『死者の力 津波被災地「霊的体験」の死生学』高橋原、堀江宗正(2021)岩波書店
被災地住民と宗教者への聞き取りに基づいた、調査研究をまとめている。
宗教者が真摯に住民に寄り添う姿が読み取れる。
<引用>
・「悲しみや苦しみを一皮ずつ剥いていく」のが宗教者の役割であり、葬式
の機能なのではないか。
・霊にまつわる相談に対する宮城県の宗教者たちの対応
→宗教者の多くが「心霊現象」に対して合理的、あるいは心理学的に理解
しているにもかかわらず、「幽霊を見た」「霊に取り憑かれている」と
いった相談者の主張を頭ごなしに否定せず、受容するというのが基本姿
勢である。
・宗教者たちの傾聴活動は、生きている被災者への傾聴だけではなく、縁あ
る死者への傾聴でもある。
<つぶやき>
調査に協力された宗教者の方々は、「霊は存在しない」という解釈をもちながらも、それを訴える相談者を丸ごと受け止める。そしてそこから、ただひたすらに話を聞く。筆者も指摘しているように、医療者(心理職を含む)では決して提供できない、「答えを出さない(何らかの診断や処方等を出さない)支援」は、宗教者の唯一無二の役割なのだと思う。
死者の存在によって生かされている、そのように感じる遺されたひとも多くいるであろう。そのことをそのままで良しとする、
そんな空気感?土壌?雰囲気?空間?…それが本当に大切なのだと思った。