ジョン・デュラン移籍の噂について思うこと【アストン・ヴィラ2024年夏移籍考察(2)】
アストン・ヴィラサポーターの皆さん、そしてプレミアリーグや欧州サッカーのファンの皆さん、2023/24シーズンも応援お疲れ様でした。
2024年夏のオフシーズンは、アストン・ヴィラに関する移籍の噂がある選手や退団の可能性がある選手について個人的な見解を「note」で更新していこうと思います。
第2回はチェルシーへの移籍の可能性が報じられているジョン・デュランについてです。
今季スーパーサブとして主に途中出場から流れを変える役割を担ったコロンビア代表FWについて思うことを綴ります。
(1)移籍の流れ
アストン・ヴィラのコロンビア代表FWジョン・デュランが最大4000万ポンドの移籍金でチェルシーへと移籍するのではないかとが報じられています。
なお、ファブリツィオ・ロマーノ氏によると、この移籍にチェルシーの誰かがトレード要員の形でついてくる可能性もあるそうです。
6月14日現在では、移籍が決定的となっていないですが、その確率は高いと報じられており、個人的には今夏のデュランの退団そのものは、ほぼ確実だと思っています。
(2)デュランのプレースタイルと課題
新天地となるチェルシーのサポーターも見てくださっているかもしれないので、前提として彼のプレースタイルについてまとめます。
まずは長所から。
最大の魅力は強烈な左足のシュートです。自分の得意なフィニッシュの形を持っており、ボックス内外に関わらず相手ゴールを脅かす強烈な一撃を放ちます。
その代表例が2023/24シーズンのアストン・ヴィラの年間最優秀ゴールに輝いたクリスタル・パレス戦での強烈なボレーシュート。このゴールもクロスが自らの下に届いた時点で、胸トラップから左足を振るイメージが完璧にできていました。
全身がバネのような身体能力の高さも魅力的で、アクロバティックなプレーも得意。シンプルな跳躍力や爆発的なスピードもあり、見ている人をワクワクさせるロマン溢れる選手です。守備もアグレッシブに走ります。
ただ、20歳ということもあって選手としてはまだまだ(×2)未完成で、正直なところ実力的にはオリー・ワトキンスの足下にも及びません。
実際にアストン・ヴィラでプレーした1年半で先発出場したのは49試合で10試合のみ(プレミア3試合、ECL 5試合、国内カップ戦2試合)。それも前半のみでベンチに退いたのが3試合あり、なかなか機能しなかったことからイングランド代表FWと交代となるケースもありました。
ワトキンスとの最大の差はプレーの幅の広さです。
アストン・ヴィラのエースは両足と頭のすべてで強いシュートが放つことが可能で、フィニッシュのパターンも豊富。アシスト王になったことからもわかるように、周りの選手を活かすプレーも得意です。ほかにも相手DFを背負ってのポストプレーや裏抜けするタイミングの上手さ、サイドに流れた際の選択肢の多さなど、とにかく何でもできる万能型FWの最高峰と言えるでしょう。
一方のデュランが得意としているのはスピードを活かした裏抜けからのフィニシュぐらい。ビルドアップにも絡もうとしますが、不器用なためボールを持った時の選択肢が少なく、そのままダイレクトパスでボールを返すのがほとんどです。
とにかく不器用な印象が強く、かなり近くでのサポートがない限りはサイドに流れてボールを受けたとしても、そこからの打開力には乏しいです。基本的には左足しか使えないので、経験豊富なDFが相手だと選択肢を消されてしまいます。
先述した通り、シンプルな跳躍力はありますが、そこまで空中戦に強い印象はないです。というのも、かなり手癖が悪いタイプなので、相手DFが駆け引きが上手いタイプだとファウルを連発する傾向にあります。今シーズンの90分あたりのファウル数は2.14回で、ワトキンスの0.61を大きく上回っていますね。
そしてフィニシュのパターンが少ないのもプレーの幅が狭いと言える理由です。精度が高いのは左足のシュートのみで、ヘディングシュートも得意とは言えないです。そもそもクロスをダイレクトで合わせるのが頭、足に関わらずあまり得意な印象はなく、サンプルが少ないとはいえ、この流れでシュートが枠に飛んだ記憶すらないですね。ここが彼の大きく伸びしろを残すポイントで、得意なフィニシュのパターンを増やすことが求められています。
今季は怪我のためにプレシーズンを全休し、シーズン中も2度離脱とややスペ体質でもあります。まだ経験が少ないため一概には言えませんが、通年稼働が期待できる選手ではないかもしれません。
やや辛辣な内容が並びましたが、それでも彼が魅力的な選手であることは間違いないです。プレーの幅を広げた上で確実性が増せば、とんでもない化け物へと進化するかもしれません。
そのポテンシャルの高さを踏まえると、誰もがこの原石を磨きたいと思うのではないでしょうか。
(3)この移籍についての個人的見解
個人的にはデュランの放出は大賛成です。
ワトキンスとは明確にプレースタイルが異なるので、彼の後釜としても期待しにくく、この取引で手にした資金を基に別のストライカーの獲得を狙った方が遥かに理が叶っています。
将来的なことも含めて、ほぼ戦力的なダウンがない状況で、1年半前に獲得した選手を2倍以上の高額な移籍金で売れるのはこれ以上ない機会です。
