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ペアルック
待ち合わせ場所は、定番の某駅前。
かわらず待ち人は多くて、彼を見つけるのに一苦労することもしばしばだ。
漫画でよくある”見つけてしまう“現象は、私たちからはなくなってしまったし、彼はよく柱の裏で待っていたりするので、とても見つけにくい。
なのに、今日は一目で”見つけて“しまった。
柱の横に、鮮やかなオレンジ。
改札を抜けて、彼の元へ走り寄る。
「なんでソレ、着てきたの?」
「いや、なんとなくだけど」
向かい合う鮮やかなオレンジは、とても目を引いた。私たちは意図せず、道行く人に“見つけられて“しまう。
なんで月1のデートで被ってしまったのか。
お互い同じショップの服が好きで、ユニセックスのお店だから、こんなこともまあ、ないこともないだろう。なんて、話してたこともあったかもしれない。でも、彼はモノトーンが好きで、私は季節に合わせて色を選ぶ。だから、夏はビタミンカラーを着るのが私の趣味なのに。
まさかこんな被り方をするなんて。
なんだか落ち着かない。
てかなんで、あんたがその色の服を持ってるんだ!
「服、買いにいこう!」
駅の中にある服屋に立ち寄って、それぞれレディース、メンズの売り場に別れて服を漁る。
少しして、レジの前で鉢会わせた。
彼の手元を見て、私は項垂れた。
結局レジに持ちあったのは、落ち着いた黄色い服と落ち着いた黄色い服。
サイズは違うし、きっとデザインにも違いはあるだろう。けれど一目見た感じでは、ペアルックに思えてしまう。
彼は私の手から服を取ると、レジへ向かった。私はおとなしく、その後ろについていった。
レジのお姉さんが私たちを見て、柔らかく微笑む。
「仲、良いですね」
2人して愛想笑いを浮かべた。