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今度はカリフォルニア?


伝統ネームが復活?

以前、アプリリア製の457㏄パラツインエンジンを使用したグッツィの入門モデルについて憶測と持論を展開した。まだそんなに日が経っていないので覚えている諸兄も居るかと思う。
そして今度は、20年っきりで系譜が途絶えてしまったカリフォルニアについて復活するのでは?という噂を聞きつけた。
時間の無い方のためにこの噂がどういうものか、三行で書き表そう。

1.アメリカで"MOTO GUZZI CALIFORNIA"の商標登録が行われた
2.アメリカは使用主義なのでとりあえずの登録は突っぱねられやすい
3.コンパクトブロックの搭載モデル第3弾か

お分かりいただけただろうか、あくまで噂の域を出ておらず、かつアメリカにおける商標登録をピアッジオグループが行ったことに起因した噂だ。
この手の商標登録から新モデルの動向が喧々諤々されるのはよくあることで、他のメーカーでもこの手の話はよく聞く。それが今回はモトグッツィにも当てはまる内容だったというところだ。

では早速、カリフォルニアというモデルについて少しおさらいして、この噂についてあれこれ妄想を掻き立ててみよう。


カリフォルニアというオートバイ

カリフォルニアはモトグッツィの中でもビッグブロックを搭載する基幹車種だった。だったと言うからにはお察しの通り、2024年現は絶版モデルだ。
だが、カリフォルニアというバイクはモトグッツィにとって重要なモデルであり、モトグッツィのモデル系譜をたどっていくと、元祖のV7の血が濃い系統だ。
V7という名前に反して、現行のV7(850)を最新モデルとするスモールブロックの系譜は元祖V7の直接的な後継モデルではない。

簡単に言うと、載っているエンジンの始祖モデルが異なっているため、直接的には連なっていないという言い方になる。
名前は元祖V7と同じものを持っていても、搭載されているエンジンの初搭載モデルはV35イモラになるので、現行のV7は系譜が異なっている。

ではなぜ、カリフォルニアが元祖V7に近縁なのか。その答えはそもそもの縦置きVツインエンジンの誕生背景を見れば一目瞭然だ。
グッツィの社史において欠いて語ることのできないジュリオ・セザーレ・カルカーノ技師、彼はグッツィのレース活動を牽引した重要な人物であるが、同時にそうしたレース活動をモトグッツィが撤退した後も数年ほど同社に在籍。
そんな中で彼が仕事の合間に"暇つぶし"で構想を練っていたそれそのものがVツインエンジン誕生のきっかけだからなのだ。

ジュリオ・セザーレ・カルカーノ技師、V7を最後に彼はグッツィから去ってしまう。
写真出典:MOTO SPRINT

1966年よりSEIMM(Società Esercizio Industrie Moto Meccaniche)の体制下に収められたモトグッツィ、その管財人であるSEIMMはカルカーノ技師の"暇つぶし"に目をつけた。カルカーノ技師が温めていたVツインエンジン、これをフィアット500用スポーツエンジンとして使ってはどうだろうというものだ。一見そのプランは順調に進むかに思われたが、フィアット側の降板により乗用車エンジンとしての計画は残念ながらご破算になってしまう。
だが、それでこのエンジンが露と消える結末にはならなかった。時を同じくしてイタリア防衛相がアルプス兵部隊向けに構想していた軍用車両である"3X3”のエンジンとして採用されることが決定。そのタフネスぶりと期待を裏切らないパフォーマンスは高い評価を得ることになる。

ビッグブロックの始祖となる3X3、陸軍の期待にしっかり応えてみせるシロモノであった。
写真出典:IsolaPress

この公官庁への"ウケ"の良さもさることながら、すでにファルコーネなどがイタリア警察で採用されていた実績もあり、新しい白バイもファルコーネに続いてモトグッツィが請け負うことになった。高速化するモビリティ社会でも存分に活躍できるオートバイが求められ、そうした中で3X3でタフネスさにお墨付きのある同エンジンが二輪向けにリファインされ、元祖V7として世に誕生することになる。

1965年より警察仕様のデビューがV7の誕生であった。
写真出典:不明

このイタリア警察での採用を皮切りに、2年後には民生向けのV7が登場。そしてカルカーノ技師が去った後はリノ・トンティが製図盤に向き合いV7スペシャルが産まれるなどする。そんなV7の警察車両としての評判は海を越え、アメリカのカリフォルニア州警察でも採用が決定。
すでに同州警察で採用実績のあったハーレーダビットソンを超える性能とよりクルーザーらしい外観を与えられ、アメリカでのグッツィ人気を確立してゆく。

