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恐怖の階段
入院10日目
リハビリは今日で6回目。
だいぶ松葉杖にも慣れてきた。
最初の頃よくあった、歩行時の不安定さは軽減してきた。でも、未だに歩き始めがグラつく事が多いので毎回ドキドキする。
本日のリハビリメニューは、ストレッチ、筋トレ、そして大本命の階段昇降である。
リハビリ室の一角に、練習用の階段が設置されている。一段の高さ、いわゆる蹴上が低い6段と、蹴上が高い4段、2種類の階段だ。
一般的な家庭にある階段を想定して、作られているようだ。
まずは、平行棒の中で高さのある箱を置き、階段を想定して足の運び方を確認する。慌てず両手で体重を支え、ゆっくり健側の足を着地させる。
平行棒の中でのイメージトレーニングでは「なんかいけそうじゃん」と思っていたのもつかの間、現実は厳しいものだった。
低い方の階段に移動する。
先に、理学療法士さんが松葉杖と足の運び方のお手本を見せてくれる。なんとも軽々と、昇って降りてくるではないか。
次は私の番。階段を目の前にすると、階段の幅の狭さと、着地する踏み面の奥行きが、そんなにないんだと気付かされる。
ケガする前までは、スタスタと昇り降りしていて、階段一段の高さとか、奥行きとか、特別に意識したことがなかった。
今はこの狭い面積の1段1段を、松葉杖で上り下りすることが曲芸のように思えて、途端に怖くなった。
「松葉杖で階段昇降ができないと退院が難しい」
この言葉が頭の中でリフレインする。
どうしよう・・・焦る。
よし!気合いを入れて階段を上り始める。ゆっくり、言われた通りに、松葉杖に全体重をかけて、健側の左足を階段1段目に着地させる。
ダメだ・・・
気持ちが負けているので、どうしても腰が引けて、身体が後傾になる。そうすると、バランスを崩してしまう。
更にもう一歩。
しっかり体重を松葉杖に預けて、少し前傾気味に身体を腕で支える。
おっ!
今度は松葉杖はグラつかず、ふわっとやさしく1段上の踏み面に、左足を着地させることができた。
感覚的には理解した。駄目な時と成功した時の違いは明らかだ。
残りの階段も、なんとかふらつかずに上り切ることができた。これは素直に嬉しかった。
次は下りだ。
身体の向きを変えて、階段を見下ろす。
こ、怖い。すごく怖い。
足がすくむとはまさにこのこと。階段にこんなにも恐怖を感じたことはない。それでも下りなければならない。
先ずは、松葉杖を1段下の踏み面へ下ろす。あとは上りと同じ様に、しっかり体重を松葉杖に乗せて、左足を下段へ下ろす・・・
だけど、それができない。どうしても、左足を床から離して下ろせない。どうしてこんなにも恐怖を感じてしまうのか。
理学療法士さんに、服の後ろを掴んでもらっていて、安全は確保できているのにだ。
それでもなんとか勇気を振り絞って、ヨチヨチで下りていく。下り終わった時には汗だくになっていた。
本日のリハビリは終了。
どうしてあんなにも、階段の下りが怖いのか・・・部屋に帰って考えてみた。やっぱりケガをした時のことが、脳裏にあるからなのかなと思う。
今だって、階段から落ちた瞬間を思い出すと、ゾクッとする。これってトラウマなのかしら?
今後の課題は階段下り。怖いけど慣れていくしかない。成功体験を重ねていくしかないような気がする。
がんばれ、私。