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怠惰な理系の片付け備忘録

最近、わけあって大規模な片付けをしているので、その際に得た知見を備忘録として書き記しておきます。
 
片付けの際、近藤麻理恵 著「人生がときめく片付けの魔法」を部分的にですが、参考にしました。
 
本記事では、「使ったものを元に戻す」という日常的な片付けではなく、引っ越しやライフステージの変化などに伴って行われる、大規模な片付けについて記載していきます(近藤麻理恵 著「人生がときめく片付けの魔法」において、「祭り」と呼ばれている片付けのこと)。
 
また、タイトルに「怠惰な理系の」と付けてみましたが、理系的な記述はほぼありません。ほんの一部、システム開発や数学に喩えている箇所がありますが、理系の方でなくても、問題なく読むことができる記事だと思います。
 
以下、色々と偉そうなことを書きますが、私自身はとても怠惰で、決して片付けが得意なわけではありません。だからこそ、自分のための備忘録として本記事を書いています。


片付けはメンタルにくる

まず、大前提として、片付けはメンタルにきます。
 
なぜならば、大規模な片付けをしていると、否が応でも、自分の過去と向き合うことになるからです。
 
キラキラした楽しい思い出ばかりではなく、いわゆる黒歴史や、場合によっては、トラウマなどとむすびつくような物と遭遇してしまう可能性があります。特に、実家など、長年住んでいたり、久々に訪れたりする場所を片付けるときには、注意が必要です。
 
また、複数人で使用している共有スペースなどを片付ける場合、「これを捨てて良いか?」「この配置を変えて良いか?」など、話し合う必要も出てきます。置いておきたい物、部屋や収納のレイアウトについては、強いこだわりを持つ人も少なくないため、この話し合いで、口論に発展する可能性も高いです。
 
「黒歴史やトラウマはない」「一人暮らしで話し合いの必要はない」という人でも、大規模な片付けの際、「物を捨てる」という作業は、なかなか避けて通れません。つまり、「物の要・不要を決める」という、意志決定をあらゆる物に対して行うのです。行動としては、単純に「物をゴミ袋に入れたり、入れなかったりする」だけなのですが、頭や心をかなり使うため、疲弊します。
 
このように、片付けは、力仕事でありながらも、精神的にきつい作業だと、まずは認識しておくと良いと思います。

片付けをする前に意識しておくと良いこと

片付けはメンタルにくるため、片付けをする前に意識しておくと良いことがあります。
 
私自身は、なにも考えず、片付け始めてしまったため、かなり精神的に痛手を負いました。片付けをしながら、「まずはこれを意識しておけば良かった……」と思ったことを、以下に記載していきます。

その日のメンタルを認識する

「今日は天気も悪いし、寝不足だし、なんとなく元気がない」という日は、機械的な作業(食品の賞味期限・消費期限を確認して捨てていく、など)のみを行ったり、片付けを休お休みしたり、無理をしない工夫が必要です。
 
「あまり思い出したくない物」に向き合うのは、精神的に安定している日にした方が良いと思います。
 
また、複数人で使用している共有スペースなどを片付けていて、話し合いが必要なときも、精神的に安定していて、相手の気持ちに十分配慮ができる余裕のあるときにした方が無難です。

片付けない場所を決める

まだ向き合う時期ではない過去に、無理して向き合ってしまうと、精神に不調をきたすことがあります。そのため、「今回、この棚は片付けない」などと、事前に決めることは大切です。
 
しかし、引っ越しなどで「絶対にすべて片付けなければならない」ということもあります。その際には、「誰かに相談してから片付ける」「片付けを他の人に依頼する」など、なにかしらワンクッションを置く方法を考えるのも良いでしょう。

