13才、真夏の大冒険!「Dìdi」第97回アカデミー賞期待の作品紹介Vol. 13
AWARDS PROFILE Vol. 13
Dìdi
各映画サイト評価
Rotten Tomatoes: 96%
Metacritic: 78
IMDb: 7.4
Letterboxd: 4.1
あらすじ
2008年の夏、高校入学を目前に控えた台湾系アメリカ人のクリスはかけがえのない夏休みを過ごす。友だちとスケートボードで街を走り回り、カメラでおもしろ動画を撮ったり、甘酸っぱい初恋をしたり、こんがらがったお母さんとの関係を解こうとする…。
監督・キャスト・注目ポイント
青春映画、それは作り手の自伝的な要素が濃くなるジャンルだ。グレタ・ガーウィグの「レディバード」やジョナ・ヒルの「mid90s」がそうであったように今作も例外ではない。ショーン・ワン監督は昨年、自身の祖母の日常を追った「ふたりのおばあちゃん」という短編ドキュメンタリーを監督し、オスカー候補にあがった期待の才能だ。今作「Dìdi」で長編映画デビューとなる。初監督の彼を支える製作陣には傑作「ブラインドスポッティング」を手がけたカルロス・ロペス・エストラダや、みんな大好き「ホーム・アローン」「ミセス・ダウト」でお馴染みクリス・コロンバスが名を連ねている。
主人公クリスを演じるのはディズニー映画「ラーヤと龍の王国」でメインキャラのブーンの声を担当したアイザック・ウォン。リアルに青春真っ只中の17歳の彼がどんな瑞々しい演技を披露するか楽しみ。思春期のクリス少年とぎくしゃくした関係にある母親チャンシンを演じるのはジョアン・チェン。中国は上海出身で監督としても活躍している大ベテランの彼女が力強く作品を支えている。舞台となったベイ・エリアで発掘した10代のキャストたちが物語とキャラクターにリアリティを与えている。
評価
インディーズの名門サンダンス映画祭で公開されて、ドラマ部門の観客賞に選ばれた。過去には「コーダ」や「セッション」が選ばれている賞だけに、観客の心を鷲づかみにすること間違いなしだ。これまでドキュメンタリーを製作してきたワン監督の単純なノスタルジーを排した少年時代の物語は、思春期特有の混乱や不安、恥ずかしさから目を逸らすことなく、誰もが通過したあの厄介な時期をユーモアたっぷりにビビットに描いている。
母、祖母、姉と暮らすクリスが窮屈な家を飛び出し、悪友たちとカリフォルニアのベイエリアを駆け回る。成長の物語ではあるが、良いことばかりではない絶妙なバランス。監督は七転び八起きする主人公を自分自身に重ねて温かく見守る。
主人公クリスを演じたアイザック・ウォンは心のコントロールが効かない思春期らしい繊細なキャラクターを感受性豊かな表現で包み込む。状況が手に負えなくなったクリス少年の姿に胸を掻きむしられる。クリスとぎこちない関係にある母チャンシンを演じたジョアン・チェンはその佇まいだけで味わい深い。この母親の存在が主人公と共に落ち着きなく動き回る作品の心の錨となる。
トラブルばかりの夏休みを追いかけながら、2008年というSNS(MySpace)が流行り出したあの頃の空気感をキャッチする。無邪気なインターネット前夜の青春を描きつつ、監督のパーソナルな物語は普遍的な成長のアーチを架ける。不安を抱えた13才の自分に大丈夫だよ、とハグをしているかのような温かさに満ちている。
長後の都知事の人生も七転び八起き。永遠に前夜です。