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【創作大賞2024漫画原作部門応募作】『国境亡き騎士団・バリアント』 第3話

◆ 第3話 伝達者の末路

「どうか・・・手を貸して下さい!!!」

フレイヤは涙でいっぱいとなった目をニャルラに向けた。

その表情から見て分かるのは鬼気・・・そして、覚悟であった。

「・・・分かったニャ。君の覚悟に心を打たれたニャ。その復讐に手を貸してやるニャ」

「────え?」

「ありがとうございます!!本当にありがとうございます!!!」

フレイヤはそう言って何度も頭を下げた。

「ちょっとニャルラさん、どういう事ですか?ニャルラさん常に言ってたじゃないですか、依頼者には同情するなって・・・ってまさか!」

ヨグはニャルラに耳打ちしている時に何かに気づいた。

「あの・・・少ないですけど依頼を受けてくれた前金として・・・」

フレイヤはそう言ってニャルラに5000$を渡した。

「ありがとね〜」

「(やっぱりか・・・)」

ヨグはニャルラの態度で納得し、白い目を向ける。

だが、ニャルラはそれに気づいてないフリをする。

「じゃあ早速作戦を立てようじゃないか」

「あの・・・作戦なんですけど、私・・・その殺人鬼の隠れ家知ってます」

「本当かニャ!」

ニャルラはフレイヤの言葉に反応する。

「はい、この間殺人鬼を見つけた時につけていきました。何処かに変わってなければ間違い無く・・・」

「・・・成程ね。じゃあアザート君、一緒に行ってあげるニャ」

「何をする?」

アザートはニャルラに聞く。

「刃向かう者の殲滅」

不敵な笑みを浮かべながらニャルラは答えた。

「フッ・・・案内しろ、金髪女」

「わっ・・・分かりました!!」

そう言って、アザートとフレイヤはアジトを後にした。

そして、暫しの沈黙・・・ニャルラは耐えきれず、言葉を発する。

「ヨグ君?いい加減止めたまえ、その目を向けるのを」

「いや、流石にコレはあからさま過ぎでしょ!ニャルラの態度に少し気分が悪いですよ」

「・・・えっ?もしかして気付いてないの?」

今度はニャルラがヨグに向けてジト目を向ける。

「えっ?気付いてないって何が─────」

──────
────
──

アザートはフレイヤに連れられ隠れ家なる場所へと向かっていた。

「「・・・」」

しかし、2人の間に会話などは無く無言で歩いていた。

その空気に耐えかねたのかフレイヤはアザートに話しかける。

「あのー・・・アザートさん?でしたっけ?貴方は普段何をしてるんですか?」

「・・・」

何も答えないアザート。

「どうしてバリアントに入ったんですか?」

「・・・」

何も答えないアザート。

「どうして────」

「おい女、黙れ。貴様は案内するだけで良いんだ」

「はっ・・・はい」

アザートの恫喝によりすっかり怯えてしまったフレイヤはそれから無言で目的の場所へと足取りを早めていった。

「・・・着きました」

フレイヤがそうアザートに言う。

場所はアジトからそう遠く無い街中の薄気味悪い路地裏であった。

「やはり敵は臆病者だな。人が1人もいない場所をアジトとするなどな。それに馬鹿だ。退路が来た道しか無い」

「そのようですね」

フレイヤはアザートの同意する・・・しかし、表情は見えない。

「で、何だ?そろそろ正体を明かしたらどうだ?」

「フッ、まさか見破られていたとは・・・まぁ、失礼でありますが、貴方を嵌めさせて頂きました。私の目的は異形者・アザート、貴方です」

フレイヤはそう言いながらスマホを取り出した。

「アーク様、予定通り標的を捉えました。これより殲滅を開始します『────良くやった、奴の首を持ち帰ることが出来れば約束の100万$をやろう』────我が主の為、殺します」

