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1990年11月7日(水)

【生協:佐々木 雫・江村 香奈恵】
「ここ座ってもいいですか」
「あ、はい、いいですよって香奈恵じゃん」
 食事中に声をかけられた佐々木 雫は、返事を返しながら声の方向に目を向けると、そこには江村 香奈恵が立っていた。ここは熊大『生協食堂』。2限目が終わった時間であり、たくさんの大学生が昼食を食べに訪れている。佐々木も2限目の講義を終えてのんびりと昼食を食べていたところであり、同じく2限目を終えた江村に声をかけられたのである。ちなみに2人は冒険者の同じ部隊の仲間であるが、大学の学部は異なるので大学ではあまり出会うことがない。江村が属する法学部と佐々木が属する教育学部は建物自体は熊大北地区の近くの場所にあるので、偶然出会う可能性はないこともないが、不思議とあまり出会わないのである。
「なんか雫って1人でいると全然戦士に見えない」
「それって褒めてる?」
 椅子に座りながら声をかけた江村を見つめながら、佐々木は怪訝な表情で返事を返す。江村は魔術師なので、戦士の佐々木とは鍛錬場でも会うことはない。一緒にいるのは探索時であり、探索中の佐々木は結構ビリビリしており、目つきも鋭く声をかけにくい雰囲気なのである。だが、今1人で食事をしている佐々木はカジュアルな服装も幸いして、非常に可愛い印象を受けるのである。
「香奈恵はあまり変わらないかな」
「魔術師だしね」
 江村を見つめながら佐々木が口を開く。探索中魔術師は戦士に比べるとかなり落ち着いて探索している。それは精神力を消費することは魔力を消費することに繋がるからである。この後、2人は食事を終えた後、しばらくおしゃべりを楽しみ、3限の授業に間に合うタイミングで生協を後にしたのであった。

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