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『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【中編】(プログレッシヴ・エッセイ 第12回)

前号では、2000年、庵野監督に私の監督した映画を見せ、
「好きなことをやっていていいですね」
との感想をいただき、その言葉で映画の道を諦め、金属恵比須のバンド活動に専念することを書いた。結果的に金属恵比須の寿命を延ばしてもらったのだった。

さて『シン・仮面ライダー』の話。

一視聴者がバンドを運営するにあたりどのような影響を受けたか。50年前の題材を現代でどう表現するかというのが、プログレという50年前の音楽を再現している金属恵比須にとっての共通点である。

この映画には50年前の素材が散りばめている。クモオーグとの戦いは、オリジナルの蜘蛛男と戦った奥多摩の小河内ダムがロケ地だ。マニアが唸るギミックも随所に。

小河内ダム(2021年、撮影:筆者)

 庵野監督はこういう。

劇場映画・石ノ森章太郎先生のテレビシリーズを、保管すべく描かれた漫画等を分析・検証・変換・再構成することで新たな劇場映画として形にすることを目指しています。

庵野秀明 2023 2/28 晴れの日に 渋谷にて
(『シン・仮面ライダー』パンフレットより)

まずは古き対象を「分析・検証」することから始めている。
准監督の尾上克郎氏によるとこんなことまで。

マスクの色味はオリジナルを造形した会社に残されていた塗料を借りてきて研究し、ブーツも当時の写真からヒールの高さや材質を割り出して特注で手作りしたものです。オリジナルのリスペクトから始まるので、そこをとことん解析して今やるとしたらどうなるかっていう考えになりますよね。

准監督・尾上克郎、副監督・轟木一騎対談
(『シン・仮面ライダー』パンフレットより)

フェティシズムに溢れたエピソードが満載だ。

金属恵比須にも「時代考証」というものがある。
大河ドラマから借りてきた言葉だが、プログレが興隆し衰退する直前の1975年までの音像に近づけるため、1975年以降に開発された楽器の音を使用するか否かを判断する考証だ。
電気楽器の開発は日進月歩で、それ以降に作られた楽器を使用する場合には検討をする。もちろん本物の楽器は持っていない場合もあるのでデジタルで代用するのだが、音作りは年代を意識して再現していたりする。

ヴィンテージ機材を持ち込んでの
金属恵比須ライヴステージ(2019年3月23日)

尾上准監督のフェティシズムの方向性と同じものを感じた。

にもかかわらず、『シン・仮面ライダー』はカッコいい。

なんといってもトータルデザイン。
ポスターやパンフレット、そして特報や予告編に至るまでの宣伝材料を含め、現代的。そしてスタイリッシュ。マニアックなのに野暮ったさがまったくないのだ。
50年前の素材を表現しているのにレトロやノスタルジーの片鱗もない。


『シン・仮面ライダー』と金属恵比須。やっていることは同じなのになぜここまで違うのだろうか。

(以下次号)


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