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空想小説/9

『見えぬ果て』


また飛ばされた。
ちょっと油断すると、すぐこれだ。
とりあえず、日本であることは間違いない。
大きい街だから、大通り沿いに歩いていけば駅に着くだろう。
「よう。飛ばされたのか」
頭上から声がした。
ずいぶん前に失踪した叔父が空中に浮いていた。
「みんな探してるのに。今まで何処にいたんだよ」
「これからお前が行くところさ。俺と入れ替わりでな」
「え?」

びゅうっ。

突風が吹いて、身体が空高くに舞い上がった。
さっきまで自分がいた場所で、叔父が笑っている。
「久しぶりに地上に降りたから身体が重いよ」
「俺は、―どうなるんだ、この先」
「浮き続けるのさ。それだけだ。ただひたすら、な」
はは。ははははは。
叔父が大きな笑い声をあげながら、悠々と去って去って行った。
「…寒い」
冷気が肌を刺す。
俺はこれからここで。
代わりの誰かが来るまで浮かび続けるのか。

びゅうう。

風が笑う。

世界なんて、なくなればいい。

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