「片付け」の作業を具体化する

「片付け」という作業を、自分なりに具体化することから始めてみます。
 
私の場合は、以下のように考えました。
 
①必要な物を残し、不要な物を捨てる
②残った物の量と種類を把握する
③物の配置を決定する
④各場所の収納方法、収納グッズを決定する
⑤実際に物を配置(収納)する
 
「片付け」と聞くと、④⑤のイメージが強いですが、実際に片付けてみると、①②③が思いのほか重要であることがわかります。
 
「最初の決め方」が重要なのは、数学における定義や、システム開発における要件定義を思い出してもらえればわかるはずです。
 

ゴチャッたら 定義にもどって ていねいに

私の個人的な意見ではありますが、④⑤はシステム開発における、詳細設計・プログラム設計・コーディングに若干似ていると思います。確かにこの工程はとても重要なのですが、ここだけを繰り返していても、全体性が見えてこず、何度も手戻りが発生することもあります。

 家全体や部屋全体に対して、最初に①②③を行うことが理想ですが、時間的制約などで、すべてを一気に行うことができない場合も少なくありません。その際は、部分的に①~⑤を行い、「これが最終決定」ではなく、「暫定的であり、のちのち変わる可能性がある」と認識しながら、柔軟に片付けをすすめていくと良いと思います。 

キッチン、トイレやお風呂周り、洗面所、靴箱など、機能が限定的な場所については、その場所だけで①~⑤を完結しやすいです。一方で、リビングや自室などは、機能がまたがっていることが多いため(リビングでも自室でも本や雑誌を読む、など)、関連性を考えながら、①~⑤をすすめていく必要があります。

問題点と原因を考える

「片付いていないことによる、現在の問題点とその原因」を、ある程度明らかにしておくと良いと思います。そうすることで、片付けにおける目標やポイントが見えてきますし、「なんとなく、それっぽく置いて『片付いている風』にする」という状況を避けられます。
 
「片付いている風」は、即座に満足感を得られますが、あまり根本的な解決にはなっていないので、リバウンドが起きやすいです。
 
例えば、「物が収納されておらず、あちこちに散乱している」という問題点の原因は「収納場所が目一杯だから」なのか「そもそも、その物を収納する場所が決まっていないから」なのか「決まった収納場所はあるが、生活の導線上、使いにくいのでそこに置かないから」なのか。
 
その他にも「よく物がなくなる」「戸棚があふれていて、物が降ってくることがある」など、不便に感じることを具体的に考え、「なぜそうなっているか」を追求してみます。
 
原因として「自分がだらしないから」などの心理的なものはできるだけ採用しないようにして、「物の量」「物の配置」など、物理的な原因を採用した方が良いです。そうすることにより、仕組みで解決することが可能となります。

「理想の部屋と暮らし」を考える

「こういう部屋、あこがれるな」というイメージを持っておくと、片付けの方向性が見えてきやすいです。
 
SNSやYouTube、家具屋のサイトなどを見ながら、自分が好きだと思う部屋のインテリアや収納をチェックしておきましょう。好みの雰囲気、色味などを具体化しておくことで、あとあと家具や収納グッズなどを買い足す際に役立ちます。
 
また、「筋トレをしたい」「朝、ゆったりと読書をしたい」など、理想とする暮らしを想像してみると良いと思います。
 
そうすることで、片付ける際に「筋トレしやすいスペースをつくる」などの目標ができます。

片付け本について

片付け本などに対し、「スピリチュアルな雰囲気が苦手」と思う人は少なくないようです(私自身は、そこまで強い忌避感を持っているわけではありません)。
 
「なぜ、片付けがスピリチュアルと結びつくのか?」については、おそらく、先に述べた通り、「片付けはメンタルにくる」や「否が応でも、自分の過去と向き合うことになる」という点が関わっていると思います。
 
片付けは、意外にも精神的な作業であり、過去を整理していくため、うまくいった場合、それこそ「憑き物が落ちた」という感覚になる人がいることも十分にあり得ます。
 
なんにせよ、片付け本については、合う・合わないがあると思うので、読みながら「しっくりくる部分だけ採用しよう」と、柔軟に情報を取捨選択して良いと思います。
 
ただ、近藤麻理恵さんなどは、明らかに「普通の人よりも片付けが得意かつ実績のある人」だと思うので、私のような、片付け経験が少ない人の勝手な思い込みよりも、参考になる部分は多いはずです。

なぜ「捨てる」のか?

