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⑲ 〈番外編〉 母と認知症と墓じまいのはなし
私がお墓の片付けもするの?
まだ私が大学生で実家住まいだった頃、母方の祖父母との同居が決まり、お仏壇もいっしょに引っ越してきた。
10年近く同居したころ祖父は他界し、その数年後に祖母も他界している。
母は4人姉弟で、弟が2人と妹が1人いる。通常ならば長男が墓を引き継ぐ場合が多いのだろう。
しかし、大人の事情で長男である母の弟はお墓を引き継がなかった。
次男は、お嫁さんがひとりっ子であることが関係して、お墓を引き継ぐのが難しかったようだ。こちらも大人の事情である。
結局、同居を決めた時から分かっていたことではあるが、自動的に長女である母がお墓の管理を引き継ぐこととなった。利用料や管理料の支払いを引き継いでいた。
2023年6月
月日が流れ、母が軽度のアルツハイマー型認知症と診断されてからしばらくして、そのお墓の管理について今後どうしていこうか・・・という話が持ち上がっていた。
母が他界した場合、この墓を誰が引き継ぐのか・・・という現実的な問題が出てくる。
母は私の姉にお墓を引き継いでもらおうと思っているようだった。しかし問題はお墓のある場所だった。
祖父がお墓を購入した当時、東京の下町に住まいがあった。お墓は公営墓地である都立霊園の一般埋蔵施設の一区画を購入し墓を建てた。
都立霊園は全部で8箇所ある。23区内に4霊園。区外に3霊園。
そしてなぜか都立霊園なのに、千葉県松戸市に「八柱霊園」がある。ここに祖父が建てたお墓が存在しているのだ。
現在の実家の位置からはかなり遠いことで、定期的にお参りに行くことができていなかった。
それを視覚障害のある姉が引き継いでも、お参りなど定期的に足を運ぶのは現実的ではない。そしてその後引継ぐ者は今のところいない。
となると、まだ母が動けるうちに八柱霊園にある墓を、改葬するのが良いのではないかという結論になった。
改葬とは、いわゆる墓じまいである。お墓のお引っ越しとも言う。
今あるお墓から御遺骨を取り出して、合葬墓へ移すのが理想的なのではないか。そうすれば引継ぐ人がいなくとも、ちゃんとご供養してもらえる。
でもこの時点で、どうやってこの作業を始めたらいいのか、どこに問い合わせたらいいのか、まったく分かっていなかった。
そして、この手続きを担うのは母は無理だろう。視覚障害のある姉が手続きに1人で出向いたり、動くのも難しい現状がある。
と言うことは・・・
私が動くのが1番現実的なのか?
いやいや、まだ相談できる人、叔母(母の妹)がいるではないか。
その後、叔母に電話をして相談をしてみた。すると、お墓を合葬墓に改葬することには賛成してもらえた。
叔父には、叔母から改葬の話をしてもらい、了承を得てもらうことにしてもらった。
そして電話の最後の最後、改葬の手続きは私にお願いしたいと言われてしまう。結局、墓じまいを担当することになってしまったのだった。
実家の片付けを懸命にしていたら、お墓の片付けまですることになってしまうとは。
溜め息をつきたくなったが、それもこれもご先祖様に、
「今がその時なのだ」
と言われている様な気がしてきて、やるしかない!と気持ちを切り替えた。
さてさて、何から手をつけようか。
どこに何を問い合わせたらいいのか、というところから調べるしかないな。
つづく。