演劇を通じた囚人たちの再起のドラマ「SING SING」第97回アカデミー賞期待の作品紹介Vo. 10
AWARDS PROFILE Vol. 10
SING SING
各映画サイト評価
Rotten Tomatoes: 98%
Metacritic: 84
IMDb: 8.0
Letterboxd: 4.3
あらすじ
ディヴァイン・Gは、最高度の警備で知られるシンシン刑務所に服役している。無実の罪で収監された彼は、刑務所内の演劇プログラムに参加することで、生きる目的を見つけ出す…。
監督・キャスト・注目ポイント
2016年の監督作「ザ・ボーダーライン 合衆国国境警備隊」や、脚本を担当した「ジョッキー」が手堅い評価を得たグレッグ・クウェダー監督は、頻繁にコラボレーションするクリント・ベントリーと共に、インディーズ界隈でその存在感を大きくしてきた。今作でもクウェダーは、ベントリーと共同で脚本を執筆。極限の状況下にいる人間の強力なドラマを紡ぐのに長けた二人が今回描くのは、ニューヨーク州にあるシンシン刑務所のプログラムとして実際に存在する演技プログラム=RTA(Rehabilitation Through the Arts)プログラムに参加する受刑者たちのドラマだ。
主演を務めるのは実力派のコールマン・ドミンゴだ。昨年オスカー候補になったばかりの彼は、実際にシンシン刑務所の演技プログラムに参加していたクラレンス・マクリンやジョン=エイドリアン・ヴェラスケス等と共演する。また「サウンド・オブ・メタル」で素晴らしい演技を披露し、ほぼ無名からオスカー候補に挙がったポール・レイシーも出演し、作品を力強く支えている。ドミンゴの長年の友人でもあるショーン・サン・ホゼも出演し、冷たい刑務所に温かな風を吹かせる。ドキュメンタリーのようなリアリティに差し込む暖かな光が印象的な本作は、16mmフィルムで撮影されている。昨年のトロント国際映画祭で上映されて高い評価を獲得し、北米では今夏に公開されて大評判を呼んだ。
評価
高い塀に囲まれた刑務所を舞台に人間の持つ可能性を信じた力強い物語が観る者の胸を熱くさせる。希望や芸術が与える癒しの重要性を深いコクをもって伝えることに成功しているそうだ。実際に、シンシン刑務所でプログラムに参加したマクリンやヴェラスケス等のキャスト陣のパーソナルな経験がストーリーやキャラクターたちに注ぎ込まれていて大変に見ごたえがあるそうだ。そして彼らと共に歩みを揃える主演コールマン・ドミンゴの力強い存在感。囚われた心身を解放し、生きる喜びを掴む姿が胸を打つ。また彼が仲間たちと劇を仕上げていく様にかけがえのない兄弟愛が溢れ出す。
ここで何度でも強調したいのがクラレンス・マクリンの存在だ。彼が演じたのは彼本人なのだ。劇中、トラブルメイカーで何年も収監されていた彼がプログラムを通じて、再起する。それは、マクリン本人がかつて歩んだ道なのだ。今作のために暗い記憶のある刑務所に戻って演技するマクリンの覚悟が伺える。犯した罪で人間を判断することは容易いこと。過去に間違いを犯した人間の成長や変化を受け入れることが出来るかを観る者に問ううえでも彼の存在は重要だ。
どんなに苦しい状況でも、劇の中だけは身体も魂も解放できる。芸術の持つ不思議な力が人間を立ち直らせる。そして環境、年齢関係なく、誰しもが身の回りにポジティブな影響を与える力があることをはち切れんばかりのハートと空高く駆ける精神をもって本作は教えてくれる。
長後の都知事も芸術で長後を立ち直らせたいものです。
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