20230108 玉川太福独演会(大須演芸場)
去年に引き続き、新年一発目は友人と大須観音で待ち合わせして一杯飲んで、演芸場で玉川太福の浪曲を聞くという段取りだったのだが、大須はとんでもない人手。去年なんて閑散としていたのに。ということで飯屋を探すのも一苦労。ベトナムサンドイッチ屋にかろうじて空席を見つけ、バインミーとフォーでベトナムビールを飲む。ちなみにこれが本年初のアルコール。美味しかった。
昨年は秋田料理屋で日本酒をしこたま飲み、それから浪曲を聞いてしまったので大爆睡。ゲストの活動弁士坂本頼光のネタも会場を暗くしてやるから寝るのに最適すぎて、中入り以外は最初から最後までずっと寝ていたという大惨事だったので、今日は350mlの缶ビール一本だけにしておく。
大須演芸場は超満員。2階は開けていたのかな。確認していない。1月一発目の日曜日は玉川太福独演会というのが年中行事になってほしい。
最初のネタは『太閤記』から『長短槍合戦』というやつ。ちゃんと地元名古屋に合わせてくれてさすがだなぁと感心しつつ、爆睡。隣の友人も爆睡。勿体なかった。
続いては今回のゲストの春風亭かけ橋。ヨネスケちゃんねるで存在を知った苦労人。落語協会時代の師匠と今の芸術協会の師匠が二つ目の披露公演に出てくれるんだからすごい。人格者なのか。YouTubeで見る限り、話も達者だし落語の方はどうなんだろうと楽しみにしていた。見た目も格好いいし、話しっぷりも堂々としているし、さすが前座経験が長いだけあってしっかりしているなぁと感心した。ただ選んだネタが『大工調べ』でこれは古今亭志ん朝のやつを聞いたばかりなのでさすがに分が悪い。棟梁が大家に啖呵を切る場面はあまりに差があった。落語の感想文を書くにあたって、志ん朝至上主義者にだけはなるまいと固く決めているのだが、こればっかりは仕方がない。
中入り後のトリネタは『浪花節爺さん』というやつ。新作というか創作落語で太福の師匠が得意ネタにしていたそうだ。太福の創作浪曲はソーゾーシーの公演で二回ほど聞いたが、サウナのネタはいままでライブで見たあまたの演芸の中で一番といっていいほどスベッていた。名古屋で放送していない番組のパロディだったから観客のほぼすべてがポッカーンだった。あそこまでスベったネタを見れたのは逆に幸せだったのかもしれないと思うほど。ということで、太福の創作浪曲は嫌な予感がしていたのだけど、そうでもなかったというかかなり良かった。
まず何より立って演ったのがすごくよかった。浪曲は「唸る」と呼ぶらしいのだが、これが立つことによって身体全体を使うことが出来て、最初のネタとは比較にならないほど気持ちよさそうに「唸って」いた。正直、話の内容は他愛もないものだけど、浪曲特有の「唸る」というやつを思う存分堪能できた。曲師のみね子師匠も旦那さんの思い出のネタなのか楽しそうに合いの手を入れながら三味線を弾いていた。あれって全部アドリブなのだろうか。耳心地がよくて、ずっと聴いていたくなる。笑うというよりも上質の音楽ライブを堪能した感じ。正月でなんかめでたい感じだし。幕が下りた時はあぁ楽しかったと大満足。帰りの大須商店街で僕も一生懸命「唸って」いた。あれは真似したくなる。できないけど。
来年も必ず行こうと思わせる独演会だった。