「もちろんですよ。こんな見てくれ優男には負けられません。グハ」
村川が神田に状況を確認したが、大丈夫の返事の後、天才からの一撃を喰らい、神田は戦線を離脱する。
「戻ってきました。援護します」
回復から戻ってきた草野と二人で天才を追い詰め、5分ほど経った後、天才は膝から崩れ落ちた。
「いやー、後ろで見てましたけど噂通りに結構強いですねー」
そう言いながら後方からやってきた真田がレア物質の回収を始め、草野と村川は回復を行なっている神田の様子を確認する。思ったより傷は深くないようだ。
「では神田さんの回復が終わったら今日は帰りましょうかね」
そういって村川は乱れた呼吸を整えるべく大きく深呼吸をした。