akine

1997 小説を書いたり、感想文を書いたりしています。 X→ https://twitter.com/@akine_jp

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最近の記事

【感想】映画「ラストマイル」を観て

ずっと楽しみにしていた映画、「ラストマイル」を遂に観てきました。 一言でいうと、とても風刺的で現代社会のあり方を考えさせられる作品でした。 いま、資本主義の極みともいえる効率化を追い求めた結果、人々の心や体が悲鳴をあげています。 生産性が上がり、人間の生活は豊かにはなりました。しかしそれにも関わらず、幸福度が上がるどころか下がり続け、自ら命を絶つ人もいるのが現実です。 運送業界について問題視されていますが、そもそも下請けいじめをさせているのは、社会の仕組みといわざる得ません。

    • 来年の夏(短編小説)

      暑くなると涼しい季節が恋しくなる現象に、そろそろ名前をつけたほうがいいんじゃないか。 最近は少し動くだけで額に汗がにじむ。 今年こそ絶対に白い肌をキープしてみせると意気込む莉央は、小まめに日焼け止めを塗りなおすのが習慣になっていた。 湿度がある関東の夏は梅雨よりも厄介かもしれない。 梅雨が明けてからバスに乗る頻度が減り、自転車で見慣れた通学路を往復する日々を送っていた。 あの日以来、バスの中で顔を合わせると莉央と光はお互い話しながら学校に通うようになっていた。 二人で車窓か

      • 始まりの朝(短編小説)

        白河莉央と佐伯光の物語の1作目はこちら↓ 目覚まし時計より早く起きられた朝は心なしかいつもよりさわやかだ。 ベッドから立ち上がり伸びをする。 窓の外から湿度を感じると、案の定窓の外は雨だった。 せっかくいい気分で起きたのというのにいきなり心に暗雲が立ち込める。 湿気で髪の毛はいうこときかないし、カッパを着てチャリ登校なんて絶対に無理。 仕方ないから今日はバスで行こう。 今日は鼻歌を歌いながら学校へ行けない。 朝は食欲がないからお母さんが作ってくれたお味噌汁だけ飲む。 ぼ

        • ケーキ:続編(短編小説)

          白河莉央と佐伯光の物語の1作目はこちら↓ 夕方、玲奈は莉央の部屋にいた。 「ケーキ買ってくるなんて珍しいね。 ちょうど甘いものが食べたいって思ってたところだったの。」 「そう?よかった。」 いつものたわいないやりとりを交わしながら、莉央はショートケーキを頬張った。 大好きな苺は先に食べる派なので、迷わず口に運ぶ。 生クリームに覆われたスポンジを見つめた。 「なんかこのケーキ、わたしみたい。  苺のないショートケーキ。  象徴っていうものがなくて。」 玲奈が手を止め

          ケーキ(短編小説)

          白河莉央と佐伯光の物語の1作目はこちら↓ お休みの昼下がり、自分には何にもない気がする、と莉央はぼんやり考えていた。 毎日それなりに充実しているはずなのに、 なんでこんな風に思ってしまうんだろう。 このまま、ただなんとなく日々を過ごしていていいのかな。 目標に向かって頑張っているわけでもなければ、夢中になれる趣味も特にない。 ていうか、夢中になるってどんな感じだっけ。 …やめやめ、このまま家で暇してると嫌な考えがどんどん巡る気がする。 散歩がてらケーキでも買って

          ケーキ(短編小説)

          雨の日(短編小説)

          窓の外はあたり一面グレーの雲に覆われて、行き交う人々は所狭しと傘を広げている。 今日は仕事終わりにせっかく久々のデートなのに。 スマホで彼に連絡する。 「今日雨だね、はやく止んでほしー。  待ち合わせどうしようか?」 しばらくするとブブッとスマホが鳴った。 「早く上がれそうだから、莉央の会社の近く  まで行くよ。  それから、実は雨はわりと好きな方。」 待ち合わせてすぐ、雨が好きな理由を聞いた。 「莉央さ、雨の日になるとバス通になって俺と  同じ時間に乗ってきて

          雨の日(短編小説)

          スプートニクの恋人を読んで

          夢の中で君に会えたら、なんて歌詞がありそうだけど、 実際に夢の中に入れたら現実世界には何が残るのだろう。 夢の中でも好きな人との関係はうまくいくかもしれないし、いかないかもしれない。 それは現実と同じなのかもしれない。 現実と夢のはざまで生きるのは危いが生きるということそのものなのかもしれないとも思う。 夢の中は異世界であり、未知である。 同時にすごく身近にあるような感じもする。 そもそも現実と非現実というものは共存しているものなのかもしれないと思った。

          スプートニクの恋人を読んで

          52ヘルツのクジラたちを読んで

          自分の気持ちを鳴き続けているにも関わらず聞き取ってもらえない。 声が出せていないに等しいけど、届くことを信じて声を出し続けることの健気さがまた痛々しい。 孤独に鳴き続けていた者同士が巡り合い、周波数が一致する。 孤独であっても一人じゃないと感じることができる。 過呼吸な日々を脱してやっと楽に呼吸ができる。世界が色づく。 一筋のゆるぎない光が自分と相手、お互いを照らしてくれる。 そうやってどうにか生きているのが人間なのだと思った。

          52ヘルツのクジラたちを読んで

          (ちょっと休憩)可愛いデザインたち

          横浜のホテルでレコード型のコースターもらった(左) 下北沢でカフェのショップカードが置いてあってかわいいからもらった(右) 可愛いものに囲まれるとウキウキするね〜

          (ちょっと休憩)可愛いデザインたち

          夜明けのすべてを読んで

          ※ネタバレを一部含んでいます。 最初題名を見たときは、PMSとパニック障害についての話とは思わなかった。 まず読んだあとの率直な感想としては、当事者にしか理解できないつらさ、諦め、こんなはずじゃないと今の状況をすべて病気のせいにしてしまいたくなる気持ちが丁寧に描写されていて、とても臨場感があった。 200ページ弱で読みやすい文章ではあるが、当事者たちが明るく生きていける希望のようなものがふんわりと、ただはっきりと伝わってきた。 心の病気というのは体の病気とは違い、見た目で

          夜明けのすべてを読んで

          こういう時間を大切にしよう

          こういう時間を大切にしよう

          ぼくは勉強ができないを読んで

          題名を見て、高校生の男子が主人公だと想像した。 ちょっとおバカな高校生の青春小説かなと思って読み始めた。 実際に読み進めてみると、やっぱりおバカな男子高校生の日常だった。 しかし、幸せに生きる能力は人一倍高いと感じた。 母子家庭で、決して裕福とは言えない家庭環境のようだったが、本人はとて も楽しそうで充実しているように伺えた。 幸福度に環境はあまり関係ないのだと思えた。 幸せの尺度は人それぞれであり、他人と比較するものではない。 そんな当たり前なことを忘れて、周りと比べて落

          ぼくは勉強ができないを読んで