
【富士山お中道の植物観察日記】 2024年7月20日
梅雨明け! 登山シーズン突入
関東・甲信地方が梅雨明けして数日後の7月20日、スバルライン奥庭駐車場から5合目駐車場までのお中道を歩いてきました。
標高2,300 mにも関わらず、非常に暑い1日となりました。
地味な花、ミヤマフタバラン
歩き出してすぐ、コメツガ・シラビソの森林に入ります。
森に入ってすぐの足元に、地味な花を見つけました。
ミヤマフタバランです。

ミヤマフタバランの花は、地味な茶色っぽい色なので目立ちません。
見つけるポイントは花茎の根元にある付いになったハート型の二枚の葉でしょうか。
地味でありながらも、今回お中道を歩いてみて沢山咲いているものを見つけることができました。
もう一つの地味、シャクジョウソウ
針葉樹の根元に、シャクジョウソウを見つけました。
シャクジョウソウは腐性植物と呼ばれ、菌類から栄養をもらって生きています。自分で光合成をしない植物です。

シャクジョウソウはクリーム色をしていますが、似た姿かたちで色が白いギンリョウソウという植物も見ることができます(今回は見かけませんでした)。
イチヤクソウの仲間たち
コメツガ・シラビソの薄暗い森の中、道の両脇は苔むしています。

コケの隙間で、コイチヤクソウが咲いていました。
コイチヤクソウの葉は光沢があります。

葉に光沢ある
その側に、似たような色・姿の花も咲いていました。
こちらはコバノイチヤクソウです。コバノイチヤクソウは、葉に光沢がありません。

葉に光沢なし
お中道周辺には、コイチヤクソウ、コバノイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウ、ジンヨウイチヤクソウがみられます。
コイチヤクソウとコバノイチヤクソウは今がちょうど開花時期のようです。
ベニバナイチヤクソウは前回(7月3日)ピンク色の花を咲かせていましたが、今回花はほとんど終わっていました。

少し明るいカラマツ林で撮影

前回(7月3日)撮影
イチヤクソウの仲間たちは、それぞれ好む環境が異なるようです。
また、最近の分類の変遷が興味深いので、マガジン「お中道の生物図鑑」用に改めてまとめたいと思います。
オオバスノキを食べるウソ
森林限界を超えて、カラマツの疎林(カラマツがまばらに生えている場所)に出てきました。
林のふちの明るいところでは、オオバスノキがよく見られます。
(写真では分かりづらいですが)ツツジ科らしい釣鐘状の小さな花を咲かせていました。

オオバスノキは、大雑把に分けるとブルーベリーの仲間です。実は熟すとブルーベリーのような黒い実になります。
今回はまだ熟した実はありませんでした。
遠くのオオバスノキの枝の中に、動くもの見つけました。
姿が見えるまで辛抱強く待っていると、ウソが姿を見せてくれました。

ウソのオスは首の周りが赤いので、鳥素人の私でも見分けがつきます。
嘴の周りに何かがついています。

しきりにオオバスノキを啄んでいましたので、一足早く実(?)を食べていたのでしょうか。
ウソの他に、メボソムシクイも見かけましたが写真は間に合いませんでした。
メボソムシクイは鳴き声が特徴的なので(「ジェニトリジェニトリ」銭取銭取?と鳴く)、鳥素人の私でも鳴き声はわかります。
スコリア荒原の花たち
森林限界を超えたスコリア荒原を進んでいきます。
この日記でも度々登場しているイタドリは、花真っ盛りです。
すでにタネを成熟中のものもありました。


イタドリと同じタデ科の植物、オンタデも花真っ盛りです。

オンタデ、イワツメクサ、ミヤマオトコヨモギなどの高山植物は、山頂への登山道沿いでもよく見かける植物です。


マメ科の植物たち
お中道では3種のマメ科植物を見ることができます(外来種のアカツメクサとシロツメクサを除く)。
イワオウギ、タイツリオウギ、ムラサキモメンヅルです。
イワオウギの花が咲いていました。
花の後、イワオウギは豆ごとくびれた形の鞘をつけます。

ムラサキモメンヅルはまだ花を咲かせていませんでした。
花は名前の通り紫色をしています。

タイツリオウギはもう少し標高が低い位置に多くみられます。
今回は見つけられませんでした。
マメ科の仲間たちについても、好む環境や花・姿について、マガジン「お中道の生物図鑑」用に後日改めてまとめたいと思います。
スバルライン道路脇の花
スバルライン5合目駐車場に出ると、登山や観光客の人で溢れていました。

道路脇では、ホタルブクロが咲いていました。
ホタルブクロは大きな釣鐘状の花をつけます。この形状の花はマルハナバチが好んで集まるそうです。

鮮やかなピンク色の花で目立っていた花はシモツケでした。
シモツケは、スバルラインを車で上がっている途中の道路脇でもよく見かけます。

残念なことに、スバルラインの駐車場では、麓から持ち込まれてしまったヨモギ、シロツメクサ、タンポポ、オオバコなどの植物もよく見かけました。
鹿の害?
今回お中道を歩いてみて、ミヤマヤナギとイタドリが鹿(ニホンジカと思われる)に食べられた跡をたくさんみました。
新芽や葉を食べられたあとにミヤマヤナギやイタドリは再出芽したようで、新しい葉を着けていました。


これほどの規模の食害はこれまで見かけなかったので、やや驚いています。
本来、ミヤマヤナギの影で強い光を避けていた植物は、ミヤマヤナギの葉の茂りがないので光にさらされていました。

白い枝はミヤマヤナギ、地面の緑色はベニバナイチヤクソウの群落
写真のベニバナイチヤクソウのような、ミヤマヤナギの影で生きてきた植物は今後どうなるのでしょうか。
これから追って観察できたらと思います。
前回(7月3日)のようすはこちら↓
富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓
「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
今回の登場人物たちの紹介もあります。