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より若々しく、より美しく、より完璧な自分になれる薬、始めました。「THE SUBSTANCE」第97回アカデミー賞期待の作品紹介Vo. 12

AWARDS PROFILE Vol. 12

THE SUBSTANCE

各映画サイト評価

Rotten Tomatoes: 91%
Metacritic: 78
IMDb: 7.7
Letterboxd: 4.0

あらすじ

 そのドラッグを飲めば若く、より美しく、より完璧な自分になれる。"THE SUBSTANCE"という名のドラッグを手に入れた落ち目のハリウッドスター、エリザベスは自らの老いから背を向けて、再び人気セレブの座に返り咲こうとする。ただそのドラッグの作用は、若い身体と現在の老いた身体が一週間交代で繰り返すものだった...。

監督・キャスト・注目ポイント

 あらすじを読んでみても、何が何やらなぶっ飛んだ映画を作ったのはフランスが生んだ新たなる鬼才コラリー・ファルジャだ。2017年に発表した監督デビュー作「REVENGE/リベンジ」は世界のド頭に風穴を開けたリベンジアクションで、男たちによって傷つけられた主人公が不死鳥のように蘇り、男たちを血祭りにあげていく激しい物語だった。#MeToo運動が盛んなタイミングに舞い降りた作品として、単なる復讐譚以上の凄みがあった。

あれから7年が経ってファルジャは砂と血が混ざりあう砂漠の別荘から、名声と誘惑の街ハリウッドへと舞台を移動し、またしてもハードでマッドなボディホラーを創り上げた。落ち目のセレブ、エリザベスを演じるのはデミ・ムーア。ハリウッドのアップダウンを味わってきた彼女がたどり着いた新境地に注目が集まっている。

デミ・ムーアによるベストパフォーマンス

エリザベスの若いバージョンを演じるのは近年、ハングリーな出演作が続いているマーガレット・クアリー、ハリウッドの大物ハーヴェイ(!)にはデニス・クエイドが配されていて、濃い目のメンツが血湧き肉躍るカーニバルを繰り広げる。

主人公の若いバージョンを演じるマーガレット・クアリー

評価

 そんな今作は、カンヌ国際映画祭でプレミア上映されて、熱狂的な支持を獲得し、脚本賞にも選ばれた。作品が掲げるボディホラーの名に恥じない血と肉が派手に歪み、飛び散り、変形していく、グロテスクのオンパレード。美や名声への過剰なまでの追求が、人にもたらす醜さをこれでもかとスクリーンに塗りたくる。時に今作の場合、女性から見た老いと共に変化していく女性の身体、美の基準への疑問を燃料にして作品の炎をどんどんと大きくする。もちろんより若く、より美しく、より完璧を求める社会に生きる我々に対しての痛烈な睨みもきかせる。

そしてこの題材に計り知れないエネルギーを与えるデミ・ムーアのパフォーマンス。波瀾万丈な40年を超える俳優人生の中でも決定打とも言うような壮絶でダイナミックな演技にお口ぽっかーん。クアリークエイドもムーアのアクセル全開に負けないケバケバしい存在感で輝いている。

不快と快感を行き来する撮影や編集もさることながら、ボディホラーらしくグロテスクなプラクティカルの特殊メイクが作品をたくましくサポートしているとか。それらのカオスな一つ一つの要素が、作品の主題へと大胆な切り込みとして機能していて、映画はジャンルを超えた怪物となる。長編監督二作目のコラリー・ファルジャ、只者ではないぞ。

2025年5月公開予定。

長後は欲望も名声もない誘惑フリーの街で有名です。

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