一体いつ上陸するんだマンデッロ
グッツィといえば空冷
モトグッツィといえば、縦置きV型2気筒"空冷"エンジンをシャフトドライブで組み合わせたバイク。そう思う諸兄が殆どだと思う。
筆者もそのモトグッツィの基本文法はすごく魅力的だと思うし
変わらぬ良さというのは、分かりやすくそのコンポーネントに依るところがあると思う。
グッツィの空冷エンジン(特にここ10年のモデル)は、エンジン本体にあんまりトラブルが出たと聞かない。モトグッツィ自身が使い慣れているというのがあるのかもしれないが
筆者の知るところではV7レーサーを10万キロオーバーまで到達させた方も居る。しかもサーキット走行なども挟みながら、特に甚大なトラブルは一切無かったと聞くので、そのタフネスさは結構な物だと言いたい。
そもそも論
「漏れるモンが無けりゃ漏れることもない」
というのはイタ車的にしてみると心強い。
グッツィだけにあらず、イタ車なんて何でも漏らしてナンボだ。
オイル、ガソリン、冷却水、バッテリー液、魅力、色気、憧れ、ヨダレ
色んなものがダダ漏れで、液体なら種類問わず大体漏らしてんだろって
ホンダユーザーから言われたら返す言葉も無い。
とは言いつつも、長期入院で乗れないと寂しいのは否めないし
漏れないコトに越したことはないので、空冷というのは
一つ不安要素がゴッソリ消せるという点では美点と言って差し支えない。
新しいグッツィの子孫が、水冷エンジンとなった事で何らかの不安が増したか?と問われると、ちょっと"うん"って小さく頷いてしまうかも。
1年経っても日本には・・・?
グッツィは17年発表のV85TTを空冷エンジンで送り出したし、21年に刷新されたV7(850)ももちろん空冷で送り出したばかり
だが、新顔のV100マンデッロは水冷となり、エンジンは新開発の"コンパクトブロック"と相成った。
今までグッツィといえば、1967年デビューの元祖V7を祖にする"ビッグブロック"と
1977年デビューのV50/V35に端を発する"スモールブロック"の2つに大別されていた。
よってV100マンデッロの登場で、3つ目の系統が誕生したことになる。
ところでV100マンデッロ、世に公表されてすっかり1年ほどが経過している。ワールドプレミアは"EICMA2021"であった。V7(850)の日本導入は発表から1年もかからなかったし
V85TTもそんなに間髪入れず日本に入ってきたように思う、だがV100マンデッロについては1年経っても特にディーラーに展示車両が来た!みたいな話が聞こえてこない。
一体どうしたのだろうか。
そう思って、日本法人のモトグッツィ公式HPにアクセスしてみると・・・
一体いつの間に!公式HPに何気なく掲載されているではないか!
"結構前からここに居たんじゃが?"
某漫画の某キャラクターみたいな、いけしゃあしゃあとしたセリフが聞こえてきそうなぐらい
アンタ一体いつの間にそこに居たのよッ!という感じ。特にHPに追加しました!みたいなお知らせも無いので、なんともこの辺が外資系って具合だ。
余談だが、筆者が過去にイタリアのアゴスティーニにマフラーの在庫が無いか問い合わせた際も、特に返事も無くいきなり在庫が復活し、購入できたことがある。
イタリア流なのかは定かではないが、シレっと並んでいるこの状況に
そんなことを思い出した。
なんぼでっか
ついに日本導入だッ!と勇んで詳細ページを見てみたが、スペックや車両装備は掲載されているものの、メーカー希望小売価格は23年1月5日現在未掲載の様子。
どこにもおいくら万円と書かれていない。
イタリア本国では
・V100マンデッロS:17,999ユーロ
・V100マンデッロ:15,499ユーロ
となっているので、23年1月5日現在の1ユーロ=140.23円で計算すると単純計算で下記のプライスタグが見えてくる。
・V100マンデッロS:約2,524,000円
・V100マンデッロ:約2,173,430円
という具合だ。もちろんここに輸入や日本法人が勘定するであろう様々な諸経費は考慮していないので、これよりももう少しだけ高くなると考えるのが妥当。
・V7(850):1,232,000円(消費税込み)
・V85TT:1,540,000円(消費税込み)
などいずれもスタンダードな各モデルが上記の国内メーカー小売希望価格であることを考えると、結構高額路線であろうことが印象深い。
ざっくりだが、V100マンデッロSは260万円、標準のV100マンデッロは220万円とここでは仮定させてもらおう。
他車でこの辺の金額というと、BMWならR1250RやR nineTが出てくる。