(4)デュランの放出に大賛成な理由
チームとのプレースタイルの不一致以外にも彼の放出に賛成している理由がいくつかあります。
①ウナイ・エメリのオーダーによる補強ではない
2023年1月にアストン・ヴィラに加入したデュランは、ヨハン・ランゲ元スポーツ・ディレクターとロブ・マッケンジー元スカウト責任者(両者ともに現在はスパーズに所属)が熱心に視察をして獲得に至った選手です。
すでに監督だったエメリの許可を得て獲得した選手ですが、アレックス・モレノやパウ・トーレス、ムサ・ディアビ、モーガン・ロジャーズらと異なり、スペイン人指揮官自らが望んだ選手ではありません。
②態度
彼の行動を見る限り、かなり精神年齢が低いタイプと言わざるを得ません。とにかく自分中心。チームが強くなる上で欠かせない「コミットメント」の部分が足りないように映るシーンが多いです。
その代表例がSNSの使い方。インスタグラムにアップしていたアストン・ヴィラに関する投稿を削除、クラブ公式アカウントをフォーローとリフォーローを繰り返すなど、謎な行動が多すぎる。こういった行動は語弊を招きかねないので、控えた方がが彼のためにもなるのではないでしょうか。
③南米系のコミュニティに属していない
エミ・ブエンディアがアストン・ヴィラに加入した際に、すでに所属していたエミ・マルティネスとドウグラス・ルイスが中心となって南米系のコミュニティが誕生しました。その後チームに加入したフィリペ・コウチーニョや
ジエゴ・カルロスも加入し、プライベートでも家族ぐるみで遊んでいます。
そのリーダー核であるエミ・マルティネスは2023年1月にスペイン人のアレックス・モレノが加入した際に、当時のチームにスペイン人選手がいなかったこともあり、彼を南米系のコミュニティに入れました。アルゼンチン代表GKは自らがアーセナル加入時に経験したイギリスへの適応の難しさを経験しており、少しでも助けになろうと多くの面でサポートしています。その半年後に加入したパウ・トーレスも同様です。
しかし、コロンビア出身にも関わらず、デュランはこのコミュニティに属していません。これはかなり異例なことです。エミ・マルティネスはアーセナル時代に当時10代だったガブリエウ・マルティネッリを家族ぐるみでサポートしていました。本来はその路線に乗っかるはずですが、このような行動が見られないのは何かしらの理由があるかもしれません。
ただ、南米系の選手とまったく関係がないわけではなく、ジエゴ・カルロスとは比較的会話している印象です。PK戦にまでもつれたリールとのECL準々決勝で、ベンチにいたブラジル人DFがデュランに強い口調で指示を出していたのは印象的でした。
ちなみにデュランがチーム内で一番仲良い選手はニコロ・ザニオーロです。
(ここからは余談です)一般的にザニオーロは問題児と思われがちですが、アストン・ヴィラでは練習態度も良く、自らの出場機会が限られていた中でもエメリを「世界最高の監督の1人だ」と絶賛していました。
シーズン終盤には背中の怪我が完治していなかったにも関わらず、チームのために志願の強行出場をするなど、ローンプレイヤーでしたが、素晴らしいコミットメントをみせています。ですので、仲が良いとはいえ、デュランとは明確に態度が違います。
④代理人
デュランの代理人は大手エージェント会社ではなく、ジョナサン・エレーラ氏という個人で動いている人物です。彼の顧客はこのコロンビア代表FWとワトフォードに所属するヤセル・アスプリージャの2選手しかいません。
5月には「デュランはもっとプレーしたいと考えている。チェルシーの関心は常に存在しており、ポチェッティーノが続投するかどうかは状況に影響を与えることはない。 どのように対処できるのか、そしてアストン・ヴィラが交渉に応じるのかどうかを見極めるつもりだ」とコメント。こうした公にする必要性を感じないことも喋ってしまうので、そこも懸念事項の1つです。
まとめ
ややネガティブな内容が多くなっていましたが、僕個人としてはデュランのような「異物感」のある選手はチームに必要だと思っています。今季のマンチェスター・シティは緻密なポゼッションサッカーの中にジェレミー・ドクのようなドリブラーを入れることで、カオスの状況を作り出していました。
デュランも同じようにカオスを作り出す選手(途中出場限定)で、「ゴールやPK奪取などの活躍を披露する」もしくは「不用意なファウル連発で足を引っ張る」の二択の現象が生まれます。ややガチャ的な要素が強いとはいえ、試合に出たところで良くも悪くも目立たない選手よりは、よっぽど起用する意味があると思っています。
ただ、今後もアストン・ヴィラでの出場機会が増える未来が見えていないこと、そして買い手の存在があるのであれば、売却した方が双方にメリットがあるのではないでしょうか。
仮にこのまま退団となれば、一人のフットボールファンとして、未完の大器の将来を楽しみに見守っていこうと思います。
新加入選手についての考察も随時更新していこうと思うので、よろしければXのアカウント(@yoichiro_yasu)やこちらの「note」をフォローしていただけると幸いです。
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