片付けといえば、「断捨離」のように、「大量に捨てる」というイメージを持つ人が多いと思います。「ミニマリスト」とまでいかなくとも、どんな人でも、片付けの際には、ある程度まとまった量の物を捨てることになるはずです。
 
ここで「そもそも、なぜ『捨てる』のか?」を考えてみましょう。
 
「部屋の収納スペースは有限であるから」「なんとなくスッキリするから」などの理由が挙げられると思いますが、先ほどの
 
①必要な物を残し、不要な物を捨てる
②残った物の量と種類を把握する
③物の配置を決定する
④各場所の収納方法、収納グッズを決定する
⑤実際に物を配置(収納)する
 
を参照しながら考えてみると、物の量と種類をできるだけ減らすことによって、②③④⑤の難易度を下げることにつながることがわかります。  

物の量と種類が多い場合、収納の際に創意工夫が必要です。私は収納スキルがないため、できる限り物を減らしてしまった方が、片付けや日々の暮らしが楽になります。とはいえ、なかなか捨てられないものもたくさんありますが……。

どうしても物を捨てたくない人は、レンタル倉庫などの選択肢もあります(私は使用していません)。

要・不要の判定が簡単なものから

「今日は、この棚の物をチェックして、要らない物を捨てよう」と、「場所」で区切った片付けをしがちですが、これを続けていると、私のような怠惰な人はどこかで挫折してしまうと思います。
 
というのも、「要・不要の判定の難しさ」は、物によって違うからです。
 
私の場合、金融系の書類の整理にかなりの時間を要しました。一つ一つ封筒から中身を取り出し、内容を熟読し、要・不要を判定する必要があるからです。しかも、捨てる際には、個人情報の部分を切り刻むなどの対応が必要です。その他、思い出の品などにも、時間を要しました。
 
こういったものに、片付けの最初から向き合ってしまうと、片付けの進捗が滞り、まるで「永遠に終わらない」ように感じてしまいます。
 
試験などのときも、「最初の問題から順々に全て隈なく解答していく」よりも「まずは解ける問題を解ききってしまい、後から難しい問題にチャレンジする」というスタンスの方が、効率的に良い結果を得られる場合が多いと思います。
 
まずは「要・不要の判定が簡単なものから取り組む」という姿勢は大切です。

要・不要の判定が難しいもの

個人的に、「要・不要の判定が難しい」と思ったものは以下です。

思い入れがあるもの

思い出の品、趣味、ライフワークに関わるものなどは、要・不要の判断を下しにくいです。私の場合、「とりあえず残しておいて、後で考えよう」と、ほとんどのものを保留の状態にしてしまいました。

少し話は変わりますが、学術系の人は、書籍に思い入れがある人が多いので「本の断捨離」と聞くと、「けしからん」と思うことがあると思います。もしかすると、服飾系の人が「服の断捨離」と聞くと、「けしからん」と思うのかもしれませんし、「何に思い入れがあるか」は、本当に人それぞれです。

片付け本などにおける「物を捨てること」に関する記述は、読んでいて「大切なものをないがしろにされた」という気持ちになってしまい、苛立ちを感じてしまうこともあると思います。

思い入れのあるものに対して、私たちはなかなか冷静ではいられないものです。そういった点も含め、片付けは精神的な作業なのだと感じます。

古いもの

新しいものは「これが何であるか」「いつ/どこで/何のために購入したか」などがすぐわかるので、要・不要の判定が簡単ですが、古いものの場合「これ、何だったっけ」「実は大事なものだったりして」と、記憶を掘り起こしたり、人に尋ねたりする必要が出てくることがあります。

パッと見でわからないもの

先に挙げた金融系の書類などは、「封筒から中身を出して、内容を読む」という工程が必要なので、要・不要の判定に時間がかかります。

以上のようなものは、後回しにして、片付けをどんどん進めていきました。「保留ボックス」をつくり、要・不要の判定が難しいものを放り込んでいき、あとあと何度か見返して「不要だろう」と思ったら捨てる、というステップを踏んでいました。