どでかいR18もこの辺の金額だ。よりジャンルの似通ったS1000XRも価格帯がカブる。
グッツィと比較にかける人も多いトライアンフでは、スピードトリプル1200RS、新型タイガー1200が大体そう。
ドゥカティになると、ムルティストラーダV2やハイパーモタード950SPが該当する。
これらの挙げた車種が大体220万~260万のレンジに概ね該当するので、V100マンデッロは中々高額なモデルレンジであることを再認識する。
モトグッツィというと、V7シリーズは結構お買い得感のある価格も魅力で
筆者のV7IIは乗り出し130万円も掛かっていない。
よく、道の駅で「これモトグッツィですよね?」と話しかけられた時に
ちょいちょいお高いんでしょう?というトーンで尋ねられるが、いやいやホンダやヤマハの方が高級車いっぱいありますよ。
っていう返しがお決まりなのだが、V100マンデッロはついぞ「ええ、200万以上しました」と回答することになりそう。
水冷エンジンなぬものだ
先ほどからちょいちょい水冷エンジンであることに触れているが
ちゃんと見ていこう。
新しい"コンパクトブロック"と銘打った新開発エンジンは
1042㏄と、直近のグッツィモデルラインナップの中で
最も大きい。久々のリッターオーバーエンジンだ。
ちょいと前まではカリフォルニア1400が居たので、久々のリッターオーバーがモデルラインナップに戻ってきた事になる。
ツアラー志向のロードスターとしては、ノルジェ1200GTが直近の似たようなモデルになるだろうか。
このコンパクトブロックは、既存のスモールブロック比で103㎜もエンジン全長が詰められており、見た目はギュっと凝縮された格好だ。
写真で見てわかる様に、エキゾーストマニホールドの取り回しも
今までの空冷エンジン達とは異なり、横から出ていくようなカタチになった。
21年に発表された時、最初はうーんこれはどうなんだ。コケたら一撃でエキパイ潰れてヤバそう。なんて訝し気に思ったものだが
見慣れてしまうと普通にカッコイイなと感じる。グッツィに対してはどうも贔屓目に見がちだ。
馬力は115馬力、最大トルクは105Nmを発生。かなりパワフルだし、V7II比で行くと馬力で2.3倍、トルクは1.75倍で鮮烈なスペックだと目に映る。
もちろん、他社には150psオーバーも当たり前がわんさかいる。
いるけれど、グッツィとしてはかなりハイパワーな部類で、1921年の創業以来、その殆どの市販モデルは100馬力未満だったので、破格のパワーを与えられているようにさえ思う。
よくよく見ていくと、この新しい水冷エンジンに対して興味は尽きないのだが
最初にも言った通り、不安がちょっとあるとすれば
このコンパクトブロックはモトグッツィ初の水冷エンジンということ。
グッツィ初との冠言葉が付けば、最初の1年は良くても2年目から
来ちゃった(照)
という感じでマイナートラブルが顔を出したりするのでは・・・
と不安な気持ちは抱くほか無い。貶すつもりは毛頭ないが、身構えてしまうのは事実。オーナー間でV100マンデッロの事を話してもみんな大体
お漏らしはあるよね
という認識が既に浸透している。
漏れる前提でV100マンデッロを眺めているのは、日本のみならず世界中のグッツィスタ共通事項だろうと思う。
世界初ってマジか
V100マンデッロは水冷エンジンだけがトピックではない。
モトグッツィが二輪に於ける世界初と謳う"アダプティブエアロダイナミクス"も注目すべき点だ。
風洞で200時間を費やし開発された、この可変エアロデバイスを纏うことで、ライダーの負担軽減と高い快適性を実現するという。
いやーこれ片方だけ閉じなくなるとかありそう(
すでにこのアダプティブエアロダイナミクスについても、グッツィスタの間では
「片方パタパタとかやりだすよね」
「常時OFF推奨」
「時間差で閉じるは仕様」
「その内手動」
「使わなさ過ぎて付いてること忘れそう」
という具合に筆者調べで、散々な意見を集めているがこれは貶しているのではない、グッツィスタの愛の囁き。みんな照れているだけなのだ。
というか二輪の世界初ってホント?と疑りたくなるが
調べるのは面倒くさいので、モトグッツィが世界初って言うなら筆者は信じる。敬虔なグッツィスタなので。
改めてエクステリアを見る
V100マンデッロは写真映りによって、すごくカッコイイなっていうカットとうーん?というカットの2パターンになる。特にEICMA2021で発表された直後は、写真が良くないのか真新しさに目が慣れていなかったのか
そんなに訴えかけてくるようなものは感じなかったように記憶している。
