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ベルテッドバイアスタイヤ


バイクとタイヤ

今回は久しぶりにバイクの話、筆者の愛車はモトグッツィ V7IIストーン、2015年製のネイキッドバイクでよくあるオートバイ!という形をしたモデルだ。
もう遡ること8年前、広島の地で愛車として迎え入れたイタリア生まれのオートバイで、筆者の大事な大事な宝物だ。日本でよく名を馳せているドゥカティとかMVアグスタとかそういう"走る工芸品"とか"走る宝石"みたいな渾名はとくにないオートバイだが、極めて乗りやすく、維持もしやすくて、目立ったトラブルの無い優等生だ。
あまりにも故障が無さ過ぎるので、俄かにイタリア製ではなく浜松製じゃないかという疑いが持ち合がるほど。だからといってV7IIが全てそうかというとそうでもなく、壊れる個体はジャンジャン壊れる。
筆者のV7IIはたまたま製造ラインでの作業担当者が誰も前日にワインを深酒したり、推しのサッカーチームが試合に負けてヤケ酒したりしなかったのかもしれない。

本当に壊れない、筆者が壊したことはあっても、勝手に壊れた系はマジで無い
撮影:筆者

そんなV7IIは一般的に高性能バイクとは分類されない。いや、少し語弊があるので、説明するとサーキットでかなりの好タイムを期待できるような"ハイスペック"ではないと言わせてほしい。
そのため、目を三角形にして体力を削りながら、1㎜でもインを攻める!みたいなことは全くしなくていい。というか、向かない。
どちらかというと牧歌的で、制限速度、指示速度以内でゆったり走るのが楽しく、風を心地よく感じられるオートバイだ。

そして大体ゆったり走るバイクというのは、バイアスタイヤが純正装着されていることが多く、筆者のV7IIも純正装着はバイアスタイヤだ。
ちなみに、バイアスタイヤともう一つラジアルタイヤがある。実は昨今の自動車(4輪)についてはほぼほぼラジアルタイヤだ。理由を説明すると長ったらしくなるので、ここでは話を分かりやすくするために
・バイアスタイヤ:ゆっくり走るのに向く、柔らかく乗り心地が良い。
・ラジアルタイヤ:高速走行に向く、転がり抵抗も低くしっかりしている。

と物凄く雑に書かせてもらう。


二つの違い

バイアスタイヤとラジアルタイヤ、この違いはタイヤの素材構成と製造方法の違いに依る区分だ。~タイヤと聞くとスタッドレスタイヤなどを思い浮かべる人も居るかもしれないが、あれはタイヤの製造方法というよりかは雪や低温路面という気象条件に対するものなので、それとは違う。

左がバイアスタイヤ、右がラジアルタイヤ、タイヤの内部構成が違うのが見て取れる
画像出典:DİYVEHİCLEREPAİR

画像で掲載した内容がそのままで、めちゃくちゃ噛み砕いていうなれば、素材の巻き方が違うと思ってもらえばいい。
タイヤは消しゴムの様にゴムをただ形成しているだけではなく、巻き方が違うと書いたモノ、これを"カーカス"というのだけれどそれが斜めに何枚も織り込んであるのがバイアス(別名クロスプライ)で、放射状に配したカーカスにベルトを重ねているのがラジアルだ。こうした、内部構造の根幹的な違いがタイヤの特性を大きく分けている。

内容が英語で申し訳ないが、ミシュラン公式がその違いについて動画を出してくれている。CGアニメーションが解りやすく、筆者が乱暴にざっくり別けたことを丁寧に図解してあるのでオススメだ。


さらばピレリ

筆者の愛車モトグッツィ V7IIストーンには純正装着でピレリ社の"スポーツデーモン"が装着されていた。かれこれV7IIと過ごして8年のうちに、3セットほど都合純正装着でお願いしますと履いてきたバイアスタイヤだ。
ただ、昨年にいつものお店でリアタイヤが交換時期ってことで、同じくスポーツデーモンでと何も考えず願い出た所、どうもV7II向けサイズが品薄で製造のタイミングも読めないという事態に遭遇。

ずっとリプレイスも含めて履いていたスポーツデーモン
撮影:筆者

他のタイヤメーカーならすぐ入ります。という中にミシュランがあった。
実のところ、筆者にとってミシュランはあまり履いたことが無い銘柄で、クルマはもちろんちょっとお値段が張るし、バイクも当然無かった。
しかしながら、ミシュランといえばブリジストンとF1でバチバチやってたなぁとか、WRCでもよく出てくるし印象はとてもいい。

と、ここで印象とかイメージの話になると、ピレリがWRCでよくパンクするのを思い出す。なんかこうターマックイベントでのつまらないパンクが目立つように感じ、去年のクロアチアラリーではいきなり初日でオジェとロバンペラがパンクするなど、毎回トヨタ勢の足を引っ張るような気がしてたもんだから(※筆者のお気持ちに過ぎない)

いい機会だ。ミシュランにしよう。あばよピレリ。

と決断に10秒も掛からなかった。当然ブリジストンなんかもあったし、バイクといえば象さんマークのメッツラーもあった。だが、幼少期からWRCをよく見ていた筆者にとって、大好きなラリーカー達の足元を支えてきたイメージが印象に強いミシュランに惹かれるのは当然のことだったかもしれない。

オートバイとWRCなんも関係ないじゃない。と言われたらその通りなんだけれど、やっぱり履いて気分のアガるか否かというのは大事だと思う。
車体はイタリア、足元はフランス、まるでワークス参戦終盤期のランチアみたいではないか、ガッハッハ。


ベルテッドバイアス

そして自分にとって初ミシュランとなったタイヤは"ロードクラシック"というタイヤで、筆者のV7IIのようなモデル向けのタイヤでそれまでのピレリ・スポーツデーモンとの大きな違いはベルテッドバイアスになったことだ。

ベルテッドバイアスってなんじゃー!

