安田美沙子が好きだった頃の話
中学生くらいの頃、安田美沙子が好きだった。
おそらく「グラビアアイドル」というカテゴリの人達がバラエティ番組の女子枠として重宝されていた時代だったと思う。
グラビアアイドルが好きなんて恥ずかしいにもほどがある年頃だったので、色々と甘しょっぱい感じの思い出が多い。
当時の安田美沙子は深夜番組中心に色々出演していて、その時間まで起きていることはできない少年期の自分は録画をして後日見る必要があった。まだVHSの時代、家族共用のビデオテープに堂々と録画することはできないのでテープの後半までわざと進めて、そこから録画を開始していた。
『月光音楽団』はレギュラー番組だったので毎週録画。『堂本光一の正直しんどい』にもよく出ていた記憶がある。そのほか、単発のゲスト出演番組を、たしか、「安田美沙子ファンサイト」的なものから情報を得て全て録画していた。時代感がすごい。
中学二年生の修学旅行。行き先は京都だった。京都といえば安田美沙子の出身地である。
彼女のエピソードトークにもよく出てくる「聖地」があり、行動班の話し合いでしれっとその場所を提案していた。でも実際行けたのか記憶は曖昧である。
そもそもなぜ安田美沙子のファンをやっていたかというと、完全に顔だったと思う。
現役バリバリ、アイフルのCMの安田美沙子。今でも好きな顔。ガキンチョ当時から顔の好みは変わっていない。家族でテレビを見ているときに「どうする?アイフル〜」のCMが流れるだけで自分だけの密かな楽しみという感じがしてドキドキしていたのを思い出す。
当時は謎の行動力があった。写真集やDVD(ビデオ?)が発売されるたびにイベントが行われたのだが、それ自体を購入することができない自分は、イベント後の出待ちにだけ参加していた時期がある。自転車で1時間以上かけで秋葉原のイベント会場の書店まで行き、その周りを延々周り、出待ちの雰囲気を掴むとそこに参加していた。何かがバレるのを恐れて帽子を目深に被っていた気がする。そこまでして、一瞬だけ拝める「生安田美沙子」それはそれは感動でしかなかった。
安田美沙子熱が冷め始めたのはおそらく城田優との熱愛報道があったあたりからだと思う。その後推しはしょこたんやら坂道アイドルやらに移っていった。
この時期の自分の異常なほどの熱量は間違いなく生きる理由そのものになっていた。いつしか、芸能人やアイドルをここまで本気で追いかけることはできなくなってしまったが、あの頃抱えていた感情そのものに懐かしさと、宝物を失ってしまったような少しだけ切なさを感じる。