だが、発表から1年が経ち広報写真も数が出そろってくると
なんだか段々カッコよく見えてくる。なんでかはイマイチ分かっていないが、カッコいいと感じてしまう。
当初、赤単色のV100マンデッロは微妙で、チェンテナリオカラーのV100マンデッロSの方が数段カッコよく見えたが
今では赤単色のV100マンデッロも全く見劣りしていないように思う。
モトグッツィの魔力なのか魅力なのか催眠術なのか筆者はV100マンデッロもV100マンデッロSもどっちも好きだ。
見れば見るほど段々と良い・・・となるのは実に不思議だ。
MVアグスタの様に、初見で相手を恋のノックアウトに叩き込んだり
ドゥカティの様に、王道的主人公感で他を圧倒したり
ベスパの様に、オシャレさ満点で人々の感性を揺さぶるなど
真正面から購買意欲をぶん殴ってくるのではなく、まるで外堀を埋めてくるかの如くじりじりとにじり寄ってくるように思う。
どうしてかモトグッツィは見つめていると、昨日より今日、今日より明日とどんどん好き好きメーターが上昇していく、なんとも奇妙だ。
筆者の主観的な"好き"だけをブチ撒けてもしょうがないので
少しV100マンデッロのエクステリアを紐解いてみよう。
まず、全体的なフォルムや色使いについては「ルマン」の系統だとすぐに解る。赤いボディにオレンジの差し色は、某超大作に出てくる汎用ヒト型決戦兵器の弐号機ではないので悪しからず。
特にタンクにまでかかるシートや、全体の抑揚は1981年のV850 ルマンIIIの様に思える。
更に、メーカーも謳うロードスターとツアラーの融合という点では
1983年に世に出るも、あまりウケが良くなくデ・トマソ時代の哀愁の一つとなってしまった850 T5も何となくその面影を見出せるような気がする。
タンクのサイド後端とサイドパネルの繋がり、卵を抱えた鮭っぽいような何とも言えない感じといって納得してくれた諸兄とは美味い酒が飲めそうだ。
ツアラーの志向を思えば、ノルジェ1200GTやノルジェ850との関連を見出せないこともない。
特によりエンジン回りがコンパクトなノルジェ850により親近感を抱くことができる。全体を支配するボリューム感に血のつながりを感じずにはいられない。
買いなのか?
ここまで
・まだ日本に入っては来無さそうだという事
・結構高いプライスタグがぶら下がりそうだという事
・新開発の水冷エンジンにドキドキという事
・アダプティブエアロダイナミクスはネタ枠
・見た目は見るほど好きになる
というかなり偏った視点と持論でV100マンデッロを、メーカー公表値&写真から類推できるであろう事を書き連ねてきたが
正直欲しい
ぶっちゃけ欲しい
V7IIを買い替えで降りるというのは、毛頭考えたこと無いままこの3月で丸7年を過ごそうとしているが
V100マンデッロは正直、V7IIからの乗り換え対象として大いにアリだ。
現行のV7(850)スペシャルもボディカラーとタンクのグラフィックがとても素晴らしいので、値段の面を考えるとそちらも後ろ髪を引かれるのだが
筆者は、推しのメーカーの新型車を好きになるタイプで、V100マンデッロに日に日に惹かれて行っていることを正直に自白する。
今すぐではないにしろ、タイミングが合えば、割と本気で悩む1台である。
値段が結構な敷居ではあるものの、標準モデルのV100マンデッロなら頭金を100万円用意したら、後はもうハンコもってスキップスキップらんらんるーだ。
早くこいこいマンデッロ
V100マンデッロ、グッツィの次なる100年の門出を記念したモデルであると同時に、モトグッツィの初水冷モデルであるなど
その出自は初物づくしで実にフレッシュだ。最初はなんだかなぁなんて思ってたのだが、所有していなくともなんかだんだん良いのではないかコヤツめ。と思わせるのだから、モトグッツィは見つめれば見つめるほど好きになって行くのだと思う。
V7IIもそうだ、丸7年を寸前に控えて乗って未だに飽きが来ない。
乗るたびに好きになるし、乗るたびに惚れ直す。
モトグッツィの各モデルは、オーナーの心を鷲掴みするかのように掴んで離さないので、きっとこのV100マンデッロも多くのユーザーを虜にしているに違いない。
既に欧州ではデリバリーが始まっているので、日本の公式サイトにも姿があることから、その導入は秒読み段階なのかまだまだなのか依然としてよくわからない。
だが、日本の景色の中を飛び交うV100マンデッロの登場は楽しみだ。
モトグッツィ日本法人の公式発表を待つばかりである。
仕様諸元
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