バイアスかラジアルかの2つじゃないんかーい!

って思う方もいるかもしれないが、これも雑に言うと基本はバイアスなんだけれど、部分的にラジアルの特徴を混ぜ込んでいる。という感じ。
なので、ベルテッドバイアスとも言うしセミラジアルとも称される。

真ん中がベルテッドバイアス、ベルトが付加されているのが解る
画像出典:Encyclopedia Britannica, inc

ご覧の通り、前段で"カーカス"の巻き方が違うと言ったが、ベルテッドバイアスはそのカーカスの巻き方に変わりはない、だがラジアルの様に回転方向へベルトが渡されており部分的にラジアルタイヤの様な構成がなされている。

こうすることで、何が良いのか。というと、バイアスタイヤだとちょっとしっかり感が足らない、でもラジアルタイヤほどグリップが必要でもない。
という微妙な特性の間を補ってくれる。なんとも都合のいい存在といえる。
それでも、裏を返せば中途半端とかどっちつかずとか、そういう風に言う事も出来る。

使用速度域によるタイヤ種別の適正をざっくり図解するとこうだ
画像作成:筆者

プリマベーラの様なスクーターであれば、125㏄等など明らかに高速へ上がることもないモデルとなると俄然バイアスタイヤのメリットが光る。
60km/h程度で都市部を走るのならば、乗り心地の良さが生きてくる。
V7(850)の様な、都市部から高速、山間部までどこでも走るが筆者のV7II同様にシャカリキになって攻めるバイクではない。よってそれなりにラジアルの様な剛性感と排水性等を持ちつつ、バイアス+αを実現するのが丁度いい塩梅になる。
RSV4 1100の様な、サーキットも走るし圧倒的な運動性能をしっかり地面に叩き込みたいときは当然ラジアルになる。というかリプレイスでこの辺りのバイクでバイアスを買おうとすると多分店に止められる。腰砕けになりますよ。という具合に。

ひとつ、ここまで触れていないが、実はオフロードに関してはバイアスタイヤに分がある。バイアスの柔らかさが不整地でのトラクション獲得には有用なためだ。


ロードクラシックを履いてどうか

ではここから、筆者のV7IIがロードクラシックに履き替わってどうかというところになるのだが

【いきなり結論】
単刀直入に言うと、高速走行がやはりスムーズになったように感じる。スポーツデーモンに較べるとよりロードインフォメーションがハッキリしたような感じ。このハッキリ感が乗り心地の悪化と取るかスポーティさの向上と取るかは人それぞれだと言えよう。
ただ、筆者についてはスポーツデーモンが別に取り立ててお尻に優しく、空飛ぶ絨毯の様な快適さという感じでは無かったので、やっぱスポーツデーモンの方が良かったなぁという部分はほぼ無い。

ミシュランのロゴに用いられる書体が好きなので満足度高し
撮影:筆者

【ちょっと細かく】
首都高の様な速度域で車体をリーンさせ、スーッと定速でコーナリングする場面でもロードクラシックの方がよりオン・ザ・レール感が上がった様に感じられた部分は新鮮だった。
また、高速走行がスムーズにという部分で、直進時のスムーズさがより光るようになったと感じている。というのは、今までこんなにスンッ・・・という感じで静かに直進してただろうか?というほど、6速4000回転ほどで凪いだような静けさを感じるようになった。
エンジンの振動が収束するあたりと、タイヤからの振動も突然穏やかになり、全体的に滑らかな乗り味を覚える。
スポーツデーモンでは味わったことの無い感覚に、むむっ?と鈍感な筆者が感じるぐらいなのだから、今までのスポーツデーモンは空気圧を高めにしてもやはり高速走行時は少なからず乗り心地が悪化し、不得手の部分が表面化していたのかもしれない。

街中流しててもピシッと真っすぐ走る感触が心地よい
撮影:筆者

【オススメ?】
バイアスタイヤの柔らかさが気に入っている人にはあまりオススメとは言えないが、しっかりした操縦感覚が欲しい人には是非検討して欲しい。
だが、V7は元々サスセットアップが硬く、日本人の小柄な体形ではかなりハードな乗り心地という意見が多い。故にV7やV7IIの場合、その硬さがより強まってしまう可能性はある。スポーツデーモンでさえ硬いって言われてたのに、それがベルテッドバイアスになったら、FD2シビックType-Rも真っ青のガタガタドスドスでお尻が大変なことになるかもしれない。
よって一概にすべてのV7オーナーにオススメってわけでも無いが、スポーツデーモンが品薄で再製造もいつかよくわからない昨今にあっては、ベルテッドバイアスのロードクラシックは十分に検討に値する良いタイヤだと筆者は感じている。

ワインディングの段差やつなぎ目も目立った悪癖は無く乗りやすい
撮影:筆者

まとめ

・しっかりしたライディングフィールが欲しい人にオススメ!
・タイヤのお値段はバイアス比でちょい高め
・高速道路走行時のフィーリングも好感触!

以上、ざっとまとめるとこんな感じ。V7IIにベルテッドバイアス入れてこらいいもん買ったわ。と感じている。アクスルシャフトとホイールベアリングをリフレッシュしたのもあって、よりそのフィーリングの変化を感じられているのかもしれない。なんにせよ9年目のV7IIとの生活がこれでより一層楽しくなった。

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