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【富士山が見える山】 四阿山 編
富士山は、独立峰(周りに他の山が繋がっていない)で三角形のすらっとした形のため、遠くの山からの眺望のなかで富士山を探すのは難しくありません。
いつもは主に富士山お中道の植物についてお伝えしておりますが、少し脱線して、富士山を”外から”見た姿を、【富士山が見える山】シリーズとしてご紹介します。
できるだけ生態学的視点&植物観察的な視点からお伝えします。
(過去の【富士山が見える山】シリーズをマガジンにまとめました↓)
今回は、長野県の菅平エリアにある山、四阿山(あずまやさん)をご紹介します。
登山をしながら、四阿山で見られる亜高山帯の樹木を見ていきましょう。
富士山の眺望
四阿山は長野県と群馬県の県境にある山で、富士山からは直線距離で 約134 km 離れています。
四阿山からは浅間山とともに富士山を見ることができます。
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矢印が富士山を示しています
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今回は、あずまや温泉(跡)からスタートし同じ道を戻ります。
駐車場の先に登山口がありました。標高は 1,500 mくらいです。
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少し歩くと牧場に出ました。しばらく牧場の中を進みます。
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遠くにこれから歩く山が見えます
カラマツ(マツ科カラマツ属)
牧場の脇には、カラマツが点在していました。
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カラマツは富士山お中道でもよく見られる木です。
陽当たりの良い環境を好み、富士山では遷移のパイオニア種として森林成立の重要な役割を果たします。
ここは牧場なので、日当たりは良さそうです。
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カラマツは、日本の針葉樹では珍しい(?)落葉性なので、冬は葉がありません。
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先端の赤みがかった所が冬芽
横に飛び出す枝(短枝)をよく見てみると、くびれがあります。
このくびれ1つが1年分の伸びですので、この短さで5年以上経過していることが分かります。
(富士山のカラマツについてはこちら↓)
ダケカンバ(カバノキ科カバノキ属)
牧場を登り終えると林に入りました。標高は 1,740 mくらいです。
ここから暫く、ダケカンバが混ざった落葉広葉樹の林の中を歩きます。
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葉が落ちていると、周囲の木が何の木なのかさっぱり分かりません。
しかし、ダケカンバは樹皮が特徴的なのですぐ分かりました。
ペラペラと剥がれる樹皮は焚き火の時の焚き付けに使われます。
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枝先の細い枝の樹皮は白い斑点があります。
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さらに登ると、ダケカンバの林になりました。
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写真は標高 1,940 m付近です
ダケカンバは柔軟性があり雪圧に耐性があるため、雪の吹き溜まりになりやすい谷地形でよく見られます。
カラマツと同様、ダケカンバも富士山お中道にある樹木ですが、やはり微妙に谷地形でダケカンバの林を見ることができます。
アカマツ(マツ科マツ属)
ダケカンバの林では時折、アカマツが生えていました。
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2本のアカマツが並んで生えています
アカマツは名前の通り樹皮が赤みがかっていて、針のように細い葉の常緑針葉樹です。
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アカマツは、土壌のやせたところや乾燥地に生えます。
カラマツのように遷移のパイオニア種で、富士山では溶岩跡の青木ヶ原樹海で大森林をつくっています。
亜高山帯ではあまり見られません。
シラビソ(マツ科モミ属)
ダケカンバ林に、シラビソが混ざるようになってきました。
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シラビソは、クリスマスツリーに使われるモミの仲間です。
シラビソの葉は、葉の先に丸みがありチクチクしません。さらによく見ると先端は浅い2股になっています。
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シラビソは、太平洋側の亜高山帯で極相林をつくる樹種として知られています。
森林を構成する重要な樹種なので富士山お中道でも多く取り上げています。
四阿山で見られるスノーモンスターの正体は、シラビソだと思われます。
四阿山のシラビソは、標高 1,850 m 付近から目立ち始め、2,000 mを過ぎると林になり、シラビソ林は山頂まで続いていました。
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トウヒ(マツ科トウヒ属)
スノーモンスターはシラビソだけではないようです。
シラビソ林の中に、シラビソとは違って、触るとチクチクする針葉樹を見つけました。
トウヒです。
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トウヒの葉は、シラビソのように先端が丸くならず尖っています。
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また、シラビソとの違いは、球果が松ぼっくりとして残ります(シラビソの球果はタネとともにバラバラに飛散し、松ぼっくりとして残りません)。
松ぼっくりのような、ちょっと違うようなものをぶら下げたトウヒも見つけました。
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これを帰宅後に図鑑で調べてみると、虫えい(虫こぶ)と言われるもので、アブラムシやハエなどが新芽の頃に入り込んで、枝が異常発生したものとのことです。
この現象、今までも見ていたはずですが、特に気に留めていませんでした。
今回知れてよかったです。
ガンコウラン?アオノツガザクラ?
四阿山のあずまや温泉ルートでは、途中、標高 2,130 m付近で、風衝地を通ります。
強い風によって積雪が少なく、岩や足元の植生が露出した場所がありました。
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そんな場所では、小さな植物が雪から顔を出していました。
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ほとんど雪に覆われているので判別が難しいですが、ガンコウランやアオノツガザクラ(ツツジ科)のような、常緑矮性低木かと思われます。
針葉樹のような葉を持っていますが、広葉樹に分類されます。
これらの植物は葉の面積を小さくして蒸散を抑えるという工夫で、高山のような厳しい環境を生き抜いています。
ちなみに、ガンコウランやアオノツガザクラは富士山では見られません。
富士山が噴火から比較的新しいこと、他の高山から距離が遠いことなどが理由のようです。
山頂から下山へ
いつの間にか山頂に到着です。
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山頂からは浅間山が綺麗に見えました。
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浅間山は富士山のような火山噴出物(スコリア)が堆積した山ですので、火山活動が収まれば、富士山のような遷移の経過を辿るのでしょうか。興味深いです。
また、見下ろすと、葉を落とした落葉樹林が綺麗に見えました。
落葉樹林の樹種は何でしょうか、ダケカンバやミズナラのようです。
冬は山の地形がよく分かりますね。
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登ってきた時に見た植物たちをもう一度確認しながら、安全に下山しましょう。
途中、ウラジロモミ?、ヒメコマツ(ゴヨウマツ)?、コメツガ?などの常緑針葉樹も見かけましたが、判別できなかったので今回はパスしました。
いかがだったでしょうか。
冬の登山は遠くの景色にばかり目が行きがちですが、そばにある植物の観察もお勧めします。
富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓
「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
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