雨の日(短編小説)
窓の外はあたり一面グレーの雲に覆われて、行き交う人々は所狭しと傘を広げている。
今日は仕事終わりにせっかく久々のデートなのに。
スマホで彼に連絡する。
「今日雨だね、はやく止んでほしー。
待ち合わせどうしようか?」
しばらくするとブブッとスマホが鳴った。
「早く上がれそうだから、莉央の会社の近く
まで行くよ。
それから、実は雨はわりと好きな方。」
待ち合わせてすぐ、雨が好きな理由を聞いた。
「莉央さ、雨の日になるとバス通になって俺と
同じ時間に乗ってきてたよね。」
たしかに雨の日はバス通だった。
だけど、わたしのことなんて視界に入っていないと思ってた。
「なんか自然と莉央が目に入ってきて、
前髪とか気にしてるのみてなんか可愛いな
って気になるようになってさ。
雨降るとあの時の感じ思い出すんだよな。
だから俺にとって結構いい思い出なの。」
そんな風に思っていたなんて初めて知った。
「引いた?」
と、笑いながらこちらを見てくる彼と雨を、
前よりも好きになった自分がいた。