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研究進捗報告【夏休み】

仮説④大企業と中小企業の関係性 

1.1日本の産業の特徴

下請け分業構造
→親事業者から下請け事業者の「買いたたき」の原因

・過去20年間、中小企業の名目上の生産性は毎年3~5%ほど上昇
→大企業に引けを取らない伸び率
しかし、価格転嫁力指標の伸び率はマイナスのため、実質生産性は毎年1~2%ほどしか上昇していない。

一人当たり名目付加価値額上昇率とその変動要因(出典:価値創造企業に関する賢人会議中間報告

・全業種で「転嫁できなかった」と回答した企業の割合は、48.4%(「最低賃金や人手不足を理由した労務費の変動分の製品等の価格への転嫁」についてのアンケート調査)・原材料などのコスト上昇分の半分程度しか、取引価格に上乗せできていない(中小企業庁の調査)

【背景】
三村「リーマンショックや超円高の時に取引先の大企業から取引価格の引き下げを頼まれて協力したが、不景気が和らいだ後も状況は変わらなかった。」

〈小括〉
公正取引委員会の勧告
中小企業庁の取引調査員(下請けGメン)
→十分に機能しているのか?

1.2政府の対策

➀公正取引委員会の勧告
中小企業庁と協力して下請け法の運用
・令和4年3月 22業種を対象とした受注者向け約8万社、発注者向け約3万社の書面調査と随時立ち入り調査の実施
〈成果〉
製品やサービスの価格を適正に価格転嫁していなかった13の企業と団体名を公表
・令和4年5月 4業種を対象とし、重点的な立入調査を実施
・令和4年9月 下請法違反が多く認められている19業種を対象に、傘下企業による法遵守状況の自主点検を要請

②中小企業庁の取引調査委員(下請けGメン)
平成29年1月~ 中小企業庁から取引調査員を下請け等中小企業に派遣
・120名体制で、年間4000件超えの下請け等中小企業を訪問し、親会社等との取引状況についてヒアリング調査
・ウクライナ危機による原材料費が高騰している中で、下請けGメンの人員が倍増された。
〈成果〉
「一律の原価低減要請が無くなり、原材料価格高騰による値上げが認めてもらい易くなった 」ことや「15年間単価が変わらなかったが、今年5月に一律の引き上げが了承された。」という声が挙がっている。

〈小括〉
2つの役割は、下請け問題の一時的なストッパーの役割でしかない。
下請け構造を根本的に打破するのはどうしたらよいか?

2.1ドイツとの比較

➀ドイツを比較対象にした理由
日本とドイツの企業数はほとんど同じである。しかし、中小企業の比率は企業全体の99.5%を占めており、利益率は大企業と同等か、むしろ高い。
→ドイツの中小企業政策からヒントを得られるのでは?

②ドイツの産業構造
多くの業種において中小企業の利益率は大企業よりも上回っている。
知名度はないが、世界市場で優位性を持つ中小企業が多い。
ドイツの経営思想家ハーマン・サイモン氏の調査
「隠れたチャンピオン」のうちドイツ企業の占める割合は47%
〈背景〉
州政府を中心に「産業クラスター」というネットワークの形成
各地の大学と中小企業が連携した職業訓練→大卒の即戦力が取り込みやすい

②.1産業クラスターの形成
〈定義〉
・「公的機関、業界団体、大学の研究機関等が一定の地域において集中して競争し合い協力し合う状態のことである」(生みの親であるマイケル・ポータ―)
・「地方の中堅・中小企業やベンチャー企業が大学や研究機関のシーズを活用して新事業を立ち上げるための環境整備を行い、広域的な産業集積を形成させる政策のことである」(経済産業省)

岩本:優秀な若者が活躍できる環境が活躍できる環境づくりや地域商工会議所などの存在が大きい。→中小企業政策に力を入れている。

日本は大企業に有利な政策が多い。
→大企業が法人税を払っているからでは?中小企業の6~7割の企業は法人税を納めていない。

②.2.フラウンホーファー
〈定義〉
政府と民間企業が共同出資した研究所
→学術界と民間企業の距離が近い
→新製品の開発に挑戦する中小企業にとって駆け込み寺的存在

〈特徴〉
大学教授が研究所長を兼任して、そこで働くスタッフの2~3割の若手研究者
大学の高い研究力を活かして中小企業から委託された研究や開発に取り組んでいる。
企業の依頼の数と政府からの資金援助は比例関係であるため、依頼を積極的に受け入れるインセンティブが働きやすい!

一方・・・・

日本では中小企業が気軽に相談に行ける研究所はない。→今の所、その立場にあるのはコンサル会社?(依頼のお金が高い)
下請け会社のメリット:親会社(大企業)から専門的なノウハウを得られる。→他に知識や技術を教わる環境が不足しているから。

京都施策ネット
異なり加工分野を得意とする複数の中小企業が集まってネットワークを形成し、依頼された企業の課題解決や装置部品、機械装置などの試作を提供

〈小括〉
大企業に頼ることなく、中小企業が独自で生産性向上を図り、高付加価値を生み出す産業モデルに移行しつつある・・・?
企業団体が主体の取り組みは限界がある。中小企業が強くなるためには、政府も参画し、中小企業を重視した政策が必要
→なぜないのか?どこが足枷になっているのか。

結論

・公正取引委員会と中小企業庁の取引調査員は、下請け問題を本質的に解決できる役割ではない。
・日本は、中小企業と大企業の相互依存関係は未だ存在している。
・ドイツの中小企業は、独自で販路開拓を行っている。(自立)
また、大企業との資本力の差は産業クラスターの存在で解決している。

課題

縦断的な研究→横断的研究
ドイツの地域商工会議所について調べる。

参考文献

公正取引委員会「適正な価格転嫁の実現に向けた取組」(最終閲覧日:7月27日)
NHK「『下請けGメン』倍増 企業どうし取り引き監視強化 中小企業庁」2022年4月6日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220406/k10013569451000.html〉(最終閲覧日:7月27日)
読売新聞「『多重下請け』からフェアなパートナーシップへ」
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckeconomy/20220729-OYT8T50037/〉(最終閲覧日:7月27日)
JETRO「ドイツにおける中小企業政策とケーススタディ」(最終閲覧日:7月27日)
中小企業庁「価値創造企業に関する賢人会議 中間報告」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/kenjinkaigi/2020/download/200218kenjinkaigi05_2.pdf〉(最終閲覧日:7月27日)
田口研介(2016)「ドイツの産業クラスター政策から学ぶ我国の地方創生への示唆」p1-11,
http://www.jyosai-smeca.com/old/kokusai/kokusaika_sien201601.pdf〉
日経ビジネス電子版「『隠れたチャンピオン』続々、ドイツの小さくて強い企業たち」白井咲貴,
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00241/020900004/〉(最終閲覧日:7月27日)
中小企業庁「取引適正化に向けた5つの取組について」令和4年2月10日
https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220210006/20220210006-1.pdf〉(最終閲覧日:7月27日)
東洋経済オンライン「6割強の会社が『法人税』を納めていない本質」〈https://toyokeizai.net/articles/-/202618〉
(最終閲覧日:7月27日)
京都施策ネット「京都施策ネットとは」〈https://kyoto-shisaku.com/about/〉(最終閲覧日:7月27日)
中小企業庁「下請Gメンヒアリング及び下請法指導事例について」〈https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/torihiki_wg/dai12/siryou2-1.pdf〉(最終閲覧日:7月27日)





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