フレイヤはそう言いながら隠し持っていた銃をアザートに向けた。

ここは驚き慌てるに違いない・・・

フレイヤはそう考えていたであろうが、目の前の男の反応は違った。

「クックックックッ・・・アッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

目の前の男、アザートは笑い出したのだ。

「何がおかしいの!貴方は完全に包囲されている。周りには私の仲間がいる!貴方の首は私が貰い受ける!!」

アザートの余裕そうな表情に怒りを感じながら声を荒げるフレイヤ。

しかし、そんな言葉は何も効いていないと言わんばかりにアザートは答えた。

「俺の首を盗る・・・か。そいつは素晴らしいじゃないか。面白い、やってみろ・・・と言いたいところだが、貴様、そんな脚でどう闘う?」

「え─────」

瞬間、片足が飛んだ。

片足が宙を舞った。

フレイヤの左足が千切れ宙に舞ったのだ。

「〜〜〜〜〜ァァァァァ!!!」

声にならない悲鳴を上げ、フレイヤは地に伏せる。

叫びながらも傷口を抑え必死に血の流れを止めようとするも、一瞬で両手は真紅に染まる。

留まる事を知らず流れ出る血・・・

まさに滝の様だ、血の滝が流れ出る。

「おい、まだ片脚が吹き飛んだだけだぞ。戦い・・・闘争はここからだ」

アザートが笑みを浮かべながらフレイヤに語りかける。

しかし、フレイヤは恐怖と痛みで反応することが出来なかった。

「(痛い・・・痛い・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!)」

思考が痛みで埋め尽くされていた。

そんな時・・・

ドサッ

目の前に何かが落ちたようだ。

痛みに耐えながら何が落ちてきたかを確認すると・・・

肉塊だった。

見覚えのある肉塊であった。

「〜〜〜〜ッ!?」

それが何か脳裏によぎった瞬間、全身が凍りついた。

自分の足だ。

先程まであった足だった。

もう自分には二度と手にすることの無い足であった。

見上げるとそこには居た。

元凶が居た。

自分の足を飛ばし、肉塊にした元凶・アザートが立っていたのだ。

瞬間、フレイヤに怒りが込み上がる。

「殺せ!!!この男を殺せ!!!跡形も残らないように粉々にしろ!!!」

フレイヤは叫んだ。

痛みを忘れて叫んだ。

少女の慟哭にも似た叫び声が路地裏を包み込む。

しかし、何も起きなかった。

誰も出てこなかった。

静寂が周りを包み込む。

「な・・・何をやってるの?はっ・・・早くこのバケモノを殺してよ!!!」

そう嘆願するも虚しく何も起きない、誰も出て来ない。

再び静寂が包み込む・・・かに見えたが、今度は違った。

「・・・クックックック・・・アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」

高らかな笑い声が周りを包み込んだのだ。

笑い声を上げたのは勿論、アザートである。

しかし、未だこの状況を飲み込めていないフレイヤは三度声を掛ける。

「何してるの?早くコイツを─────」

「ここまで来ると逆に同情の余地すらあるな、貴様」

アザートがフレイヤに向けて話し出した。

「まだ此処に貴様の仲間がいると思っているのか?」

「なに・・・言ってるの?」

フレイヤはアザートの言葉の意味が理解していなかった。

「俺は此処に着いた時、示唆した筈だ『やはり敵は臆病者だな。人が1人もいない場所をアジトとするなどな』・・・」

「嘘だ!!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」

フレイヤはまだアザートの言う事を信じる事は出来なかった。

否、信じるのを脳が拒んでいるのだ。

「最初からおかしいとは思わなかったのか?俺は既に26人殺しているんだぞ。それを馬鹿の1つ覚えの如く再び襲いに来ると思うか?貴様は唯の捨て駒なんだよ、使い捨てのな」

「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・」

譫言のように呟き出すフレイヤ。

「・・・となると、もし作戦が失敗した時の為、コレを渡しておけとか言われ何か渡されなかったか?」

アザートがそう問うた瞬間、フレイヤの動きが固まる。

「図星のようだな。どれ、少し見せて貰おうか」

そう言ってアザートはフレイヤの身体を弄る・・・途端に暴れ出すフレイヤ。

「や・・・やめろ!!!触るな!!!あ・・・」

「これだな」

アザートはそう言ってフレイヤから一枚の紙を奪い、中身を見た。

「フッ・・・なるほどな。中々良い情報をくれるな、貴様のボスは・・・」

「・・・・ぁぁ」

既にフレイヤは抵抗する気を無くしてしまった。

自分は単なる捨て駒だった事をようやく理解したからだ。

「さて、労せず敵の情報をくれたのだ。貴様のボスには御礼をしなくてはな」

「────え?」

「ボスに代わって俺が貴様の捨て駒の指揮を務めてやろうじゃないか。・・・そうだな、あそこなんか良さそうだ」

アザートの突然の言葉に何を言っているか分からないフレイヤ。

「それは・・・どういう意味・・・?」

指揮を務める?

それはつまり私を助けてくれるのではないか?

そんな淡い期待がフレイヤに集まるが、現実は甘くなかった。

「ほう?分からなかったか?では、馬鹿な貴様にも分かりやすく言おうじゃないか。古今東西この世の伝達者の末路など決まっているではないか」

そう言ってアザートは銀の装飾銃を生成する。

「用が済んだら・・・死ね」

バァーーン!!!

──────
────
──

バリアント・アジト

「ニャルラさん、本当にフレイヤさんはアザートさんを殺そうとしてる刺客だったんですか?」

「本当にしつこいねぇ〜本当だって言ってるでしょ。気付いてなかったのはヨグ君だけニャ〜」

ヨグは別に信じられないから何度も聞いているのではなかった。

ただ、自分だけが気が付かなかった事に対してショックを覚え、それをニャルラと話す事で間際らしていたのだ。

「(いけないいけない。ニャルラさんにまた迷惑をかけてる。こんなんじゃダメだ。暗くなる一方だ。もっと別の事を考えよう)」

そうヨグが思い始めていた時・・・

ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・

おい、なんだよアレ?

映画の撮影小道具か?

外の方がいきなりうるさくなった。

「なんだかいきなり騒がしくなりましたね。映画の撮影でもしてるんでしょうか?」

ヨグはそう言いながら窓の外を見ると・・・

「ヒィ・・・ヒィィィィィィ!!!」

「えっ?ヨグ君どうしたの?あっ────」

そう言ってニャルラも外の様子を見た。

人々の視線の先・・・

ニャルラの視線の先には・・・

街灯の先にフレイヤの首が突き刺さっていた────


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