ゴミの分別・捨て方

ゴミの分別・捨て方は、自治体の方針に沿うことが基本ですが、それでも「どうやって捨てれば良いかわからない」というものはでてきます。
 
その際、以下が参考になりました。

・マシンガンズ滝沢さんのX(旧:Twitter)
芸人として活躍し、ゴミ清掃員としても働いている滝沢秀一さんのアカウントです。ゴミの分別や捨て方に関する情報をわかりやすく発信しています。フォローしているだけで、ゴミの分別・捨て方の知識が身に付きます。
https://twitter.com/takizawa0914

・自治体の清掃関連窓口
自治体のホームページや冊子などを調べても捨て方がわからないものについては、自治体の清掃関連窓口に連絡をしてみると確実です。一度、私も電話をしてみたところ、とても丁寧に説明してくださり、大変助かりました。

物を分類し、収納する

以前までは「ある程度、物を捨てたし、あとは適当に収納へ放り込めばOK」と思っていました。確かに、この方法で、一時的には「片付いている風」になるのですが、クローゼット内などに秩序がないので、徐々にリバウンドしたり、「あるはずの物が見つからない」という事態が起こったりします。

例えば、電化製品の保証書を「紙類はココ」と、適当なボックスに放り込んだとしましょう。そして、そのボックスに、保証書、説明書、郵便物、チラシ、パンフレット、メモ、ノートなど、どんどん蓄積されていったとします。こんな状態では、電化製品の保証書が必要なときに、探し出すのは大変です。

「紙類はココ」と決めているのであれば、まだマシで、とにかく何でもいいから物をクローゼットに放り込んでいくような収納をしていた場合は、もっと大変なことになります。

こういった事態を避けるために、物を分類した上で、収納していく必要があります。

適切に物を分類して収納しておけば、「あるはずの物がない」を防ぎやすい上、たとえ収納が溢れたとしても、具体的な対処が即座に可能です。

例えば、「保証書のボックス」が溢れているならば、不要な保証書を廃棄したり、ボックスを買い替えて容量を増やしたりすることで、問題を解決できます。適切な分類がされておらず、保証書、郵便物、チラシ、ぬいぐるみ、文房具、家電などがゴチャゴチャに積まれていた場合は、もはや何から手をつければ良いか、悩んでしまいます。

また、分類の際は、自分の性質を考慮して、適切な粒度で行う必要があります。私は怠惰なので、細かい分類よりも、ざっくりとした分類の方が、生活しやすいです。「消しゴムはココ、ペンはココ、テープはココ」よりも「文房具はココ」の方が、私は息苦しさを感じません。

そして、あまり使わない物に関しては、収納した際、ボックスなどにメモやラベルを付けておくことをおすすめします。片付けてから、数ヶ月経つと、何をどこに入れたかわからなくなってしまうからです。

ソースコードも全くコメントを残さないと、自分で書いたものであっても、数ヶ月後に読み返したとき「一体、これは何の処理だろう?」と思うことは珍しくありません。

数ヶ月後の自分はあかの他人。そう思いながら、ラベル付けをしていくと良いと思います。

さいごに

学生時代、建築系の知り合いの住まいへ行ったところ、決して広くはない、古いアパートながらも、部屋の雰囲気や収納などがオシャレにまとまっていて、感心したことがありました。普段から、設計などについて学んでいるからこそ、なせる技だったのかもしれません。
 
もしかしたら、片付けについても、建築やシステム開発のような設計思想が探求されても良いのかもしれない、と感じます(家政学などで、すでに研究されているテーマかもしれませんが)。
 
片付けをはじめとする家事は、「本気を出せば誰でもできる」と思われがちですが、そんなことはないと思います。数学のように、時間をかけて体系的に学校で教わることもなく、家という現場で試行錯誤しながら行い、各々が片付けについて学習していきます。そのため、なかなか集合知を見出しにくいように感じます。

もしも、Qiita、Zenn.devやMathlogのような、ちょっとガチめな家事版の技術記事シェアサイトがあるのならば、ぜひ読んでみたいです。

特に、片付けは、非常に私的かつセンシティブな作業なので、自分自身や身内で解決するほかなく、家事代行などを利用しにくいケースも少なくないと思います。その点が、料理、洗濯などとは、異なる点かもしれません。

参考文献

近藤麻理恵「人生がときめく片づけの魔法 改訂版」