自然対数の底eについて語らせて⑤eの存在

$$
e=\lim_{n \to \infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n
$$

自然対数の底$${e}$$の存在は高校の範囲では保証してやることができません。しかし、$${e}$$を含む微分や積分の計算はたくさんさせられます。どういうものかよくわからず触ってきたのです。
このもやもやを解消するには極限の定義から立ち戻って考える必要があります。そこでまず厳密な定義について考えました。

そのうえで前回、数列が収束するための条件のひとつを紹介しました。

今回はその条件を数列$${\{\left(1+\frac{1}{n}\right)^n\}}$$が満たしているのかを確認して$${e}$$の存在をきっちり証明してやりましょう。

1.単調増加列?

二項展開を思い出す

まず、$${\left(1+\frac{1}{n}\right)^n}$$を二項展開します。
高校で習った二項展開を思い出してみましょう。
$${\left(1+x\right)^n}$$を展開してみましょう。$${x}$$の次数に注目します。

$$
\left(1+x\right)^n=\left(1+x\right)\left(1+x\right)\cdots \left(1+x\right)
$$

$${k}$$を整数として、$${x^k}$$の係数は$${n}$$個の$${\left(1+x\right)}$$のかっこから$${x}$$の方を$${k}$$個を選ぶえらびかたと等しいです。これは$${{}_n C _k}$$とおりです。
ただし、$${{}_n C _k =\frac{n!}{k!(n-k)!}}$$ です。
ゆえに、

$$
\left(1+x\right)^n=\sum_{k=0} ^n {}_n C _k x^k
$$

したがって、$${x=\frac{1}{n}}$$として、

$$
\left(1+\frac{1}{n}\right)^n=\sum_{k=0} ^n {}_n C _k \left( \frac{1}{n} \right)^k
$$

次の項と比較する

ではさっそく単調に増加することを示しましょう。

$$
\begin{align*}
a_n &=\left( 1+\frac{1}{n} \right)^n \\
&=\sum_{k=0} ^n {}_n C_k \left(\frac{1}{n}\right)^k \\
&=\sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{1}{n^k} \\
&=\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}\frac{n(n-1)\cdots(n-(k-1))}{n^k} \\
&=\sum_{k=0}^n \frac{1}{k!}\left(1-\frac{0}{n}\right)\left( 1-\frac{1}{n}\right)\cdots \left( 1-\frac{k-1}{n}\right)  \\
&=1+\sum_{k=1}^n \frac{1}{k!}\left(1-\frac{0}{n}\right)\left( 1-\frac{1}{n}\right)\cdots \left( 1-\frac{k-1}{n}\right)
\end{align*}
$$

ここで、任意の$${1 \le k \le n}$$に対して次のことが成り立ちます。

$$
\left(1-\frac{0}{n}\right)\left( 1-\frac{1}{n}\right)\cdots \left( 1-\frac{k-1}{n}\right)\le \\  \left(1-\frac{0}{n+1}\right)\left( 1-\frac{1}{n+1}\right)\cdots \left( 1-\frac{k-1}{n+1}\right)
$$

したがって、$${a_n \le a_{n+1}}$$が成り立ちます(単調増加である)。


2.上に有界か?

さて、$${A=\{ a_1,a_2, \cdots a_n, \cdots \}}$$は上に有界であることを確認しましょう。まず、$${1 \le k \le n}$$に対して、

$$
\begin{align*}
(k+1)! &=(k+1)k(k-1)\cdots 2\cdot 1 \\
&\ge \underbrace{2\cdot 2\cdot 2 \cdots 2 }_{k} \cdot 1 \\
&=2^k
\end{align*}
$$

このこととさっきの二項展開に注意すると、

$$
\begin{align*}
a_n &\le 1+\sum_{k=1}^n \frac{1}{k!} \\
&=2+\sum_{k=1}^{n-1} \frac{1}{(k+1)!} \\
&\le 2 + \sum_{k=1}^{n-1} \frac{1}{2^k} \\
&=2+\frac{\frac{1}{2}\left(1-\left(\frac{1}{2} \right)^{n-1}\right)}{1-\frac{1}{2}} \\
&=3-\frac{1}{2^{n-1}} <3
\end{align*}
$$

したがって、有界であることが確認できました。
以上より、$${e}$$はきちんと存在することを確認することができました。


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