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買い物と料理について

こちらに来てから何気にずっと買い物と料理に苦労している。異国なので時間をかけて慣れていくしかないが、フィリピンでの自炊について感じた不便さや困ったことについて当事者目線で触れさせてもらいたい。

一か所でまとめて効率的に買い物できない

自宅から徒歩10分圏内にスーパーが3軒あるため基本的にはそこで買い物ができる。しかし都会なので物価が高い上に、高温多湿の気候や流通品質の低さからか基本的に鮮度が良くない。少しでも鮮度が良く手ごろな価格を求めてあちこちに奔走。野菜、肉、魚、パン、日本食材など目的の品物によって買い物拠点が複数に散らばってしまう。

我が家は車を所有しておらず、市場や日本食材店に行く際はGrab(配車アプリ)を使うため1日に複数店舗を掛け持ちするのが難しい。そこで月曜は日本食材店、火曜は市場、というように曜日ごとに計画を立てるのだが、在庫が不安定なのでせっかく来たのに目当ての品がなかったり、またあまりに鮮度が悪いと(特に肉)購入に至らず、その日予定していた献立の再考を余儀なくされることが多々ある。

BGCのスーパー

当然ながら気候が変われば食材も変わる

これまで慣れ親しんでいた食材が手に入らないため、今まで作ってきた料理ができない。もちろん日本食材店に行けば空輸された野菜も手に入るが大体3倍ほどの値段で売られており(例:まいたけ1パック400円、ゴボウ1パック800円)、自分の金銭感覚ではそう簡単には財布の紐は緩まない。

使える食材が減ると料理のレパートリーが一気に減り、毎回似たような献立になってしまいがちだ。フィリピン固有の食材もたまに試してはみるが腕前と心のキャパが不足しているため、レギュラーへの昇格には至らず、献立のバリエーションが改善されないままである。

料理にたどり着くまでに時間がかかる

野菜は虫、ごみが紛れていることがあるので慎重な検品と下準備が必要。虫が紛れている時はもれなく糞もくっついているので、一段と丁寧に野菜を洗わなくてはならない。また謎に野菜がラップでぐるぐる巻きにされており、開封作業が地味に手間取る。

ぎちぎちにラップでくるまれた野菜
キャベツは小ぶりの割に300円、ローカルきゅうりは2本で200円

肉、魚に関してはもっと面倒。肉はドリップが多いためキッチンペーパーでかなり丁寧にふき取らなくてはならない。最悪のパターンはパッケージから汁が漏れて作業台や冷蔵庫の中を汚してしまうことだ。この掃除が発生するとメンタルへのダメージが大きい。鶏も処理が生ぬるいので骨のカスや血合い、筋を取り除かなくてはならない。そもそも骨なしが欠品している日もあり、骨付を買ってしまったが最後、いまいち正解のわからない鶏の処理に四苦八苦する。

魚介は市場でさばいてもらえるが、仕事が雑なので家に帰ってもう一度鱗や残った内臓を取り除く。エビの殻剥きやイカのはらわた処理などはやってくれるのでそれは助かる。

このように下ごしらえの段階の予期せぬ事態や自分の手際の悪さに時間を取られ、夕食の時間に間に合わず予定していた1品が作れなくなることもしばしば。

スーパーの魚 地元魚でも割と高い
陳列された肉は長時間空気にさらされて色が悪くなっていることが多く
鮮度がマシな肉を求めて店を何軒かはしごすることも多々あり

日本の食のインフラのすごさに感謝

思い通りに料理が進まないときにいつも考えるのは、日本の食品流通業界のレベルの高さだ。食材はいつも新鮮で品ぞろえも盤石、肉一つとってみても細切れにしてくれていてそのまま調理が開始できる。プラパックも品質をキープする工夫がなされているし開封しやすい。

農家の作る高品質の素材はもちろん、流通や食品企業のおかげで、大したスキルもない私のような者でも楽に時短でそれなりにおいしい料理が作れるようにさせてもらっていたのだという事実が身に染みる。フィリピンに来てからはこんなことを考えながら日本に想いを馳せる毎日である。

癒しの救世主たち

ところでフィリピンでの自炊ライフを支えてくれている癒しポイントがいくつかある。そのうちの一つが韓国食材店だ。実は韓国人が多いフィリピンでは日本食材店よりも店舗数も商品も充実している。若干高いがフィリピン食材よりはなじみのあるものが手に入り、少しでも日本に近づいたような感じがしてとても癒される。

左:ウインナー 日本のようなパリッと感があり、サイズも小ぶりで使いやすい
右:白キムチ 暑くて疲れやすいので乳酸菌補給に

あとは週末のファーマーズマーケット。新鮮で外国人受けのよい品ぞろえで値段もお手頃。マカティ市内のサタデーマーケットの他、家の近所に来てくれる小さなファーマーズマーケットもあり、こちらはフィリピンの軽井沢・バギオからの産直だ。種類は少ないが道の駅が大好きな自分にとってはまさに救世主。週末マーケットで買った食材だといつになく料理もはかどる。

サルセドサタデーマーケット 新鮮で野菜も日持ちするのがよい

環境に合わせて習慣を変える

とにかく日本での感覚や習慣をなるべく捨て、こちらの環境を受け入れてなじんでいくしかない。

買い物に関しては、滞在半年を過ぎた今も固定の場所が定まらず、いまだにいろんな店を調査しに行っては、どこであれば立地(遠すぎないか)、価格、品質のバランスが保てるかを試行錯誤している。

料理に関しては下準備に時間がかかることを身をもって知ったので、食事の前にゼロから料理する習慣を変えて、買い物の直後に下処理や小分け冷凍、味付けをするようになった。また、気軽に手に入らないものはこれまで料理したことがないものでも手作りするようにもなった。文句を言いながらも少しずつこちらの環境に合わせていくことも肝要なのだ。

いい歳をした大人が今まで染みついたルーティンを解体して新しい習慣を身に着けるのは中々大変なのだが、むしろありがたいことだと捉えこの不便さが自分に良い変化を与えてくれているのだと思いたい。


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