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不都合な真実〜大人になる〜

しばらく前のことですが、
ひょんなことから
お菓子の詰め合わせを頂きました。
お菓子の詰め合わせっていっても、
デパ地下にある銘菓のようなものでも、
話題の洋菓子屋さんのものでもなくて。

スーパーのお菓子売り場にあるラインナップの
クッキーやチョコレート、スナック菓子、
あられや飴が色々と詰め合わせてあるものでした。

このタイプの詰め合わせって
わたしの地元の結婚の菓子撒きか、
地域のお祭りくらいでしか遭遇しない
レア物。

さすがに地元のお祭りには中学生以降参加していないし、
結婚の菓子撒きもあまり見なくなった。
子どもの頃は、近所のお嬢さんがお嫁に行く朝、
ベランダからお菓子を投げていたのは本当の話です。
和装、白塗りでお菓子の詰め合わせを投げるシュールな絵を今も忘れないw
都こんぶとエリーゼは絶対に入ってた記憶。
赤色のパッケージがお祝い感出るからかな。

近代の結婚の菓子撒きは
フラワーシャワーのごとく
個包装のお菓子(ファミリーパック)
を新郎新婦が撒くスタイルが多い気がします。
いつもコアラのマーチが粉々www

そんな訳で、久々のお菓子の詰め合わせに
わくわくしました(^^)

中に入っていた物の中で
私が一番テンションが上がったのは
「歌舞伎揚」

なんていうか、好きだけど買わないから
嬉しかったんですよね。

子どもの頃から、
歌舞伎揚はカロリーが高いから
絶対に1つしか食べちゃダメなルールだったから
余計に特別感があるのかも。

大人になった今、
私がもらった詰め合わせの中の
歌舞伎揚!
これは、わたしのものよ!
思いっきり食べちゃおう!と思ったけど
1個食べたら満足で、もう1個食べたいと思えませんでしたw

油のしつこさを感じて
全く進まない。

子どもの頃、あんなに美味しいお菓子で
何個でも食べたい!と思っていたのに…
何個でも食べれる今は、
油がしつこくて1個しか食べれないという現実…

なんか悲しかった。

大人になって、もうカロリーは
体が求めていないのでしょうね。
あの頃は、常にカロリーに飢えていたのだと思います。
そう思うと、あの頃のわたしに
残りを全部あげたい気持ちになりました( ;  ; )

こんな数百円でどこでも買えるものを
沢山食べるだけで幸せになれるのは
今だけ!今だけなんだから、
堪能しなさい♡と言うでしょう。

結局何日か家に置いていたけど
食べたくならずに時間だけが過ぎて、
最後は実家にあげました、笑

最近は見ても食べたい!とすら思わなくなった。

大人になるって残酷…と思ったのです。
あの頃は自分で買うことも
1つ以上食べることも許されなかった
歌舞伎揚を今ならなんぼでも買えるのに
体は受け付けない。
そんな悲しいことがあるんだなって。

それに似たことが、つい先日ありました。

祖父の米寿のお祝いをしました。
今年も何度か帰省はしましたが、
お互いの体調や予定が合わず、
会えないままでしたので、
お祝いの食事の席で1年ぶりに顔を合わせました。

母が、食事会のメインの手配をして
わたしは、ちゃんちゃんこやバースデーケーキ、
プレゼントを用意する係だったので
それを見た祖母がこんなに色々してもらって悪いから、
私が帰京する前に、お礼がしたいから
時間を空けて欲しいと言うのです。

祖母がやりたかったことは、
近所の老舗の洋菓子店のティールームに
一緒に行きたかったようでした。

その洋菓子店は、祖母が子どものころからある
超老舗の洋菓子店で、
ケーキ屋さんの隣にティールームがあります。

そこでは、商品のケーキを沢山詰んだワゴンが
テーブルを回ってくれて、
大きなお皿に何個か好きなものをのせてくれます。

そのサービスが子どもの頃は
とっても非日常で、連れて行ってもらうことを楽しみにしていました。

母が言うには、だいたいみんな2〜3個は
選んでると言います。
そのケーキの大きさやボリュームにもよるけど。

周りを見渡しても1個という人は
見たことがなく、
みなさん、複数個サーブしてもらって
ケーキとお茶を添えて、会話を楽しんでいました。
マダムたちの中には、食べ終わって
再びワゴンを呼んでいる人も
普通に居ました。

普段はカロリーに口うるさい母が
このお店に行く時だけは、
好きなものを頼みなさいと言うので
私にとっては、この場所は天国でした。

お店の内装もとってもレトロで
オシャレでふかふかのソファーに座って
お姫様気分を味わえるのも気に入っていました。

そうは言ってもティールームは
数年に1度しか連れて行ってもらえない場所。
ただ誕生日とホワイトデーには
祖父が必ずここのケーキを届けてくれていたので
味だけは馴染みがありました。
祖父は大奮発で、行った時にショーケースにある
カットケーキを全種類買ってきてくれます。(やりすぎ)

問題はここからです。
ティールームに行く時は
母が祖母を誘って一緒に行くのですが、
祖母は何故か、絶対に1つしかダメというのです( ;∀;)

