もうひとつのミッション
足関節脱臼骨折から63日目
階段から落下し、右足の関節脱臼骨折をしてから2ヶ月が経った。
先日、理学療法士さんからからの課題だった「買い物に行く」というミッションは達成できた。
もう1つ、私自身がやってみたいことがあった。それは、「路線バスと電車に乗って移動する」こと。まだ1人では勇気が出ずに、挑戦できていなかったのだ。
今日は夕方に用事がある。いつもなら車で向かう所なのだが、まだ運転は自粛中の身。
娘に相談すると、いい機会だから、一緒にバスと電車を使って行ってみようと言ってくれた。
外は、あいにくの空模様で、雨が降ったり止んだりしている。しかもすごい蒸し暑い。私は湿度にめっぽう弱い体質で、こんな日は気が滅入る。
身支度をして、いざ出陣。
玄関を開けると、ものすごい湿気と暑さが体にまとわりついて、汗が吹き出す。
雨は小降り。娘が差してくれた傘に入れてもらいながら、バス停まで歩いていく。
バスの乗降口は、高さが結構ある。ケガをする前は、階段の高さなんて気になっていなかった。
ノンステップバスもかなり普及してはいるが、バスの乗り降りの際に、転倒してケガをする方は少なくないと、理学療法士さんから聞いていた。
入院中の同室の方でも、バスに乗車する時に躓き、手をついたことで腕の2か所を骨折してしまったおばあちゃんがいた。
特に雨の日は滑るので、気をつけないとならない。
バスがやってた!ドキドキ。
目の前に停車し、前のドアが開いた。
どちらの足からバスに乗り込もうか考える。健側の左足から上がって、ICカードをかざす。
バスの中は空いていたので、すぐに椅子に座ることができた。とりあえずここまでで一安心。
そして最寄り駅前に到着。
手すりに捕まりながら患側の右足から降りる。ふぅ、なんとかなった。
階段は遠慮して、エレベーターで改札口まで上がる。
ホームまでは下りエスカレーターがあるので問題はなし。
次は電車への乗り込みだ。
どちらの足から乗ろうか・・・
大きく一歩が出せるように、患側の右足を前に出すことにしよう。
その時、ふと高校生の時の記憶が蘇る。通学の時、電車に乗り込む際に、前にいたはずの友達が、一瞬にして消えたのだ。
そう、友達は電車とホームの間に下半身が落ちていた。かろうじて上半身は地上に残っていたので、引き上げる事ができた。
そんな40年近くも前の記憶が蘇ったせいで、急にドキドキし始める。
電車がホームに入ってきた!
車内は座れそうにないが、混雑はしていない様子。乗り込む時にドア横にある手すりを掴んで、右足を大きく出して乗り込んだ。
オッケー。車内に入れたぞ。
席は空いていなかったので、ドアの所にもたれて手すりを掴んだ。
電車に揺られること20分。
途中1度乗り換えて、目的の駅に到着した。
降りてから分かったのだが、この駅にはエスカレーターはあるが、上りしかなかった。
エレベーターはもちろんあるのだが、ここから少し遠い位置だったので、頑張って階段を下りる決意をする。
人の流れが収まってから、左手で手すりを掴みながら下り始める。
まだ右足の強張りがあり、充分に足首が曲がらないために、階段の下りは1段ずつ下りて行きたかった。
しかし、後ろから人が下りてくるのを感じると、もたもたしていられない・・・と焦る気持ちが芽生える。
結局、普通に階段を下りるように、左足を1段下に着地させるまで、右足を上段に残すことができないため、ぴょこぴょこと右足を弾ませながら下りることになってしまった。
長い階段を下りた時には、気疲れもありヘトヘトになっていた。無理をせず、エレベーターを使えばよかったなと後悔。
その後、用事を済ませた私達は、夕飯を食べて帰ろうということに。
前から気になっていた、老舗のお蕎麦屋さんに入ることができた。ビールで乾杯して、今日の反省会。
そして、楽しみだったお蕎麦!
細麺の蕎麦は、今まで見たことがないくらい艶々で透明感があり、コシが強くて美味しすぎた。顔がニヤけるほど。
今日は、バスと電車に乗る練習ができて、本当によかったな。でもまだ、1人で出かけるのは怖い気持ち。
もう少し足首が柔らかくなったら1人でも出かけられるかな。
食事後には、さすがに足が浮腫んで、痛みも出始めて、身体も疲れ切っていた。
帰りの電車は、運良く座ることができた。
今度のリハビリで、理学療法士さんに報告することが増えて嬉しいかぎり。
これからも、ちょいちょい外出の機会を作っていきたいな。