【決定】ドウグラス・ルイス移籍について思うこと【アストン・ヴィラ2024年夏移籍考察(1)】
アストン・ヴィラサポーターの皆さん、そしてプレミアリーグや欧州サッカーのファンの皆さん、2023/24シーズンも応援お疲れ様でした。
2024年夏のオフシーズンは、アストン・ヴィラに関する移籍の噂がある選手や退団の可能性がある選手について個人的な見解を「note」で更新していこうと思います。
第1回はユベントスへの移籍が決定したドウグラス・ルイスについてです。
プレミアリーグ昇格初年度からほぼ怪我なくチームに貢献し続けてくれたブラジル代表MFについて思うことを綴ります。
(1)移籍の流れ
6月30日にアストン・ヴィラはドウグラス・ルイス(26)がユベントスに完全移籍すると発表しました。
アストン・ヴィラ側はPSRの関係上、6月30日までに現金が必要という中で、当初指定していた金額を支払える買い手を見つけられませんでしたが、2人の選手を契約に加える形で契約が合意。ユベントス側は2人の若手選手と2200万ユーロを出すことで、新たな中盤の核となる選手の確保に成功したことになります。
アストン・ヴィラとしても、新たに加入する2人が主力に定着すれば最高のディールとなるかもしれません。今シーズンローン移籍先のフロジノーネで大きく成長したエンソ・バレネチェアはキャリアで最高のパフォーマンスを披露し、U-21イングランド代表MFであるイリング・ジュニオールは現チームにはあまりいない左の大外でプレーできるタイプの選手。ウナイ・エメリもスカウティングに携わっているので、彼らの具体的な起用プランを考えての取り引きとなった可能性が高いと言えるでしょう。
(2)ドウグラス・ルイスのプレースタイル
新天地となるユベントスのサポーターも見てくださっているかもしれないので、前提として彼のプレースタイルについてもまとめます。
一言で彼のスタイルを表すと「プレス耐性が高く、ゲームメイクもできるボックス・トゥ・ボックス」です。
最終ラインの選手から無理に縦パスを当てられてもボールを収め、そこからのターンで前を向けます。その際に注目したいのが、腕の強さ(フィジカル)と体重移動(スキル)です。近くにいる相手選手の動きに合わせて柔軟にプレッシャーをかわす。そこからのキャリー能力も魅力で、ブラジル人選手らしいテクニックも持ち合わせています。
パスのレパートリーも豊富で、セットプレーで目立つ正確なインサイドキックはもちろん、オープンプレーではアウトサイドパスを使って、相手DFから逃げていくようなボールを出すことも得意。利き足ではない左足のキック精度も申し分なく、彼にボールを預ければ何とかしてくれます。
この配球能力の高さから[4-3-3]のアンカーでも機能すると思われがちですが、彼の良さは半減すると言ってよいでしょう。実際にウナイ・エメリが監督に就任するまではアンカーでの起用がほとんどでしたが、選手としては伸び悩んでいました。
というのも、保持の局面では問題ないのですが、チームによっては守備時にアンカーの約束事となる「スペースを埋める守備」が苦手です。対人守備そのものは強みの一つなのですが、かなり人に食いつきやすいタイプなので、簡単に釣りだされてスペースを空けてしまします。ですので、システムとしてダブルボランチを採用するか、「4-3-3」のインサイドハーフのどちらかでの起用がオススメです。
実際にアストン・ヴィラでは「4-2-3-1」のダブルボランチの一角で起用され、守備的なブバカル・カマラを相方とした際に彼の持ち味が最大限に活きていました。
ダブルボランチの一角で相方が守備的な選手の場合やインサイドハーフでは、場合によってボックス内に飛び込む役割が求められますが、このタスクも得意です。相手選手のポジショニングを伺いながら、空いたスペースに飛び込んでシュートなど決定的な仕事をします。
そして、何よりも特筆すべきなのが怪我をしないこと。どんなに使い倒しても、試合途中に座り込んで足を攣ることすら記憶にないです。加入からの5シーズンで36試合、33試合、34試合、37試合、36試合と、ほぼフル稼働を続けています。
(3)個人的見解
上記で説明してきた通り、ドウグラス・ルイスは非常に能力が高い選手で、7000万ユーロの市場価値が妥当なプレイヤーです。このポジションで、今季の公式戦で2桁ゴール2桁アシストを達成したことは特筆すべきことだと言えるでしょう。
ただ、個人的には今夏の売却は賛成です。その理由をいくつか説明していきます。
①残りの契約年数
ドウグラス・ルイスとアストン・ヴィラは、2022年10月に2026年夏までの契約を締結しました。今夏で契約が残り2年となったことを踏まえれば、契約延長をしない限りは高い移籍金で売却できる最後の夏となります。
個人的には今夏の契約延長、もしくは売却の二択だったので、クラブが後者の選択したのも納得です。
