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20230114 春風亭一花(大須演芸場)
本年2回目の落語会。
昨年、チケットまで買ったのに急遽仕事が入って行けなかったいわくつきの落語会。一年越しに行けてよかった。
開場18:00という遅い時間からスタート。日中は大須や栄でブラブラするつもりだったのだが、結局家でダラダラしてしまった。定食屋で腹ごしらえをしてから大須演芸場へ。先日、『古今亭志ん朝 大須演芸場』という30枚組のCDボックスを購入したばかりなので、ちょっと違った目で行き慣れた大須演芸場を見てしまう。かなり改装したと聞いたが当時の雰囲気はどれくらい残っているのだろうか。
春風亭一花は数いる女流落語家のなかでも好きな落語家だ。とはいっても生で見たのはどこかの落語会で開口一番に出ていた林家きよ彦のみで、あとはテレビかyoutube。一花以外では、蝶花楼 桃花、林家つる子、桂二葉、露の紫、くらいか。講談を入れるともう少し増える。女に落語は無理だとは言わないけど、一花、桃花以外は正直イマイチだった。たまたま出来が悪い高座を見てしまったかもしれないが、つる子、二葉は女流抜きにして純粋に落語だけを見ても好きになれなかった。僕の落語ノートで最低点の☆半個という最低記録をたたき出している。何がどうイマイチだったのかは具体的には書かないが、やっぱり女性に落語は難しいのではというのが正直な感想。
じゃあ、なぜ身銭を切ってわざわざ女流の二つ目の落語を聞きに行くのかというと、暇だったからというのが一番の理由。それとyoutubuなどで拝見する限り、一花は何となく応援したくなる雰囲気がある、下手じゃないし、なにより女性を売りにした落語をしていない気がする。教わった落語を変に色を付けずそのまんまやる感じが好きだ。女流落語家というと、どうしても容姿を見てしまうのがおっさんのダメなところなのは承知の上で、この人は本当に人に嫌われない容姿をしていると思う。女性にも男性にも年寄りにも若い人にも好かれる見た目。悪く言うと人畜無害。
ということで開口一番なしでいきなり舞台にあがる一花。客の入りは一階のみ開放で六七分といったところか。二つ目の落語会なんだからこんなものだろう。まずは自分の写真のパネルの抽選会からというよくわからないスタート。桃花あたりがこれをやると、妙に生々しいし、これだから女流落語家はとうるさいおじさんが怒りだしそうだが、一花がやると癖がない。何か恐縮した感じが逆にいい。
最初のネタは『駆け込み寺』。あとから知ったのだが柳朝作の新作だそうだ。珍しい作品で滅多に高座にかけないネタらしい。柳枝に夫婦で習いに行ったそうだ。これが明日の伏線になるとはこのときは想像していなかった。夫婦喧嘩の噺で、奥さんは家を出ていってしまい、ああだこうだとあるわけだが、何で家を出る際に奥さんはいざ鎌倉なんて言ったのだろう。不自然すぎるでしょ。僕が気付かなかった説明があったのか。一花はこのネタはサゲが気に入らないとこぼしていたが、それよりもこっちのほうがこのネタの致命的なところだと思う。
次のネタは『明烏』。もう聞き飽きたといってもいいくらい、様々な落語家さんの『明烏』を聞いてきたので、またか、とちょっとがっかりした部分もあったのだが、物語が進むうちにどんどん噺に引きこまれていった。一花は演劇経験があるのだろうか。眉毛や眼球の動きでの表情の作り方、声での演じ分け方がすごく達者だし、わかりやすい。当然のことながら上下の切り方も丁寧。女を知らない時次郎はとても可愛らしいし、遊び人の源兵衛と多助も女性が演じると違和感を感じたりしそうなのに、全くなかった。素直にうまいなぁと感心した。
ただし本当のいい落語ってうまいなぁとかそういうテクニカルな部分は忘れて噺に没頭するんだと思う。何にも考えずにケラケラ笑ったり、筋は完全に知っているのにいつの間にか人物が目の前で喋っているように感じる、感情移入しちゃっている。眉毛の動きとかに感心させているようじゃダメなんだろうなぁと思いつつ、でもそんなことができるのは極一部のトップ中のトップの人だけだから、二つ目の落語家さんにそこまで求めるのは酷だ。
中入り後の鳥ネタは『子別れ』の下。知らなかったがこれだけで『子は鎹』という噺になるそうだ。『子別れ』だとわかった瞬間、嫌な気分になった。現在進行中で奥さんと子供と別居中の身である僕にとってはリアルすぎて聞くに堪えない。亀がおでこに傷をつけている場面なんてもう胃が痛くなる。とはいってもそれはこっちの都合なので、一花に文句を言っても仕方がない。女性の落語家の最大の弱点は男を演じるときの違和感だと勝手に思っているのだが、一花の熊五郎は何の違和感もなかった。これは結構すごいことだと思う。お光さんは抜群。さっきと同じ感想になるが、上手いなぁと感心。
噺の中では亀が間に入って夫婦は仲直りするわけだが、現実はそこまで単純じゃない(たぶん)。こうやってあっさり夫婦仲のヨリが戻るところが男目線なのかなと思ったり。そういうこと言いだしたら、落語のほとんどのネタは男の都合で描かれている。そっち方面の人が落語に目を付けられたら、たちどころに「自粛」となってしまうネタばかりだ。僕も知らぬ間にそういうことに過剰に反応しているのがすごく嫌だ。『井戸の茶碗』とか。まぁこれは別の話だけど。
全体的に非常に満足度が高い落語会だった。春風亭一花は追っかけ甲斐のある落語家だと思う。次があれば必ず行く。