”カリフォルニア"と同州の名前が与えられ、1972年に民生向けデビュー
写真出典:モトグッツィ公式

1972年にデビューしたV850 カリフォルニアは一段とアメリカンクルーザーらしい堂々たるスタイルで登場、結果的にこれは好評を博し、1982年にはカリフォルニアII、1988年にはカリフォルニアIIIと順調に代を重ねることになる。
1994年にはカリフォルニア1100、1997年には全車がインジェクション化され、2002年には初代のV850を彷彿とさせるカリフォルニア・ヴィンテージが登場。そして2013年にはカリフォルニア1400カスタムへと繋がっていた。初代の誕生以来、カリフォルニアは世界中で永く愛されるモデルだったと言える。
だが、来る排ガス規制の波には抗えず、2020年にひっそりと販売を終了。日本には未導入のカリフォルニア兄弟モデルのオーディスやエルドラド、MGX-21もこの時期にモデル終了となった。結果的にコレが元祖V7から連なってきたビッグブロックの系譜の最期であり、その系譜は2024年現在も止まったまま再始動の見込みは無いと思われる。

カリフォルニア1400カスタム、日本に正規輸入されたカリフォルニアとしては最後になる
写真出典:モトグッツィ公式

アメリカにおける商標権の運用形態

カリフォルニアの歴史をざっくり振り返ったので、今度はその新商標に関する部分を取り扱って行こう。今回話題になったアメリカにおける商標登録がなぜ話題になるのか。それはアメリカが"使用主義"を執っているためだ。
聞きなれない単語なので、色々ググったところ……

米国商標法において使用主義は最たる特徴であり、使用によって商標権が発生すると共に使用がなければ商標権を取得できない、という主義をいう。

 中山 健一, 米国商標法~使用主義について, パテント2023, 2023, Vol.76, No.4, p.35-p.46

つまるところ、なんか使う予定は決まってないけどとりあえず抑えとこっか。というのがアメリカでは認められない。すなわち、商品として世に流通させなければならないので、今回のカリフォルニアの商標登録が行われたことは、近々使用されるのではないか?ということで海外のオートバイ情報サイトなどで話題になっているワケだ。


実際の申請状況

ちなみにアメリカでの商標登録の状況は、だれでも手軽に閲覧することができる。アメリカ特許庁が公開しているTESSは無料で閲覧可能だ。モトグッツィ以外にも気になるオートバイメーカー、自動車メーカーのブランドネームで検索するといろいろ楽しいのでオススメだ。

"Moto guzzi”でひっかけてみた一例、右手にカリフォルニアの商標が出てくる。
画像キャプチャー元:TESS

というわけで実際に"Moto guzzi"で検索をかけて見てみよう。お馴染みの見覚え有るロゴがいくつも出てくる。当然アメリカでもピアッジオは正規展開しているので当然と言えば当然だ。中には開発中と噂が出てしばらく経つV850Xのロゴも見える。
そして、今回の話題の中心、カリフォルニアの文字も出てくる。他のV85TTやV9ローマーと違ってカリフォルニアが単なる文字だけで登録されているのは一旦置いておいて、カリフォルニアの申請の中身を見て行こう。

カリフォルニアの商標の詳細
画像キャプチャー元:TESS

今回は最近のAI翻訳の中でも使いやすいと感じているGoogle Geminiにザックリぶち込んで中身を訳した。

商標出願日: 2024年3月1日
商標種別: 商標
TM5 共通ステータス記述: 有効/申請中/審査待ち
商標申請は、米国特許庁によって受理されています(最低限の申請要件を満たしています)が、まだ審査官に割り当てられていません。
ステータス: 新規申請。審査担当者に割り当てられるのを待っています。商標処理の現在の待ち時間については、https://www.uspto.gov/ で詳細を確認できます。

TESSの商標申請情報をGoogle Geminiで和訳

出願はこの3月1日に行われたばかりで、どうやらまだ審査官の処理を待っている最中の様だ。申請の形態としても"標準文字"で登録がなされている。一般的な車両のカタログやバッジになる車種別ロゴではなく(先ほどのV9ローマーやV85TTとは異なりロゴになっていない状態)
標準文字で抑えておくことは、書体や色が異なっていても利権を主張できるメリットがあるのだそう。従って、使う予定があり広く利権をカバーしたいならば標準文字で申請するのがベターなのだ。
もしかすると、カリフォルニアの関連モデルが複数展開されるなんてこともあるのかもしれない。知らんけど。

