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夜明けのすべてを読んで
※ネタバレを一部含んでいます。
最初題名を見たときは、PMSとパニック障害についての話とは思わなかった。
まず読んだあとの率直な感想としては、当事者にしか理解できないつらさ、諦め、こんなはずじゃないと今の状況をすべて病気のせいにしてしまいたくなる気持ちが丁寧に描写されていて、とても臨場感があった。
200ページ弱で読みやすい文章ではあるが、当事者たちが明るく生きていける希望のようなものがふんわりと、ただはっきりと伝わってきた。
心の病気というのは体の病気とは違い、見た目ではわからないことが多い。まだまだ世間の理解も浅いと感じる。私も理解が浅いことを自覚している。
けれども、人知れず苦しんでいる人はたくさんいるのが現実でもあると思う。
PMSがひどい人は人に会うのも外に出るのもはばかられる。そんな状況が毎月必ず訪れることを想像するだけで私は気が重くなる。女性として生まれたから仕方ないと軽視したり、その人の性格だと思ってしまうのは当事者を生きづらくしてしまう。
パニック障害について。
いつ発作が起こるかも何がきっかけで起こるかもはっきりとはわからない。原因もわからない。怪奇現象としか言えないような状況に、いつされされるかわからないという恐怖を、常に感じて生活する。誰だって畏怖の念を感じてしまう。
自動的に人との付き合いを避けがちになるだろうし、今まで当たり前に乗って出かけていた電車にも満足に乗れなくなるだろう。買い物や映画を見に行くことも難しくなる。頼るのは薬だけ。いつ直るのかも保障がない。
絶望を感じてしまう。明るい夜明けなんてどこにあるんだ、と思ってしまう。
パニック障害の青年が、PMSの主人公のことを好きになることができる、と最後に言っている。重要なのは好きだ、ではなく、好きになることができる、と言っていることだ。
病気がいきなり快方に向かうことは稀であり、徐々によくなる方向へ向かうことの大変さ、難しさが現れているなあと個人的に感じた。
けれども、好きになることができると可能性を感じているのだ。今まで電車に乗ることも人と付き合うことも諦めて、生きることに必死だった青年が、だ。なんという進歩だろう。ここに夜明けを感じた。
心の病気と言われるものは非常にやっかいで人を苦しませ、長い人生かけて付き合っていかなければならない問題であることに変わりはない。
でも、この小説はそんな状況にも必ず夜明けはあると優しく語りかけてくれた。