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昭和の8mmフィルムと、大学生の私【後編】

インタビュー当日!

前回の記事でご紹介した通り、私は現在「地域映画」の制作をお手伝いするため、8mmフィルムを持ち込んでくださった方にインタビューをするための準備をしています!

今回の記事では、私が担当したインタビュー当日の様子や、そのとき感じたことを綴っていきたいと思います。

三好監督の「地域映画」の大きな特徴は、インタビューでの提供者さんたちのリアクションや言葉が、そのまま映画の一部になるということ。
重要な役割に少し緊張しつつも、懐かしい映像と何十年ぶりに再会する提供者さんの、言葉や表情ひとつひとつにこワクワクしながらインタビューをさせて頂きました。

お祭りに賑わうまちと、つつじの咲くお庭と

私が担当させていただいた提供者の方は、当日奥様とご一緒にインタビューに来てくださいました。

インタビューといっても、私たちが行うのは堅苦しいものではありません。「まつもとフィルムコモンズ」のメンバーと提供者の方、そしてそのご家族や周囲の人が、みんなで一緒に映像を眺めながらおしゃべりするのが、私たちの「インタビュー」なのです。

和やかな雰囲気のなか、まずは、現在も行われている松本市内のお祭りである「松本ぼんぼん」の、昭和50年(第一回!)の様子を映したフィルムをみんなで一緒に眺めます。賑やかな商店街の様子が伝わる素敵なフィルムに、「ああ、ぼんぼんや」「これ誰ずら」とぽつぽつ会話が始まります。

松本出身ではない私にとっては、普段聞く機会のない方言が新鮮で、そのあたたかい響きになんだか心が温まります。

六九通りの様子。今はないアーケードが印象的です。

つぎに見た家族のフィルムでは、奥さんが映っているシーンも登場し、「私、映ってるじゃーん」とご夫婦の笑顔がこぼれます。

よちよち歩きのお子さんが転んでしまい、手の砂を払ってもらいながらわんわん泣いているシーン(私のお気に入りシーン)では、私も思わず奥さんと一緒に「ああ~」と声が出てしまいます。

農作業のすべてを映した、貴重なフィルム

提供してくださったフィルムのなかには、農作業の様子がとにかくたくさん収められていました。
苗代づくりから田植え、稲刈り、脱穀などたくさんの映像は、民俗資料としてもたいへん貴重なものです。

脱穀のようす。束にしては縛ってを繰り返すそう。

大きな田んぼでの農作業を行っている映像には、大人だけでなく、お子さんたちもたくさん登場しています。
小さな手で鎌を握り一生懸命稲を刈ったり、大人たちと一緒になって収穫した大豆をたたいたりするお子さんの様子もフィルムに収められており、畑や田んぼの様子はとても賑やかです。

(当時の農作業について提供者さんは「(田んぼに)猫までついてったよー」とおっしゃっていました。)

一生懸命に稲を刈る後ろ姿にキュンとします。

田んぼにいらっしゃるたくさんの人がそれぞれどなたなのか尋ねてみると、その多くは親戚やご近所さんだそうです。
「昔はみんな隣近所で、行っては来て、手伝ってもらって、また手伝ったりした」とのこと。お互いに助け合いながら農作業を行っていた、当時のようすを伺うことができました。

映像のなかでは、ほとんどの作業が機械を使わず手で行われていました。一見かなりの重労働に見えますが、作業中にカメラを見つけて笑顔を見せるみなさんの表情は、なんだかとてもいきいきしていて楽しそうです。

ネギに蛍を入れると・・・?

田んぼに流れる水を映したシーンを見て、いつの間にか蛍の話が始まります。
昔は水辺にたくさんいたという蛍。当時は、ネギを持ってきてその空洞のなかに蛍を入れ、ライトのようにすることもできたそうです。また、川には沢蟹がたくさんいて、それを食べることもできたそう。

農作業のフィルムを見て、まさか蛍と沢蟹のお話が聞けるとは思いませんでした。こんなところにも会話が広がるのが、インタビューの面白いところです。

何年たっても、カメラ愛は継続中!

提供者の方は、当時から相当カメラがお好きで、どこへ行っても8mmフィルムのカメラを回していたそうです。

奥様から「仕事しないでそういうことばっかりしてる(笑)。今はね、写真がそうだよ。」という言葉がかかると、提供者さんがいそいそと胸ポケットから取り出して見せてくれたのは、なんと使い捨てのフィルムカメラ、「写ルンです」でした。
提供者さんのカメラへの愛は、どうやら今も健在のようです。

実は私もフィルムカメラでの撮影が好きで、普段から持ち歩いてたまに撮影しています。私はスマホのカメラとは違った写りを楽しむためにフィルムカメラを使っていますが、昔から8mmフィルムを触ってきた方にとって、「写ルンです」はまた違った存在に映るのでしょう。

使い方やその経緯は違えど、何十年も年の離れた人どうしが同じ道具でつながることができるというのは、フィルムの持つ不思議な魅力が現れているようで、なんだかとても素敵です。

私の使用しているフィルムカメラ(+女鳥羽川)。

インタビュー振り返り。「あっという間の」


フィルムに関するインタビューが一通り終わり、ご夫婦に感想を伺ったところ、お二人とも「昔を思い出したよ」と素敵な笑顔を見せてくださいました。

「あっという間のことだった気がする」。
提供者の方は、インタビューの終わりにそんな風におっしゃいました。これまでの人生をしみじみと振り返るような、そんな言葉でした。
私はこの言葉が、なんとなく忘れられずにいます。これまで提供者さんが重ねてきた、人生の長い長い時間の重みを感じるような気持ちになったせいかもしれません。

8mmフィルムで切り取ることのできる時間は本当に限られたもので、スマートフォンやビデオカメラのように最初から最後までをすべて録画するわけにはいきません。撮影した方に話を聞いてみなければ、何が映っているのかすら分からないこともしばしばあります。

でも、だからこそ、8mmフィルムの映像を見ると、人は口を開いてああだこうだと話し出すのでしょう。みんながついつい語りたくなる、昔話をしたくなる、そんな8mmフィルムの魅力をつくづく実感した、賑やかなインタビューでした。

インタビューの様子。会場は「松本 深呼吸」土蔵。

映画の完成へ向けて、撮影進行中!

今年の秋に予定している映画の完成へ向けて、まだまだインタビューは続いているほか、BGM収録なども進行中です。私自身も、とにかく完成が楽しみな毎日です。

まつもとフィルムコモンズのnoteでは、映画についての基本情報や、その他イベントなどの様子を綴っています。気になった方は、ぜひそちらも覗いてみてくださいね〜!




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