北海道横断の旅ショート版 第1話 セントレア
旨い飯を食いたかった。
時は遡り2023年3月1日。卒業旅行という名目で大学の友達と北海道に行ってきた。当時は名古屋市内の大学4年生で、一緒に行ったメンバーのほとんどが大学院に進学するので最後のお別れ会という雰囲気はなかったが、一つの締めとして、いやただ単に旨い飯にありつくために旅行したのだ。時系列としては自著の前作「学会遠征編」シリーズより丸1年前にはなるが、これはこれで一つの物語として楽しんでもらいたい。
登場人物
自分:卒論発表やその他あらゆる発表・提出物にいったん区切りがつき、ようやく羽を伸ばせると思いきや、3月末に資格試験があるので心のしこりは取り切れていない。
ヌートバー:岐阜市在住。野球が好き。旅行はあまりしない方だが、今回はとても興奮している。しかし、ギャグの寒さは北海道の冬に引けを取らない。
ごま男:ラーメン屋で卓上のごまを振りかけようとしたとき、勢い余って蓋が取れてしまい、ごまマシマシラーメンが出来上がってしまったことがある。バイトをしていないので、周りからしばしばニートキャラとして扱われる。
ゲオ:慎重で穏健派。今回はあらゆるイベントの予約をとり行ってくれた。出身高校はいわゆる田舎の自称進学校という感じだったらしい。
青:プログラミングの腕がよく、講義の課題ではよくお世話になった。ヌートバー、ごま男、ゲオと同じ研究室に所属している。しかし、生の魚介全般が苦手。
コメダ:福井出身で訛っているが、寒さや雪には滅法強いので、我々にとって心強い味方である。元サッカー部で、ポジションはFWだった。
直弼:宮崎県出身。大学の近くで独り暮らしをしているので、放課後はよく我々のたまり場にされていた。そのため、部屋にはカセットコンロやたこ焼きプレート、雀卓にボードゲームなどとても一人では使わないようなものが揃っている。太い。
アメフト:高校時代は野球部で、大学ではアメフトをやっていたので、ガタイはいいが、温厚な性格である。趣味はスノボで、自分用のボードや靴を持っている。時々車を運転して通学する。
ゴルファー:某プロゴルファーと同姓同名。趣味は旅行で、この北海道旅行の1週間前にも一人でシンガポールに行ってきたらしい。飛行機の予約など何から何まで今回の旅行でサポートしてくれた。
ちなみに、9人とも同い年の同学年である。LINEグループ名は、桜田門外
1日目の旅程
① 8時過ぎに飛行機:セントレア→千歳
② 空港で昼食
③ レンタカーを借りて、旭川までドライブ
④ 旭川で1泊
出発の起床 AM5:30
5時半にアラームが鳴った。これ以上の睡眠は許されない。事前に買っておいた朝食用のパンをかじり、僕の旅は始まった。荷物は前日に用意しておいたので、そのあたりは安心である。セントレアに向かうために名鉄に乗る必要があるが、どうせ似たような便にみんな乗ることになるだろうということで、集合できる人は金山に7時集合を提案していた。僕は無事金山組と集合できた。ここにいるのは直弼・アメフト・コメダ・ごま男である。
数十分前、この4人は直弼のアパートに集合した。コメダは直弼の家と近いのでわかるが、あと2人はJRで来れるからという理由で一度寄ったのである。その寄った目的とは、そう、雀卓とカタン、カタン拡張パックを手分けして持っていくためである。僕は当初、さすがに冗談だと思っていた。確かに、放課後はよくこれらのゲームで盛り上がっていた。しかし外へもっていくにはあまりにも大荷物であるので、わざわざそんなことまでしなくとも、トランプなどで十分盛り上がれるからだ。彼らは本気だ。雀卓もカタンもない夜はあり得ないのである。それならば僕も協力すればよかったとも思ったが、ここまではなんとか4人で運べたのは事実だ。縦に長い雀卓マットのロールを預かって持っていくことにした。もうすでに面白い。
少ししてゴルファーとも合流した。なんと1週間前にシンガポールに行ってきたばかりらしい。なんという元気だろうか。とはいえ、このパーティに旅行マスターがいるのは心強い。彼の知識無くしてここまではスムーズに来れなかったことだろう。大変感謝している。
予定の電車がやってきた。この電車は岐阜発の始発で、ヌートバーが乗れてかつ飛行機に間に合う絶妙な便である。きっと彼が最も早起きだった言雄だろう。グループラインには2号車に乗ったとメッセージがあったので、我々もそこに乗った。これで7人だ。青に関してはこの名鉄の駅近くに住んでいるので途中で合流できるのだが、問題はゲオだ。彼は決して近くはないので少し心配になったが、1本前の電車に乗ったと連絡がきた。電車を降りたところで待つらしい。つまり、全員が無事だということだ。
ヌートバーは席に座って眠っていた。始発で来たなら無理はない。そっとしてあげることにした。他の6人は金山から乗ると座る席がないので、吊革につかまりながら熱い議論を交わした。その議題は、「札幌ラーメンの具には何を入れるか」である。僕の意見としては、あの味噌にはバターとコーンだ。しかし直弼にとってはあり得ないことらしい。さすが九州人、舌の出来が本州民とは違うようである。何にせよ、既に北海道にいる気なのである。その他にも会話は続いた。雪はどれくらい降っているのか、他にどんな料理があるのか、ヒグマと戦いたい…などだ。僕は小学生の時に2度北海道に入ったことがあるがいずれも夏だ。とはいえその雪の量は想像できる。北陸出身のコメダならなおさらイメージできていることだろう。そんな過酷な大地を横断するのがこの旅行の目的である。楽しさと恐ろしさの2面性を備えた旅が、今始まろうとしている。
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