現段階でここまでは個々人でも好きに閲覧できるので、筆者もここまで。
具体的にいつ頃カリフォルニアの開発サイクルがいつ生産サイクルに移管されるかなどは全く分からない。そもそも使用主義であるから絶対生産されると決まった訳では無いことは付け加えておきたい。
あくまでも、欧州や日本などの登録主義の国で商標が申請されるよりも、使用主義のアメリカで申請されたため、可能性が高いのではないか?という点を取り上げていることをご承知頂きたい。


どんなカリフォルニアになるのか

さて復活するかもしれない可能性があるんじゃね!?と、一部界隈の期待を集めているカリフォルニア。
復活すると仮定してその新生カリフォルニア(仮称)はどのようなオートバイになるのだろうか。筆者の妄想にお付き合い頂きたい。

妄想なので、根拠は一切ないことを改めて添えておきたい。いいですか、妄想!根拠なし!大事な事なので2回言いましt(ry

【エンジン】
十中八九、V100マンデッロでお馴染みのコンパクトブロックが採用されるであろうことは多くの諸兄も考えているだろう。筆者もそう思う。何分、色々どう考えてもビッグブロックをリファインしていぶち込むというのはちょっと考えにくい。
先代は1380ccという排気量を誇っていたが、今回は良くて1042㏄そのままか、ほんの少しだけ排気量が上乗せされて1200cc程度を名乗る程度ではなかろうか。
コンパクトブロックがどこまで拡張性を持っているか筆者は全く知らないので、ドーンと1400ccクラスで出してくる線も完全に無い訳では無いと思いたい。
だが、先代のカリフォルニア1400の堂々とした佇まいから小柄になってしまうと、どうにもなんかこう歯がゆさがある。ということで、コンパクトブロックをベースにするのではなく、腰下からガッツリ別物で1600ccぐらいの大きな水冷エンジンをとも願ってみたいが、そう現実は容易くないのでこのウルトラCは無さそうだ。

【ライバル】
昨今のクルーザー界隈で、事アメリカにおいては、ハーレーはもちろんインディアンなどもライバルになってくる。
特に筆者の周りのグッツィスタにはインディアンのスカウトが中々に好評だ。先の東京モーターサイクルショーでも実物に見て触れて跨ってみたが、これが中々どうして良い。スカウトは1250ccと1133ccの二本立てで多種多様なスカウトの派生モデルを展開している。また、日本における輸入車最大販売数を誇るハーレーが繰り出す売れ筋のスポーツスターSも1252㏄だ。そのあたりにぶつけてくるのであればやはり心情的に1200ccは欲しいところだ。ともなればコンパクトブロックを排気量アップが妥当か。

インディアン スカウト 24年モデル
画像出典:インディアン本国公式HP

【価格】
何よりも最も大事なのは価格であろう。カリフォルニア1400カスタムは当時日本での新車販売価格が約214万円からであった。
だが昨今の物価の変動や、為替なども考えるとV100マンデッロの220万円スタートの付近を期待したいところだ。なぜならば先に上げたスカウトやスポーツスターはそのあたりが価格の主戦場で、仮にもそうしたアメリカ製の売れ筋クルーザーよりも50万円~100万円高いとなってはとてもじゃないが、知名度を鑑みても勝負にならない。
であるからして、新生カリフォルニアが日本市場に導入される際には210万円~240万円の間に収まってくるのではないかというのが筆者の勝手な見立てだ。


期待とまとめ

今後、カリフォルニアはどこかのタイミングで復活する方向にあるだろうと思われる。モトグッツィとしても売れ筋になるモデルであるし、カリフォルニアはル・マンなどに並ぶ伝統のモデルでもある。
そのため、ステルヴィオも復活などもあったし、存分に期待して良いと考えられるが、具体的にいつ頃その存在が正式にチラ見せされるかはわからない。
現時点では3月1日付でアメリカにおける商標権として"MOTO GUZZI CALIFORNIA"が申請され、現在はその処理を待っている状況だ。標準文字での申請が実施されており、ブランドとしての名称ロゴなどは公になっていない。
一部有志ファンによる新型はこうなのではないか、というCG画像はいくつかあるが、新生カリフォルニアに関して開発車両のスパイショット等はまだ確認されていない。

モトグッツィの中でも注目度の高いモデルであろうと思われるので、開発車両の情報や、ショーへの出展、何某かの情報がそのうち明らかになっていくことを楽しみに、今回のカリフォルニア復活に関する話の結びにしたい。どうなるか、様子を見てみよう。

大西洋を渡る大鷲の復活は近い・・・?
車両撮影協力:I様


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