Hollyland Mars 400S Pro で農園ライブをやってみた(石田知志/株式会社エーフラット)
有志による農業動画プロジェクト「週末畑.com」では、千葉を中心とした関東近郊の農家を取材し、YouTubeチャンネルで発信しています。農園を案内する農家にカメラマンが密着、撮影・収録し、後日編集済み映像を配信していました。しかし、本業優先の都合上、撮影済みの映像を公開するまで1年かかることも。そこで、ライブ配信メインに切り替えては?考えるようになりました。
ですが、広い圃場(畑のこと)をケーブル引き回して撮影できるのか?という問題が。“手ごろな価格”で”性能の良い” 映像の伝送機材はないのかと、探していました。
そんなときに、ライブ配信部からHollyland Mars 400S PRO のレビューの募集が。早速申し込み、圃場からのライブ配信を試みました。
【農園ライブ】冬の農園 有機のキャベツ栽培 品種と栽培時期 虫の対策とポイントなど
課題としていたこと
映像伝送
カメラ映像を途切れなく、クリアに配信にのせられるのか?
電源
電源をどう確保するのか?どの程度の容量が必要か?
通信回線
安定した通信回線をどう確保するか?
指示だし
出演者、カメラマン、Zoom参加者へどのように指示だしをするか?
その他、あらゆる面での課題ばかりでした。
課題1:映像伝送
1つ目の課題が映像のワイヤレス伝送です。これは、レビュー機材のHollyland Mars 400S PROによって解決することができました。
今回の撮影先である、柴海農園では、配信のベースから圃場(畑のこと)の最も遠いところまでが約110メートルです。Hollyland Mars 400S PROでは、400フィート(約120メートル)をスペック上の伝送距離としています。私たちの検証では、110メートルの距離から問題なく、映像・音声を受け取ることができました。
第1部、第2部と、2部構成で、全体で90分の配信を行いましたが、映像、音声ともに途切れやノイズが乗ることもなくクリアに配信ができたようです。
https://youtu.be/OSwk7eBdou8?t=966
https://youtu.be/eybc40SZg9U?t=53
課題2:電源
当然ですが、圃場にはコンセントはありません。そのため、いかに電源を確保するかも重要課題です。業務用のカメラでは、いわゆるNPシリーズと言われる業務用のリチャージャブルバッテリーを使用できます。1つで3時間程度持ちますので、カメラは問題ありません。
問題は、配信機材類です。パソコン2台、ディスプレイ、スイッチャー、録画機、ミキサーその他の電源をいかに確保するのか?
まず行った作業は、機材点数を減らすことです。配信とZoom用に分けていたPCを1台に集約し、スイッチャーと録画機も1台に集約されたものを採用しました。ミキサーの使用は断念しました。結果、考えていた音声の返しの要件を満たすことはできませんでしたが、そこは、何を優先するかということから、やむなしと考えました。
結果、必要な電源数が減っただけでなく、セッティングもシンプルになりました。
少なくなった機材の電源には、キャンプなどで使用されるポータブル電源を使用しました。本番では、40パーセント程度の使用量で済ませることができました。
課題3:通信回線
結論から言うと、今回は失敗しました。
メインは、ポケットWi-Fiを使用しました。事前確認では、上りで20Mbps程度のスピードを確認できていたため、問題ないと考えていました。しかし、長時間にわたる配信では、一定のスループットが常に提供される必要があります。第一部の配信では、3回接続が切れるというトラブルに見舞われました。素早く再接続したため、配信が止まることはありませんでしたが、完全に生きた心地がしませんでした。2度言います。生きた心地がしませんでした!!
第2部ではスマホからのティザリングに変更して配信を実施しました。
YouTubeの配信では、エンコーダーからの送出が途切れても、一定の時間内に再接続すれば配信を継続できるようになっているかと思います。どの程度の時間内であれば再接続可能かが分かりませんが、遅延の選択とバッファの量に依存するのかな?と想像しています。そのため、配信時の遅延は多い方を選ぶ方が、安全なのかもしれません。
いずれにしろ、フェイルオーバーの仕組みの構築が、次の課題です。
課題4:指示だし
カメラマンも農家も配信のベースから離れてしまいますので、カンペで指示を出すことができません。そのため、返しの音声にのせて、私の指示出しものせる必要があります。
また、Zoom参加者にも、現場農家の声に合わせて、私の指示を伝える必要があります。一方で、当然ですが、本線には私の声をのせるわけにはいきません。
そこで、出力先ごとに異なるマイナス1の状態を構築する必要があります。
ミキサーの持ち込みを断念しましたので、上記のマトリックスは実現しませんでした。そこで、インカム機材、OBSの設定、Zoomの設定を調整し、チャットを併用することで対応を行いました。
ただし、今回使用したインカム機材が、おもちゃのような機材だったため、こちらの性能アップが課題です。そのため、またHollylandの機材の調達を検討しているところです。
以上、Hollyland Mars 400S PRO を使用した農園ライブの顛末についてご報告いたしました。
この機材がきっかけで、私たちの農業動画プロジェクトでのライブ配信実施が現実のものになりました。やって良かったと思っています。
まだ、他の解決課題がありますが、これを機に、圃場からのライブ配信に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
当社の事情として編集する時間が無い!という経緯から、圃場からのライブ配信に取り組みました。
しかし、ここで紹介しきれないトラブルもたくさんあり、2度ほど頭が真っ白になりました。けっしてこのような配信をおススメしているわけではございません! ので、その点、ご了承くださいませ。
制約が多いほど、やる気の出る方は、どうぞ!!
2021年12月10日
株式会社エーフラット 代表取締役 石田知志
【農園ライブ】柴海農園の出荷場。直販商品による収益化や作業の効率化、ツールなど
後日談
Mars 400S Pro レビューシリーズ 最終話
【対決の行方】
Mars 400S Pro vs 私
完敗。
これにて、完。
ライブ配信部とは
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