え?話が違うじゃん…と毎回がっかりしました。
だって道中、どの3つにするか、考えてたから。

結局毎回1つ。
ケーキが3つのる大きなお皿に、
たった1個だけ。余白だらけ。

お皿が空いてしばらくすると
店員さんがワゴンを押して
追加いかがですか?と
声を掛けに来ても
祖母は全力でお断り。

まだ食べれるのにw

小学校の高学年か中学生になった頃に
もう一つ食べたい!と勇気を出して言ったことがありました。
お皿が空になって、何回もポットにお湯を足されても
大人たちのお喋りは永遠に続いて退屈だったのもあって。

すると、祖母が鬼の形相になり
「ケーキは1つで十分です。
人前で2個も3個もケーキを食べるなんてみっともない。
あなた女の子なんだから、しっかりしなさい。
もう一つ食べたいだなんてお行儀が悪いです。」と言ったのです。

このセリフ、パワーワードだらけで
わたしは素で「へ?」となりました。

ケーキを1つ以上食べるのはみっともなくて
お行儀が悪いんだ…

大人だらけのティーサロンで
大きな声を出さない、バタバタしない、
食器の音を立てない、
膝を閉じて座る…子どもながらそういうことは
お行儀だと思っていました。

まさか、ケーキを1つ以上食べることが
みっともなくてお行儀が悪いとは
1ミリも思ってなくて呆気に取られました。

屁理屈みたいですが
周りのみんな、みっともなくて、
お行儀が悪いってことになるんだけどw
不思議〜と思いましたね。

そして、女の子だからダメなら、
弟はいいじゃん、弟は食べたらいいのにって思いました。

それ以来、ティールームに行く話が出ても
わたしは一切行かなくなりました。
だって、周りの大人たちが目を輝かせて
ワゴンに並べられたケーキを
お皿に盛り付けてもらっている中で、
自分の目の前に来たら
ケーキを1つしか選んじゃダメ!なんて
酷すぎる。
窮屈な思いをするぐらいなら、
最初から行かない方がいいと思うのは
昔も今も変わらないところです。
昔からの自己防衛方法。
それから、もう20年以上経ちます。

✳︎今、思えば母が3つぐらい選んでいいよと言ったのは、
母は、自分が父(私の祖父)とティールームによく行っていたから
なんじゃないか?と思います。
だって、母(私の祖母)となら1つしかダメだから。

20うん年の年月が経って
祖母が
「○○ちゃん(私の名前)、ティールーム好きだったでしょ!
久々にあなたと行きたいなって思ってたのよ!」
と言うのです。

私はその一言で、
一瞬にして全ての思い出を脳内に再生しました。
その解像度の高さと処理能力のスピードに驚いた。
同時に胸にドーンと鈍い衝撃を感じて、目頭も熱くなった。

母は、よくそんなこと覚えてたね!
ティールームなんて、もう何十年も行ってないよ!
行こうよ!って言いましたが、
私は、黒目が泳いで
首が横に倒れた、無意識に。

残念ながら、ミドサーの私は、
もう今更ケーキを食べる胃袋は持ち合わせていない。

中学生の時に
突然生クリームが苦手になって、
それ以来甘いものをあんまり好まなくなっていました。

社会人になってからは、お酒を飲む機会が増えて
余計に甘いものを欲さなくなったし、
一時期は、本当に全く甘いものが食べれなかった。
(お酒を一切止めたら、食べれるようになったけど)

だから、今更ティーサロンに誘われても
全然嬉しくない。

…久々にあの空間を見てみたいとは思うけど
おそらく、あの頃の姿ではないような気もする。

そう!これも不都合な真実なのです( ;  ; )
あの頃の私なら、毎週でも行きたかった。
今は誘われても全然嬉しくないし、
あの当時の傷が疼く。
若干トラウマ。

でも、祖母は、
わたしがあの当時
あのティーサロンが好きだったってことは
ちゃんと分かってたんだなって思ったら、
余計に1個しかダメ!なんて
言わないで欲しかったなぁっと思いました。

大好きな場所を大嫌いに変えてしまったのは
あなたです、と心の中で思いながら。

20年以上経ってるし、
祖母も、認知症に片足突っ込んでるのを考えたら、
水に流してしまおう!とは思っています。

それに次会った時は、
私が子どもの頃、ティールームが好きだったことも
忘れてるかもいれないしね!爆笑

なんなら、私の顔も忘れる日が来てもおかしくないかも。

結局、帰京までに時間がなく
ティーサロンには行かなかったのですが、
翌朝一番に
祖父がいつものように大量のケーキを届けてくれました。

私は1つ頂いて、弟と父が2つ食べて、
母が2つ目を悩んでいた時に、
祖母が
「○○ちゃんは、もう食べないの?あなたケーキ大好きじゃない、
こんなにあるんだから、もっと食べなさいよ」
って言ったんですよ。

…もう食べれません(・∀・)

あの時にそう言って欲しかったんだよ!

祖父がそれを見て、
もう子どもの頃とは違うもんな〜
甘いもの沢山一気に食べれないよな!
昔は2個も3個食べたかったけど
今はそういうわけには行きませんよね〜
もう30歳も過ぎたんだもん。
あの頃にそう言って欲しかったよな〜って言いました。
食べたいのだけ、持って帰りなさい、って。

母は笑っていました。

だからね、いつだってその時を大事にしなきゃいけないんです。
同じことはもう2度と起こらないってこともある。
たかが、お菓子やケーキ、食べ物の話でも、
こういうことって起こるから。













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