『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』 – 各話のストーリーと映像の緩急について(1話~4話)
※『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』についてネタバレありの記事です。ご注意ください。
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は綾奈ゆにこ氏による緊張感のあるストーリーが魅力的だが、映像表現の技術の高さと工夫も目を見張るものになっている。そして1クールのシリーズの中で、話数ごとにストーリーと映像表現ともに緩急と流れを作っているように思われる。
本記事ではそのような工夫を、1話から4話までについて概観したい。なお、表にも概要をまとめている。
1話「羽丘の不思議ちゃん」は冒頭、バンド・CRYCHICの解散という重苦しいシーンから始まる。その後は羽丘女子学園に転入してきた千早愛音の目線で、高松燈が内向的で不思議な子という形で客観的に描写される。
2話「もう誘わない」では、バンドメンバーを探す愛音が長崎そよに出会い、ライブハウス「RiNG」で会話する。その中で愛音は、燈たちが以前バンドを組んでいたことを知る。
2話の映像表現としては、そよが燈について「お友達なの」と言うカットが異様な感覚だった。そよの表情も、背景の観葉植物も、淡い陰影も、いずれも柔らかい雰囲気のカットだ。しかしそよの顔には陰がかかっていて、どこか恐ろしさが滲む。
またこのカットを含む「RiNG」のシーンでは、燈を除くMyGO!!!!!のメンバー4人が居合わせる。バンドメンバーを求める愛音、燈のことを聞き出そうとするそよ、店員なのに攻撃的に接してくる立希、ギター演奏で話を遮ってくる楽奈、そして楽奈を手伝う山吹沙綾と、複数の人物の思惑と行動が絡み合う巧妙なシーンとなっている。
そよからバンド参加の了解を取りつけた愛音は、気分をよくしてスキップで登校する。そんな愛音を弾むように追って映すカメラの動きも、陽気さを引き立てる。しかし愛音はそよにCRYCHICの頃の動画を見せられ、さらに燈が観覧するプラネタリウムの映像が入ることで、どんどん内向的に没入するような感覚になっていく。一度陽気にさせてから、次回3話の没入へと導入していくような映像の作りになっている。
3話「CRYCHIC」は、CRYCHICの結成と解散の顛末を、全編を高松燈のPOV(一人称視点)で映すという際立った映像になっている。
単にこの話数の映像が挑戦的というだけでなく、その前の1話と2話を愛音という外交的な人物を中心に描き、燈を外側からちょっと不思議な子くらいの感覚で描いてきたからこそ、3話での内面描写が引き立つのだろう。
4話「一生だよ!?」では、再び愛音が活躍して客観的な映し方になる。愛音が燈・そよ・立希を呼び出し話し合わせ、バンド再結成が決まる。
3話の没入的な映し方から一般的な描写に戻りつつも、燈が落としたノートを愛音が拾うために、燈の後ろに回り込むといった、燈の心情を愛音が理解していることを示すような動線描写がある。しっかり3話で描かれたものを引き継いでいるのだ。
このように本作では、ストーリーだけでなく映像でも流れと緩急が作られている。そのような映像の工夫によって、視聴者は没入したり笑わされたりと翻弄されるのだ。