②今がキャリアのピークになる可能性
仮に今後もアストン・ヴィラでキャリアを続けたとしても、今季が彼のピークになると感じていました。選手の能力を引き出すのが上手いエメリの下で彼は大きく成長しましたが、現状の完成度の高さを踏まえると、これ以上の能力の伸びしろはあまり期待できないのが正直なところです。
③パートナーとの関係性
※以下の内容はあくまでも”僕個人”の仮説で、的外れな可能性もあるので、一意見として受け取っていただけると幸いです。
現在、ドウグラス・ルイスはアストン・ヴィラのレディースチームに所属するアリシャ・レーマンとお付き合いしています。彼らは2022年1月に交際をスタートし、同年11月に一度破局。そして2023年12月末に復縁しました。
5つの言語を操るレーマンのおかげでドウグラス・ルイスの英語力は大きく向上し、それまで全く話せなかったのが、今では普通に英語でインタビューに答えています。こうしたポジティブな一面がある一方で、個人的には彼女と付き合っていない期間と付き合っている期間のパフォーマンスレベルの差が気になっています。
彼がアストン・ヴィラでベストな瞬間を迎えたのは、交際していなかった2022年11月から2023年末までの期間でした。彼をサッカー選手として成長させたエメリが監督に就任したタイミングと重なるのがパフォーマンス向上の最大の要因ではありますが、今季の後半戦で劇的にパフォーマンスが落ちたタイミングが重なるのは気になるところです。
ただ、相方のブバカル・カマラが2月の試合で離脱したのもパフォーマンスレベルが下がった要因の一つではあるので、この仮説が絶対に正しいとは思っていません。ただ、仮にこれが正しかった場合は、来季以降もベストな姿ではない可能性もあります。
選手個人のプライベートに文句を言うつもりは全くないですが、このリスクがある以上は、今が彼を最高の価値で売れるラストチャンスとなる可能性がある今夏の売却がベストだと感じました。
④後釜の存在
次の章で説明します。
[備考]
シーズン終了後に公開した「note」では「売却の可能性が低いと思う」と書きましたが、それはユベントスへの具体的な移籍プランが出る前であり、なおかつ冬の時点でクラブが売却の意思がなかった(1億ポンド以上のプライスタグをつけた)ためです。
今思えば、代役の確保が難しいシーズン中の放出を是が非でも避けたかったがための価格設定だったのかもしれません。
(4)ドウグラス・ルイスの穴を埋める方法
ドウグラス・ルイスとの移籍の中に含まれたアルゼンチン人MFエンソ・バレネチェアがそのまま代役となる可能性もありますが、厳密には彼らのプレースタイルは異なります。
バレネチェアは中盤の底で輝くアンカータイプの選手です。アストン・ヴィラは本来レギュラーでありブバカル・カマラが膝の前十字靭帯断裂の影響で、中盤で守備的な役割を本職とする選手がおらず、2023/24シーズンの後半戦は何でもできるジョン・マッギンがその穴を埋めていました。
そのため、個人的にはドウグラス・ルイスの後釜は別の選手が務めると予想します。その候補に挙げられるのががユーリ・ティーレマンスと、すでに獲得が決定的となっているロス・バークリーの両名です。
彼ら2人はドウグラス・ルイスと同じように足下の柔軟性があり、司令塔としてゲームのリズムを作れる選手です。実際にティーレマンスはブラジル代表MFが欠場したアーセナル戦で、その穴を見事なまでに埋めてみせました。この試合での彼の好パフォーマンスも、ドウグラス・ルイスの売却に納得がいく理由です。
バークリーに関しても、前回所属時は怪我からの復帰後にパフォーマンスが上がらず苦戦しましたが、今季はルートン・タウンでフル稼働し、以前まで抱えていた足の怪我の問題も解消されています。この2人がシーズンの大半を稼働できたらドウグラス・ルイスの穴は問題なく埋まるのではないでしょうか。
※バークリーは獲得の正式発表こそされていませんが、PSRの関係で今年度中の支出を避けたいことから、会計が来季のものとなる7月1日以降の加入が濃厚とされています。
まとめ
5年間アストン・ヴィラを支えてきたドウグラス・ルイスがチームを去るのは悲しいですが、フットボールには別れが付き物であり、選手が入れ替わることでポジション争いが激化し、活性化される可能性も大いにあります。
現在のアストン・ヴィラの補強戦略は基本的に即戦力の選手を中心に獲得するので、そこまで後釜確保も苦戦を強いられることは考えにくいです。
彼のイタリアでの今後のキャリアの成功を祈りつつ、今後ドウグラス・ルイスがヴィラ・パークに何らかの形で訪れた際はレジェンドの1人として大きな拍手で迎えたいですね。
新加入選手についての考察も随時更新していこうと思うので、よろしければXのアカウント(@yoichiro_yasu)やこちらの「note」をフォローしていただけると幸いです。