『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【中編】(プログレッシヴ・エッセイ 第12回)
さて『シン・仮面ライダー』の話。
一視聴者がバンドを運営するにあたりどのような影響を受けたか。50年前の題材を現代でどう表現するかというのが、プログレという50年前の音楽を再現している金属恵比須にとっての共通点である。
この映画には50年前の素材が散りばめている。クモオーグとの戦いは、オリジナルの蜘蛛男と戦った奥多摩の小河内ダムがロケ地だ。マニアが唸るギミックも随所に。
庵野監督はこういう。
まずは古き対象を「分析・検証」することから始めている。
准監督の尾上克郎氏によるとこんなことまで。
フェティシズムに溢れたエピソードが満載だ。
金属恵比須にも「時代考証」というものがある。
大河ドラマから借りてきた言葉だが、プログレが興隆し衰退する直前の1975年までの音像に近づけるため、1975年以降に開発された楽器の音を使用するか否かを判断する考証だ。
電気楽器の開発は日進月歩で、それ以降に作られた楽器を使用する場合には検討をする。もちろん本物の楽器は持っていない場合もあるのでデジタルで代用するのだが、音作りは年代を意識して再現していたりする。
尾上准監督のフェティシズムの方向性と同じものを感じた。
にもかかわらず、『シン・仮面ライダー』はカッコいい。
なんといってもトータルデザイン。
ポスターやパンフレット、そして特報や予告編に至るまでの宣伝材料を含め、現代的。そしてスタイリッシュ。マニアックなのに野暮ったさがまったくないのだ。
50年前の素材を表現しているのにレトロやノスタルジーの片鱗もない。
『シン・仮面ライダー』と金属恵比須。やっていることは同じなのになぜここまで違うのだろうか。
(以下次号)
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